【報告】平等な社会に向けて私たちができること~ジェンダーについて学ぶ&話す会~(We are the MOVEMENT 2021-2022)

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、2021年度も大東建託グループみらい基金さまからの助成を頂き、子ども・若者のソーシャルアクションイベント開催を応援する「We are the MOVEMENT 2021-2022」を実施しています。
この度、プロジェクトメンバーからイベント報告が届きました!


【アクション実施報告】

私たちは、静岡県沼津市にある加藤学園暁秀中等学校・高等学校で活動するボランティアクラブのNational World Committee(NWC)です。12/19(日)9:40~11:40に、NWCはイベント「平等な社会に向けて私たちができること~ジェンダーについて学ぶ&話す会~」を開催しましたので報告致します。

 

【企画・アクション内容報告】

初めに、NWCが行った、ジェンダーに対する意識のアンケートの結果を報告しました。

※詳細は以下の記事をご覧ください。
https://ftcj.org/archives/28404

 

その後、ジェンダー、セクシュアリティー、人種、国籍、信じる宗教に関係なく誰もが平等な権利をもち、そして誰もが声を上げやすい社会を作ることをビジョンとして掲げ活動している、一般社団法人Voice Up Japanの代表の山本和奈さんをお招きし、ご講演いただきました。講演では一般社団法人Voice Up Japanの活動とその広がりについて、そして「ジェンダー」という言葉の定義について学びました。その後、日本でのジェンダーギャップ(男女の違いによって生じる格差や、男女にそれぞれに対する固定観念から生まれる不平等)について経済、政治、教育、健康という4項目について、それぞれお話をうかがいました。

詳細はVoice Up JapanさんのInstagram投稿をご覧ください。

 

日本のジェンダーギャップ指数(世界の中でどれだけジェンダー平等が進んでいるかの指数)の紹介を交え、それぞれの分野においてジェンダーギャップやジェンダーバイアス(男女の役割に対し偏った固定観念を持つこと)が生じる背景について知ることができました。

 

経済については労働市場への参加率(働きたいと思っている人が職につける割合)が、男性は86.7%、女性は72.8%と差があります。また、企業の取締役や管理職は女性が少ない、登用されにくいというのもジェンダーギャップにつながっています。
引用:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2021」(英語pdf、233ページ)

政治については、大臣や国会議員、知事などはほとんど男性が務めているという現状があり、その差は世界の中でも大きいものとなっています。
教育については、義務教育の間は男女ともに教育を受けられる状態にありますが、義務教育が終了すると、入試での男性の優遇や進路指導の偏りが発生するようです。例えば大学では、女性は理系や医療系の学部に進みにくい傾向がありギャップが生じています。
健康については、日本ではおおむね平等です。健康において格差が生じている国では、命に関わる問題であるため深刻な問題になっているそうです。

(OECⅮ(経済協力開発機構:Organisation for Economic Co-operation and Development) 経済成長・開発途上国の援助・自由貿易の拡大を目的として設立された国際機関です。ヨーロッパを中心に、米国、日本を含む38か国の先進国が加盟しています。)
引用:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2021」(英語pdf、10ページ)
和訳解説:内閣府男女共同参画局「共同参画」2021年5月号

 

そして、私たちがそれらのギャップを解消するために何ができるかについて、具体的な行動の方法も交えて教えてくださいました。私たちができることはまず学ぶこと。例えば山本さんが代表を務める  Voice Up JapanのInstagramでは、ジェンダーギャップについての情報やニュース、その解決に向けた活動などを発信しているそうです。そのようなツールを利用しながら、まず新しい情報を得ることが大切であると教えてくださいました。

 

そしてボランティアや寄付を通した、団体の支援。例えば、生理の貧困を解決しようとしている団体や家出をした中高生の居場所の確保をする団体、病気の子どもを預かる団体など、社会における問題を解消するため活動している団体はたくさんあります。それらの団体に寄付をしたりボランティアをしたりすることも、私たちのできることの一つだそうです。お金ではなく物も寄付することができるので、学生の私たちでも貢献することができます。

 

また、自分が学んだことを、TwitterやInstagramで発信することも重要なアクションの一つです。
政府や政治家に自分の意見や声を届けることも重要な行動になります。手紙やメールによって直接意見を送信したり、各行政のホームページにある意見箱に投稿をしたりと、選挙以外にも国民の考えを発信することができるそうです。


最後に、女性のリーダーや女性のリーダーシップを支援するプロジェクトを応援すること。女性が取締役を務める会社や男女ともに活躍できる社会を推進している会社の商品を選んで購入するというのも、私たちのできるアクションとなることを教えてくださいました。

講演後には質疑応答・参加者間の意見交換を行う時間を取りました。質問応答ではたくさんの質問があり、山本さんはそれらに丁寧に回答してくださいました。
意見交換の時間では、参加者同士が自分の思うこと、講演を聞いて考えたことや感想を自由に話し、お互いの意見や考えを共有することで学びをさらに深めることができました。

 

【質疑応答(抜粋)】

Q.チリと日本でのジェンダーに関した社会での違いはどのようなものがありますか。また、チリで活動を始めたきっかけはどのようなものがありますか。

A.ジェンダーに関する社会の違いとしては、まずチリには女性リーダーが多い。そして議会の議席をあらかじめ男女半分ずつに分けるクオーター制があるので、男性と女性の意見は共に通りやすい。そして、現在パートナーシップ制度が存在しており、同性婚の合法化に賛成している政党もあるため、この先同性婚が合法となる可能性もある。しかし宗教を理由とした反対もあるので日本とは違った困難もある。そして、国民の意識にも違いがある。チリの人々は政治やジェンダーに対して興味を持って話し合いをしたり、実際に声を上げるなど行動する人がとても多い。
また、チリでの活動のきっかけとしては、スタートアップ(新しい会社を立ち上げること)に対しての支援が手厚く、手続きも簡単なので起業がしやすいと感じたこと。また、日本で活動している際に、日本では女性として活躍するのが大変だと感じたことがある。

 

Q.日本では、実際に声を上げるなどして活動を起こすと、「意識高い系がなんかやってる」などと言われたり、いい顔をされなかったりする。声を上げやすくするにはどのようなことを心がければよいか。また、自分が発信したことを周りの人に目を向けてもらえるようにするにはどのようなことが必要か。
A.コミュニティを作ること。同じトピックについて話し合える仲間を作ることで、声を上げ、行動しやすくなる。また、自分の発信に目を向けてもらうには、まず自分のユーザー、ターゲットにしたい層についてよく知ることが大切。年代や、誰のために行いたいのか考え、自分が発信を届けたいと思う人に直接意見を聞くというのもよい方法。大勢に向かって発信しても、注目はなかなか集まりづらい。そこで、友達や周りの人に個人的なアプローチを取るとより効果がある。

 

【意見交換の時間での参加者の意見(抜粋)】

・日本とチリを比べてみてもわかる通り、日本にはまだ改善できるジェンダーギャップがたくさんある。私たちにできることはたくさんあると思った。
・実際に活動をしている方のお話を聞き、それぞれ違う意見を持つ人と意見を交換することで、新しいことや考え方を知れて、自分の中のジェンダーへの見方が変わった部分があった。
・日本ではまず、ジェンダーについて知る機会が少ないと感じた。ジェンダー問題に対する「無知」というのもまた問題につながっていくと思う。

 

【参加者の感想(抜粋)】

・ジェンダーへの理解が深まった。
・自分の視点だけでは気づくことが出来ないようなことを講演者の方やその他の参加者の意見を聞くことによって新たな考え方が生じたりするいい機会となった。また、日本に住んでいて海外情勢はニュース程度でしか知らない自分にとって海外に実際に住んでる講演者の方のお言葉はとても参考になり、日本が外(海外)から見てみるとどのように見えるのか少しでも知ることが出来たのでいい経験となった。
・ジェンダーについてさらに深く知ることができた。まだまだ日本では男女差が大きく、今後も良い変化に向かうには時間がかかるとは思うが、こうして若い年代の中で勉強したり議論されたりすることで変わっていってほしいと強く思った。早く日本が変わらないと、リーダーになれる若い世代の方(特に女性が多いと思う)が海外に出て行ってしまうのではないかと危惧している。男性が今までの生活の中で男女差を正直あまり感じていないという素直な意見があり、そうした中でこのイベントに参加するという意識があることが素晴らしいと思った。こうした男性が増えていかないことが、なかなか状況が変わっていかない大きな原因の一つなのかなと感じた。

 

【イベントを実施してみて】

率直な感想として、自分たちの活動を発信することと、イベントを開催することの難しさを感じました。計画まではスムーズにいっても、アンケートを実際に回答してもらったり、イベントの集客をしたりするには工夫が必要なのだと気づきが得られました。

 

イベントでの山本さんの講演では、日本でのジェンダー問題の現状と私たちが実際に何ができるかについてたくさんのことを学べました。その中で特にこれから意識していきたいと思ったことは、自分が声を上げるのはもちろん、声を上げて活動している人をサポートすることも大切だということです。これから自分たちでも活動をしながら新たな情報を取り入れていくこと、また、ほかに社会に向けてアクションを起こしている人たちのことを知り、その方々を応援したり協力することも重要なアクションの一つであることを改めて実感しました。

 

そして、もう一つはジェンダー問題は女性だけの問題ではないということです。メディアなどで取り上げられるのは「女性らしさ」の強制や女性の権利向上についての話題が多く、ジェンダー問題は女性が抱えているものだと認識しがちであるのかもしれません。しかし男性も同じように、「男性らしさ」を強要されるなどジェンダー・バイアスの影響を受けているということを知る必要があるのだと感じました。

 

私たちはこれら一連の活動から得た学びや気づきを生かして、世界全体で起こっている問題を多くの人が知って、「自分ごと」としてとらえてもらうための活動を続けていこうと思います。

 

・主催

National World Committee
Instagram @nwc.0901

質問等ございましたら、お気軽にこちらのメールまでご連絡ください。
nationalworldcommittee@gmail.com
(@は半角)

 

 


<参考情報>※こちらに記載されている情報は「We are the MOVEMENT」とは異なる事情・本イベントの主催団体とは無関係の内容です。

・当団体が11月に公開した、⽇本の⼦どもが政策提⾔に取り組むためのツールキット「SPEAK UP アクションキット」

SPEAK UP アクションキット(気になることに声をあげよう!)

・当団体が実行委員をつとめた「SDG4教育キャンペーン2021」でも、日本で学校の校長・副校長・教頭先生になる女性教員が他国と比べて非常に少ないことをピックアップしました。詳細は下記の解説記事をご覧ください。

【学生・ユース世代大歓迎】「SDG4教育キャンペーン2021」ウェブ投票 参加者募集中


・国会議員に占める女性議員の割合の低さは、長らくOECD最下位の9%台であり、同じく「SDG4教育キャンペーン2021」のロビイング(議員や省庁関係者との面会)時に、このことや、全国で東京都の都立高校入試だけが定員に男女差を設けているなどのジェンダー不平等が未だ残っている問題について、複数の現職議員からも問題視している旨のコメントがありました。

【報告】「SDG4教育キャンペーン2021」子ども・ユースロビイング活動(社民党)