11月19日:世界トイレの日
World Toilet Day
※本記事、無料教材では「お手洗い」を意図的に「トイレ」と表記しています。予めご承知おきください。
2001年11月19日に「世界トイレ機関(WTO: World Toilet Organization)」が創設され、「世界トイレサミット」が行われました。翌年以降もこれにちなみ、11月19日にトイレに関する問題について考えるイベントやキャンペーンが世界各国で行われるようになりました。[1]
2013年7月24日、ユニセフとWHOが「未だ25億人に基本的な衛生施設・インフラが不足していること」「不衛生な状況がもたらす、人々の健康・貧困・経済・社会・環境(特に水周り)への悪影響に対する、世界中の人々の関心も不足していること」と国連に報告し、これらに強い懸念を抱いた国連総会は、トイレに関する問題を世界の人々がもっと考え、少しでも改善していくため、毎年11月19日を「世界トイレの日」と制定しました。[2][3]
誰もが安心して安全な水とお手洗いを利用できるような世界にするために、どのようなことができるか一緒に考えませんか?
<もう少し解説>
・SDGsでもお手洗いの整備が定められている
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2022年時点で、世界のおよそ4.19億人[3]が野外で用を足しており、SDG6でもこの問題を解決することが定められています。
SDG6.2
2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
・もしトイレが無かったら…
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日本では、大半の住宅や建物、公共施設・商業施設にトイレが設置されている上、トイレのことを「お手洗い」「バスルーム」と言い換えることがあるように、トイレの近くに手を洗う洗面所も併設されていることが殆どです。
こうした状況は世界で見ても極めて珍しいものです。
先述したとおり、現在でも世界のおよそ3人に1人が
・トイレが家や公共施設(学校など)に無い
・トイレはあるが手洗い場、照明、壁/仕切り、ドアなどがない(下図)
・そもそも地域に上下水道が整備されていない
・トイレで用を足す、手を洗う習慣がない
など、トイレが無い、あっても使えない/使いにくいなどの理由で、わざわざ遠く離れたトイレまで時間をかけて用を足しに行ったり、地面に掘った穴や草むら、道端、川などで用を足したり(野外排泄)しています。特に、野外排泄は水や土壌を汚染し、人の手や虫(主にハエ)などによって、排泄物に含まれる病原菌に経口感染し、下痢などの病気にかかって学校へ通えなくなったり、仕事ができなくなったり、命を落としたりしてしまいます。
他にも、ジャングルの川まで用を足しに行くため、道中の虫刺されによるウイルス感染のリスクも伴っている=用を足すこと自体が命懸けという地域もあります。(詳細はこちらの記事をご覧ください。https://ftcj.org/archives/5062)
日本ユニセフ協会が野外排泄に関する解説動画[1]を公開していますので併せてご覧ください。
(閲覧タイミングにご注意ください。また、数値は2013年当時のものです。)
・もし、学校にトイレが無かったら/あっても使いにくかったら・・・?
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当団体がこれまで支援してきた、開発途上国の学校には、
・そもそもトイレや水道インフラそのものが無い
・トイレはあるが壊れていて使えない
・壁がボロボロでいつ崩れるか分からない上、修理代の調達も困難で対処できずにいる
・教員含めて50人くらい在籍している学校なのにトイレはたった1つしか設置されていない
・(先述したとおり、)個室どころか屋根、仕切り、照明も無い
・性別ごとに区別されていない
・便器はあるが手洗い場が無い
といった、トイレに関する問題を抱えていた/今も抱えている所が多く、こうした問題は特に女子教育に深刻な悪影響を及ぼしています。
お手洗いが無い、あったとしても使いづらい学校に在学している女の子の場合、「人前で用を足すのは恥ずかしい」と思いつつも、流す・手を洗うための水をバケツに汲んで、校舎から離れた野外まで用を足しに行くことが少なくありません。
用を足しに行く途中で周囲の大人から下品なことを言われたり、襲われたり、性的暴行を受けたりして、最悪の場合命を落とすこともあります。
何よりも、こうした問題のあるトイレや野外排泄は月経に対応できない上、不衛生だったり暴行を受けるリスクを伴ったりして特に危険なため、思春期になると学校を休みがちになったり、(欠席が増えて授業に着いていけなくなるという理由も含めて)学校を中退したりしてしまう女の子がたくさんいます。
・トイレの問題と貧困の関係
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このように、家・地域・学校などにトイレが無い・使いづらいという問題は、
・学校に通えず教育を受けられない
→早婚や若年出産に直結・仕事に就けない・生きていくために必要、適切な情報を得られない
・病気になって仕事ができない
→貧困から抜け出せない→経済発展も滞り、事態の打開が遅れる
といった別の問題に直結し、最終的に貧困の悪循環へ発展してしまうのです。
言い換えれば、こうしたトイレの問題を改善・解決することで、多くの社会問題の改善・解決に繋げることができるのです。
筆者が「トイレと貧困の悪循環」について3分弱で簡単に解説した動画が残っていますので併せてご覧ください。(1:10:10~1:12:50)
・「トイレが足りない・無い・使えない」という状況は開発途上国だけの話ではない
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日本でも「トイレが足りない・無い・使えない」という状況は、どこに居ても、どんな時でも容易に起こりえます。
例えば災害時や、災害・インフラ老朽化・作業ミスなどに起因する大規模断水/停電発生時、都市部での交通障害(電車やバスなどの運転見合わせ)時などが挙げられます。
勿論、トイレに限った話ではありませんが、「もし無かったら、無くなったら、使えなくなったら…?」という”もしも”について考える機会を持ち、備えや支援などのアクションを起こすことはとても重要なことです。
・多様化するトイレ問題と対策
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ここまでは「トイレが無いことによる問題」に焦点を当てて述べてきましたが、多様性(ダイバーシティ)の概念(考え方)が拡がり、ライフスタイルや家族構成などが多様化し、様々な障害が知られるようになってきたことなどによって、これらに関する新たなトイレ問題が顕在化しています。
一例ですが、
・外見では分かり難い障害のある人がバリアフリートイレを利用する際に、周囲の視線がストレスになってしまう
(補足:2021年3月から、国交省は「障害者用・多機能・多目的トイレ」という呼び方を『高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)』に改める方針を公表しました。[4])
・父親が乳幼児と一緒にお出かけする際、子どものオムツを換えたり着替えさせたりするためのベビールームが(授乳する母親もいるため)「男性入室禁止」にされている[5]
・トランスジェンダー(「LGBT」のT、身体的な性別と自身が認識している性別(性自認)が異なる人)の人がどちらの性別のトイレを使うべきか困っており、トラブルに遭うこともある[6][7]
・介助者と障害者本人が異性の場合、トイレを利用しづらい[5][7]
など、新しいトイレ問題が浮き彫り(明らか)になってきています。
こうして新しく分かってきた問題に対し、
・トイレを男女で分けない「オールジェンダートイレ」の導入
(「性犯罪の温床になる」「利用することで意図せず性的マイノリティであることのカミングアウト(公表)になってしまうのではないか」といった問題点も指摘されており、賛否両論であることも確かです)
・男子トイレを全て個室化する(壁も床から天井まで完全に密閉)
・男子小便器を横一列ではなく円形に並べたり、小便器も個室化したりすることでお互い見えないようにする(「いたずらや非行の温床になる」「コストがかかる」といった問題点が指摘されていることも確かです)[7]
・どのトイレに入ったか分からないようにするためのスペース(前室)の設置[6]
国・自治体や教育機関・トイレメーカーなどの官民が連携し、様々な工夫や対策が試行錯誤を重ねながら行われています。
できることから始めてみよう!
<関連コンテンツ>
ドキッとするけど大事なトイレのお話
SDGsを詳しく見てみよう!
村の自慢のトイレは、学校のトイレ!!
世界の子どもたち:世界こどもの日&トイレの日にちなんで
※記載内容は2013年当時のものです。
インド 健康向上・保健衛生プロジェクト報告!
※記載内容は2012年当時のものです。
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今日は何の日!? 国際デーから世界のことを考えよう!
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<引用>