【今日は何の日?】9月10日:世界自殺予防デー / World Suicide Prevention Day

9月10日:世界自殺予防デー
World Suicide Prevention Day

 

9月10日は、「自殺は証拠に基づいたアクションを通じて防げる(原文:suicides are preventable through evidence-based action.)」というメッセージを世界へ発信し、自殺対策を啓発する日です。2003年に、世界保健機関(WHO)と国際自殺予防学会(International Association for Suicide Prevention:IASP)が、スウェーデン・ストックホルムで「世界自殺防止会議」を開催したことにちなんでいます。[1][2]

 

日本では、自殺対策基本法に基づき、毎年9月10日から16日を「自殺予防週間」、毎年3月を「自殺対策強化月間」と定めて、国、地方公共団体、関係団体等が連携して「いのち支える自殺対策」という理念を前面に打ち出した啓発活動を推進しています。[2]

 

9/10「世界自殺予防デー」を機に、自分や周りの人の自殺を防ぐには何ができるのか、一緒に考えませんか?

 

もし、不安に感じる・悩んでいる・苦しいことがあれば、当団体の翻訳書「ウェルビーイングな暮らしをおくるためのヒント集」P.208~210に相談窓口を掲載しています。 ためらわずに活用してみてください。助けを求めることは恥ではなく、自分を大切にする強みです。


<もう少し解説>

・SDGsとメンタルヘルス

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SDG3は日本語で「すべての人に健康と福祉を」と表記されていますが、英語版は「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」と表記されています。間接・抽象的な形ではありますが、メンタルヘルス、ウェルビーイングに関する目標はSDG3.4で定められており、このSDG3.4の指標(達成状況を確認するための数値)の1つが自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)になっています。

SDG3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
English Version: Noncommunicable diseases and mental health: By 2030, reduce by one third premature mortality from non-communicable diseases through prevention and treatment and promote mental health and well-being.

 

・世界の自殺統計

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WHOの推計によると、世界では毎年70万人以上が自殺しています[3]
※この推計値はWHOのHPや文献・データベース上でも微妙に異なる数値が複数混在しており、自殺問題のファクトシートには「More than 720,000 people」と表記されています[4]

これを単純換算すると(365日×24時間×60分×60秒)÷700000人≒45秒/人、つまり「世界では毎年45秒ごとに1人自殺している」ことになります。ただし、自殺者数の統計数値は各国の様々な事情で集計が難しく[4]、2021年当時はコロナ禍でどの国も集計どころではなかったため、実態はもっと多かったと考えられます。実際、WHOも2019年の世界自殺予防デーのページでは「毎年40秒ごとに1人自殺している」と表記[5]し、関連したキャンペーンを展開していました。

WHOのデータベースによると、自殺は2021年の人類の死因第19位で、第20位の乳がん、第18位の転落・転倒事故の死者数とほぼ同等だったと推計されています[6]。メンタルヘルスの問題は予てから大きな社会課題になっていますが、このランキングの上位に、当時猛威を振るっていた新型コロナウイルスや、生活習慣病、がん、交通事故などが並んでいることからも、自殺は病気・事故などと並ぶ重大な社会・健康課題であることがわかります。

 

・日本の自殺統計

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日本の年間自殺者数は警察庁HP厚生労働省「自殺対策白書」などで確認することができます。

日本では1978年から年間自殺者数の統計を取っており、1978~1997年は2万人台前半で推移していましたが、1998年に深刻な不況などの理由で年間自殺者数が前年から8千人あまり急増して3万人を超え、2003年に最多の34,427人を記録しました。

こうした事態を受けて、日本政府が自殺対策基本法(2006年)や自殺対策総合大綱(2007年)などの法整備や後述するような自殺対策資料の作成などの対策へ本格的に着手したことで、年間自殺者数は2009年から少しずつ減少していき(3万人を切ったのは2012年)、年号が令和になった2019年は過去最少の20,169人と、2万人を切る目前まで減っていました。しかし、コロナ禍などの影響で2020年の年間自殺者数は再び増加に転じ(前年から900人あまり増加)、以降21,000人台で推移し続けています[7]

 

・子ども・若者世代の自殺問題

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肉体と同じく、子ども・若者時代の経験や心の健康状況は、人生全体の基礎になります。そのため、自分を含め多くの人々の心と人生全体へ暗い影を落とす自殺問題は、おとな世代以上に子ども・若者世代に大きな影響を及ぼす重大な問題として認識しなければなりません。しかし、子ども・若者世代の自殺問題は世界各国で深刻な状況になっています。

WHOのHPとデータベースを見ると「自殺は2019年の15~29歳世代の死因第4位だった」[8]→「自殺は2021年の15~29歳世代の死因第3位だった」[4]と報告されており、コロナ禍が事態の悪化に拍車をかけてしまったと考えられています。

日本国内ではコロナ禍以前からこの年間自殺者数の子ども・若者世代の割合が増えつつありましたが、2020年のコロナ禍で急増(2019→2020年で+100人)し、2022年に過去最多の514人を記録、2023年も513人と殆ど減っていなかったことがわかっています[9]

ちなみに、日本の子ども・若者世代の自殺問題は近隣諸国と比べても特に深刻な状況にあり、G7の中で2021年の10・20代(10~14・15~19・20~24・25~29歳の4階級)の死因ワースト1が全て自殺だったのは日本だけでした。余談ですが、比較範囲をG20・OECDに拡大しても、この4階級全ての死因ワースト1が自殺だったのは日本、オーストラリア、韓国、オランダ、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、チェコ、ポーランド、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランドの13か国のみでした。とはいえ、多くの国の10・20代の死因2~10位に自殺が入っています[6]

2021年の10・20代の死因に占める「自殺」の順位(G7)

国名 10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳
日本 1位 1位 1位 1位
カナダ 1位 1位 2位 2位
フランス 2位 2位 1位 2位
ドイツ 3位 2位 1位 1位
イタリア 5位 2位 2位 1位
アメリカ 1位 2位 3位 2位
イギリス 6位 1位 1位 1位

 

・自殺はなぜ起きるのか(自殺因子)[10][11][12][13][14]

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自殺は1つの原因で起きていることは少なく(例:いじめ)、複数の要因が複雑に絡み合って発生することが大半で、一般的に下記のような原因(因子)が挙げられています。
苦しんでいる本人が苦しみの原因・根源を理解・整理できるようにすること、周囲がその後押しをすること(この際、結論や個人の主観を押し付けたり否定・指図したりすることは逆効果なので厳禁)やそのための環境・制度を整えることが、本人の立ち直り・回復や、再発・誘発の防止に繋がると考えられています。

 

・職業問題、経済問題、生活問題、環境問題

失業、リストラ、多重債務、生活苦、生活への困難感、不安定な日常生活、生活上のストレス、スポーツや身体を動かすなど健康的な生活に必要な環境や時間が持てない、気候変動などの環境問題や災害によるストレスや、それらの事象への不安など

・精神疾患、身体疾患の罹患や、からだに対する悩み

うつ病、統合失調症、パーソナリティ障害、薬物乱用、摂食障害などの精神疾患や、身体疾患での病苦、性格や身体(からだ)に対する悩みなど(子ども世代の場合、学校へ行き渋る、自分を責めたりイライラしたりする、眠れない、食べられない、リラックスして好きなことを楽しめない、身体の不調を訴えても検査では異常がないといった兆候が現れることがあります)

・安心感の持てない家庭環境

過保護、過干渉、ネグレクト、DVなどのマルトリートメント(不適切な養育、虐待行為)、両親の険悪な夫婦仲、険悪な兄弟姉妹関係、頻繁な転居など

・性格や考え方の傾向

未熟・依存的、衝動的(キレやすい)、極端な完全主義、抑うつ的、反社会的(暴力・売春・薬物乱用、暴走行為などの非行)、二者択一思考、衝動性など)/自殺につながりやすい心理状態(自殺念慮、絶望感、衝動性、孤立感、悲嘆、諦め、不信感など

・喪失体験

離別(人間に限らず)、死別(人間に限らず)、失恋、病気、怪我、急激な学力・業績低下、予想外の失敗、本人にとって価値あるものを失うなど

・苦痛体験

いじめ、差別、迫害、望まぬ妊娠・中絶(性的暴行)、精神的重圧、事故・事件・災害(実際に見る・体験するだけではなく、報道などを見ることも含む)、戦争、拷問、人間関係のトラブルや悩み、家庭問題など

・孤立感/ソーシャルサポートの欠如

理解者、支援者がいない、社会制度が活用できないなど

・安全や健康を守れない傾向/危険行動

事故や怪我を繰り返す(未遂含む)、自暴自棄な行動をとるなど

・自殺未遂、自傷行為/過去の自殺企図、自傷歴、望ましくない対処行動

リストカット、オーバードーズ、飲酒、喫煙、薬物乱用など

・自殺企図手段への容易なアクセス

危険な手段を手にしている、危険な行動に及びやすい環境があるなど

 

・自殺直前のサイン(一例)

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先述した原因と一部重複していますが、以下のような様子・行動が見られた場合は、自殺に及ぶ可能性がかなり高まっているので、早急な対処が必要です[10][11]。ただし、あまりに悲しい・辛い出来事を受けて衝動的に自殺行為へ及んでしまうケースや、極限状態で精神が狂って何故か気丈に振る舞うことができてしまうケースもあるので、人や状況によってはこうしたサインを示すとは限りません。

なお、こうしたサインを発している時の心理状態(本気で死にたいと思っている時に感じていること)は次の節で列挙します。

・自殺のほのめかし、直接言及

「知っている人がいない所に行きたい」、「夜眠ったら、もう二度と目が覚めなければいい」などと言う、長いこと会っていなかった知人に会いに行く など

・自殺計画の具体化/別れの用意

自殺についての文章(または遺書)を書いたり、自殺についての絵を描いたりする、自殺の計画を立てる、自殺の手段を用意する、自殺する予定の場所を下見する、身辺整理、大切なものをあげるなど

・自傷行為
・怪我を繰り返す傾向
・アルコールや薬物の乱用(量・頻度の急増)
・行動、性格、身なりの突然の変化
・家出や放浪
・最近の喪失体験(身内が自殺した、失恋した、事件の被害を受けたなど)
・これまでに関心のあった事柄に対して興味を失う
・注意、集中できなくなる
・いつもならできるような課題が達成できない
・成績が急に落ちる
・不安やイライラが増し、落ち着きがなくなる
・投げやりな態度が目立つ
・身だしなみを気にしなくなる
・健康や自己管理がおろそかになる
・不眠、食欲不振、体重減少などのさまざまな身体の不調を訴える
・学校や職場へ通わなくなる、休みがちになる
・自分より年下の子どもや動物を虐待する
・友人との交際をやめて、引きこもりがちになる
・乱れた性行動に及ぶ
・感情が不安定になる。突然、涙ぐみ、落ち着かなくなり、不機嫌で、怒りやイライラを爆発させる
・激しい口論やけんかをする
・深刻な絶望感、孤独感、自責感、無価値感に襲われる
・これまでの抑うつ的な態度とは打って変わって、不自然なほど明るく振る舞う
・性格が急に変わったように見える
・周囲から差し伸べられた救いの手を拒絶するような態度に出る
・極端に食欲がなくなり、体重が減少する
・不眠がちになる
・さまざまな身体的な不調を訴える
・死にとらわれる(詳細後述)

・自殺の危険性が高い時の心理状態(一例)[10]

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自殺を本気で考えるほど苦しい時は「もう死ぬしかない、死んで楽になりたい」といった考えにとらわれ、物理的にも心理的にも周りが見えなくなってしまったり(心理的視野狭窄(きょうさく)と呼ぶこともあります、思考・判断自体も困難になってしまったりするなど、心理・思考面にも重大な支障が生じています。

・自己肯定感の喪失と無価値感の増幅

「自分はダメな人だ」と自分自身に対する自信を完全に失い、「生きていても無駄だ・自分なんていなくなった方がいいんだ」など、自分が生きていることさえも否定したくなってしまう など

・極度の孤立感
・極度の苛立ち、不安、怒り
・あきらめ
・絶望的状況が永遠に続くという思いこみ
・心理的視野狭窄

「どうせ誰も助けてくれない」「自分は一人ぼっちだ」「誰も信じられない」「もうどうでもいい」「死ぬしかない、死んで楽になるしかない」「もう放っておいてくれ」など、自暴自棄になってしまう
(そのため、支援や援助の手を自らはねのけたり、相談相手や援助者へ意図せずつらく当たったりして、「何であんなこと言っちゃった・やっちゃったんだろう…」という自己嫌悪する悪循環へ陥ることもあります。)

こうした心理・思考状態の特徴を知らぬまま、「何でそんなこともわからないんだ・思いつかないんだ」「何て自分勝手な人なんだ」「考え過ぎだ」などの批判や精神論をぶつけてしまうことは、自殺を踏みとどまらせるどころか、引き金を引かせるとどめになりかねません。

 

・死にたいと思うこと(希死念慮)は特異なものではない

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酷く落ち込んだり、ショックを受けたりして「消えてしまいたい、死にたい」と思うことは、誰にでもある感情・反応であり、特別・異常なものではありません。実際に、日本財団が2022年に全国の18~29歳の若者14,000人強に行った調査で、約45%が希死念慮経験(死にたいと思ったこと)があり、約19%(ほぼ5人に1人)が自殺未遂・自殺準備(遺書を書くなど)の経験があったことがわかっています[15]

 

・自殺を防ぐためには(防御因子の例)[10][11][12][14][16]

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自殺対策には既に多くの手段、考え方、理論などが確立されていますが、自殺という最悪の選択を「自分がしない」・「他者にさせない」という「予防」と「防止」に大別されます。ここでは個人でできるアクションの例を幾つか列挙します。
(思いやり・共感を示し合える学級環境づくりや、ハラスメントをさせない・しない職場環境づくり、相談・連携・情報共有体制の構築など、組織レベルで取り組む自殺対策の詳細は、厚生労働省や各自治体などの公的機関や業界団体などの専門機関のHPをご覧ください。)

【自分が「しない」ために】(予防策の一例)
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先述したように、「死にたい」と思うことは誰にでもあり、死ぬことしか考えられないくらい(心理的視野狭窄)まで追い込まれると、自殺を踏み止まったり、荒みきった気持ちを癒したりする方法を探す心の余裕は無いので、そもそも死ぬことを考えるくらいにまで精神的に追い込まれないようにすること、たとえ自殺を考えるくらい精神的に追い込まれても、気持ちを和らげて自殺を思い止まれるようにする「予防策」をできる限り多く知っておいたり、身につけたりしておくことが大事です。

 

・自分の心のコンディション(状態)を知る

「今日の身体の調子はどうですか?」ではなく「今日の心の調子/気分はどうですか?」と質問されたらどのように答えますか?
心のコンディション/気分の良し悪しを把握・自覚するためには、肉体のコンディションと異なり感覚や見た目にあらわれにくく(食欲不振や生理不順などの肉体のトラブルとしてあらわれるメンタルヘルス不調も中にはありますが)、個人差も大きいため、自覚するためには「どんな状態の時に、自分の心の調子が良い/悪いのか?」と自問自答や試行錯誤を継続することが必要です。

まずは自分の気分の良し悪しを点数や顔文字、天気などのイラストで表してみることから始めてみると取り組み易いかもしれません。(低年齢向けのメンタルヘルス関連教材で実際に取り入れられている手法で、ワークシートを公開している自治体もあります。)

 

・自分の感情や感情の動き方、対処策を知る

体質や性格が一人ひとり異なっているのと同じように、心/感情の動き方(やストレスの感じ方)も一人ひとり異なります。
「こんな時自分はこういう感情になる」「この感情はこうすると強まる/和らぐ・弱まる」というように、自分の感情の特徴・傾向や、自分の感情をうまくコントロールする方法を知ることは、自殺対策に限らずあらゆる場面で役立ちます。

感情や感情の大きさ/強さを表す言葉をたくさん知っておく(語彙を増やす)ことも有効なアクションです。

 

・考え方の傾向を知る

自殺因子の節で先述したとおり、完璧主義や二者択一(全か無か)思考や責任感が強過ぎるあまり、自ら自分を追い込み過ぎてしまい、心が疲れ果ててしまうケースもあります。「自分は心配性だ」「自分は完璧じゃないと気が済まないと考えがちだ」など、自分の考え方の傾向を知ることで、考え方・捉え方を変える(リフレーミング、いわゆる「ポジティヴ転換」)などの対処・予防策を講じることができるようになります。

専門的な話になりますが、医療現場ではこうした考え方の歪みをゆっくり直していく「認知行動療法」という手法が確立されています。

 

・レジリエンス(回復しようとする力)を高める

「肉体の疲労や負傷を回復する手段」と言われたら、休息、薬、食事、整体・マッサージなどの例が直ぐ頭に浮かびますが、「心が疲れたり傷ついたりした時に、元気な状態まで回復する・立て直すため有効な物事・手段」と言われたら、どのように答えますか?

当団体の翻訳書「ウェルビーイングな暮らしをおくるためのヒント集」P.91では、レジリエンスを自ら高めるためのヒントとして、「夢と現実のバランスを取る」「人生のどこかで自分の好きなことをする」「先のことはわからないという前提で人生に前向きになり計画を立てる」「目的地よりも出発地点を探す」「予期せぬこともあると想定する」「常に代わりのプランを用意する」「いいことばかりではないと自分に言い聞かせておく」という7項目を挙げています。

 

・HELP/SOSの出し方を知る、身につける(相談相手を決めておく・相談先を知っておく)

「事件、事故が起きた時は110・119(海難事故の場合は118)、災害が起きた時は171に電話する」「遭難した時は笛やのろしなどを使う」など、生活上のSOSの出し方はあらゆる所で見聞きしていますが、自分ひとりでは解決できなさそうな心のSOSも、心に大きなトラブルが起きる前に、誰へ・どのように相談すればばよいのか予め知っておくことが大切です。

当団体の翻訳書「ウェルビーイングな暮らしをおくるためのヒント集」P.36208~210にも相談相手の例や相談窓口を幾つか掲載しています。このほかにも、メンタルヘルス関連の相談窓口の案内は町の掲示板や公的機関などのあらゆる場所に出ているので、外出の際に探してみてください。

また、自分がどのような手段・言葉・文章であれば相談しやすいのか知るといった「SOSの出し方・伝え方」も日常生活の中で練習しておくことも有効です。助けを求めることは一切ネガティヴな(恥ずかしい・悪い)ことではありません。自分を守るための力・強みです。ためらわず積極的に活用しましょう。

 

・メンタルヘルス、精神疾患及び人権に関する正しい知識を知る

メンタルヘルス不調に限らず、病気に対する正しい知識・認識を持っておくこと、偏見を無くすことは予防・対処双方に役立ちます。
加えて、人権(18歳未満は「子どもの権利(条約)」)に関する正しい知識をもっておく(自分に保障されている権利を知る)ことも、とても有効な防衛手段になります。

特に子ども・若者世代の場合、理不尽(ブラック)校則やいじめ、虐待などの人権侵害が悩みや苦しみの発端・根源になっているケースも多いので、子どもの権利(条約)を制定年だけではなく、内容まで知っておくことをおすすめします。詳しくは当団体HPの解説ページ解説動画をご覧ください。

自分が直面した困難・トラブルに対し、「これは我慢や泣き寝入りしなくていいことなんだ、助けを求めていいんだ」と知る・気づくことができれば、先述したHELP/SOSを出すアクションへ繋げることができます。

【他者に「させない」ために】(防止策の一例)
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もし、身近な人に先述した「自殺直前のサイン」などの異変が見られた時、誰かから「死にたい」と相談された時、あなたはどう対処・対応しますか?ほかの人に自殺をさせないための手段は、状況や双方の立場などによって多岐に渡り、専門的な知識・技能・資格を要するものも少なくありませんが、下記の一例のように専門家でなくてもできることがあります。

 

・ゲートキーパー(門番)について知る、心得る

自殺対策における「ゲートキーパー」は、死にたいと本気で思ってしまうほど苦しんでいる人の話を傾聴し、その苦しみを受け留め、必要な支援に繋げたり、その手助け(病院や公的機関の窓口への同行など)をしたりする役割を担っています。

ゲートキーパーに関する資料や研修動画は厚生労働省や各自治体などの公的機関のHPでが多数無料公開されているほか、研修会を行っている自治体や団体もあります。精神的な負荷が大きい内容なので心の準備が必要になりますが、他者を援助するアクションを起こしたいという方は一節だけでも目を通してみることをお勧めします。
また、ゲートキーパー研修資料の中で付随して出てくる「傾聴スキル」(TALKの原則、ECOの原則など)や「メラビアンの法則」などの手法・理論は、自殺対策以外にもファシリテーションやコーチング、面談・商談などの幅広い分野にも応用できますし、自分の心の声を自ら傾聴する時にも役立ちます。

例:厚生労働省のゲートキーパーポータルサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper.html

勿論、ゲートキーパーをつとめるには、知識のインプットだけではなく、実際に相手の話を傾聴したり、適切な言葉を選んだりする経験・練習も必要です。そのため、教材や研修によってはロールプレイイングを行うものもあります。ロールプレイングを行う相手が居ない場合や個人で練習したい場合は、日常の会話で少しずつ練習していく方法もあります。

最後に、聴く側もずっと聴いているとどうしても身体・心理双方で疲れてしまう(後者はいわゆる「共感疲れ」)ので、聴く側もセルフケアの対処策を心得ておくことが大事です。

 

・社会課題について知る

先述した「ゲートキーパー」として、自殺を考えるほど苦しんでいる本人の話を傾聴している際、苦しみの主な原因が経済難、虐待や性犯罪、いじめ、ジェンダーや人種に関する差別などの社会課題になっているケースも少なくありません。2024年9月時点でリニューアル中ですが、当団体HPでもいくつかの社会課題を解説したページを開設していますので併せてご覧ください。
https://ftcj.org/we-movement/issues

 

・メンタルヘルスや人権に関する正しい知識を伝える

社会課題を伝えることもソーシャルアクションです。メンタルヘルスや人権に関する正しい知識・情報をほかの人へ伝え、偏見・誤解・差別を少しでも根絶に近づけることも、自殺に限らずメンタルヘルス問題全般の解決やSDG3.4の達成に繋がります。

 

自殺対策に限らず、メンタルヘルス関連の治療法や対処策は効果の個人差が大きく、同じ人・対処策でも状況や時期によって効果の程度が変わってくるため、できる限り多くの手段を1つずつ試し/実践し続けていくことがコツです。ここで列挙しているもののほかにも多くの手法や概念(考え方)がありますので、気になる方は「自殺対策 防御因子」などの言葉で検索してみてください。

 


できることから始めてみよう!

<関連コンテンツ>

・翻訳記事

29年の生涯を生きた女性が遺した希望

※記事内の「エリカ・レガシー財団」のHPはこちら(英語)

・10月10日「世界メンタルヘルスデー」

【今日は何の日?】10月10日:世界メンタルヘルスデー / World Mental Health Day

・当団体のウェルビーイング事業説明ページ

ウェルビーイング

・翻訳書「ウェルビーイングな暮らしをおくるためのヒント集~自分らしく安心していられるために~」(第1.1版)

リンク先の「ダウンロードする」からご覧ください。(大容量のためPCからの閲覧を推奨)

・コラム「コロナ禍と子どものメンタルヘルス、ウェルビーイング 」

【コラム】コロナ禍と子どものメンタルヘルス、ウェルビーイング

 

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、国連で定められている「国際デー」などを参考に、1枚10分以内で考えられる無料の教材を作成しました。
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ディスカッションのテーマとして、子どもが国際に興味を持つきっかけに、
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<引用>

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[1]国際自殺予防学会(IASP)HP「World Suicide Prevention Day」(英語)
[2]厚生労働省HP「広報の取り組み~いのち支える自殺対策~
[3]世界保健機関(WHO)HP「Suicide prevention」(英語)
[4]世界保健機関(WHO)ファクトシート「Suicide」(英語)
[5]世界保健機関(WHO)HPWorld Suicide Prevention Day 2019 – 40 seconds of action」(2019年9月19日・英語)
[6]世界保健機関(WHO)データベース「Global health estimates: Leading causes of death」及びページ下部「Global summary estimates」(xlsxファイル)
※このデータベースは項目の切り替えに15~30秒程度要するので気長に待つ必要あり
[7]厚生労働省「令和5年度版自殺対策白書」(第1章ー1 P.2)
[8]世界保健機関(WHO)報告書「Suicide worldwide in 2019」(英語・P.7)
[9]警察庁HP「令和5年中における自殺の状況」(2024年3月29日・スライド14ほか)
[10]厚生労働省「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」(第2章・2009年3月27日)
[11]新潟県教育委員会「新潟県自殺予防教育プログラム(小中学校編)」(2022年3月)
[12]厚生労働省HP「自殺の危険因子と防御因子
[13]厚生労働省「職場における自殺の予防と対応」(2007年12月)(P.23~26)
[14]世界保健機関(WHO)、河西千秋,平安良雄、横浜市立大学医学部精神医学教室「自殺予防 教師と学校関係者のための手引き(日本語版第2版)」(P.7~11)
[15]日本財団「第5回自殺意識全国調査」(詳細版はデータ上のP.56・図表77最上段)(2022年11月)
[16]兵庫県教育委員会HP「自殺予防に生かせる教育プログラム」(第1章・2017年3月)

 

・この記事を書いた人(筆者プロフィール)
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ボランティアスタッフS.S(記事公開当時、本人の意向により氏名・写真は非公開)

東京都出身、工学修士。ジャズやディスコ音楽、洋楽に傾倒していた両親や、海外の大手医療機器メーカーに勤務していた親族に感化される形で幼少から国際志向を有し、中学・大学でオーストラリア・アメリカ・フィンランド・エストニア・タイ、計5カ国の海外渡航、短期留学を経験。

大学/院では塾講師のアルバイトを6年、うち2年は機械製図・設計科目のTAも兼任し、当時全盛期だった「ゆとり教育」などの日本の教育や、(現在の「ブラック校則」なども含め)教育者の在り方、教育制度などに強烈な問題意識を覚えつつ、教育を通じた子ども・ユースの人格・リーダーシップ(現在の「生きる力」)などの育成・醸成に携わる。

大学院卒業後は一般企業2社に計5年勤務、2社目で長時間労働・各種ハラスメントの労働災害で精神障害に罹患し、何度か自殺・自傷未遂に及ぶが何とか踏みとどまる。最終的にドクターストップで退職、約2年かけて孤独死寸前の寝たきり・どん底から回復。

2018年以降、自身の「Gift + Issue = Change」の体現として、国際協力+教育の非営利活動、業界での社会復帰を模索するようになり、「世界一大きな授業(現:SDG4教育キャンペーン)2019」事務局インターンをきっかけに、2019年2月末から療養と並行しつつ教育・国際協力分野双方を扱うFTCJと関わるようになる。

2019年7月以降は翻訳・教材開発・データ集計/分析・資金調達・事務局運営などの裏方全般、団体広報代理(2020年~2022年5月)、「SDG4教育キャンペーン2021・2022」実行委員(子ども・ユースロビイング企画)を歴任。

2022年8月以降はインターンからボランティアへ立場を変え、2024年8月現在、団体事務局裏方・翻訳業務、教材開発、フィリピン支援(、たまにケニア支援)、ウェルビーイング事業を担当。