【今日は何の日?】10月10日:世界メンタルヘルスデー / World Mental Health Day

10月10日:世界メンタルヘルスデー
World Mental Health Day

 

世界精神保健連盟(WFMH、オランダ)が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。
その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされています。[1] [2]

 

「心身・メンタルヘルス・ウェルビーイング」とは何か一緒に考えませんか?

 

<もう少し解説>

・年間テーマ

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この日に向けて、WHOやWFMHはそれぞれ毎年異なるテーマを掲げており、これらのテーマに即したメンタルヘルス関連イベントや活動が世界中で行われています。(下記の和訳は筆者によるもの)

<WHO歴代テーマ>[2]
World Mental Health Day 2013 – Mental health and older adults(メンタルヘルスと高齢者)
World Mental Health Day 2014 – Living a healthy life with schizophrenia(統合失調症とともに健康的に生きる)
World Mental Health Day 2015 – Dignity in mental health(メンタルヘルスにおける尊厳)
World Mental Health Day 2016 – Psychological first aid(心理的な応急処置)
World Mental Health Day 2017 – Mental health in the workplace(職場におけるメンタルヘルス)
World Mental Health Day 2018 – Young people and mental health in a changing world(変わりゆく世界における若者とメンタルヘルス)
World Mental Health Day 2019 – Focus on suicide prevention(自殺防止)
World Mental Health Day 2020 – Move for mental health: let’s invest(メンタルヘルスのために行動・投資しよう)
World Mental Health Day 2021 – Mental health care for all: let’s make it a reality(全ての人のためのメンタルヘルスケアを実現しよう)
(2022・2023年はWFMHと同じテーマ)

<WFMH歴代テーマ>[3] 1994-1995 Improving the Quality of Mental Health Services throughout the World(世界中でメンタルヘルスサービスの質の向上を)
1996 Women and Mental Health(女性とメンタルヘルス)
1997 Children and Mental Health(子どもとメンタルヘルス)
1998 Mental Health and Human Rights(メンタルヘルスと人権)
1999 Mental Health and Ageing(メンタルヘルスと老化)
2000-2001 Mental Health and Work(メンタルヘルスと仕事)
2002 The Effects of Trauma and Violence on Children & Adolescents(暴力とトラウマが子どもに及ぼす影響)
2003 Emotional and Behavioural Disorders of Children & Adolescents(子どもの感情・行動障害)
2004 The Relationship Between Physical & Mental Health: co-occurring disorders(身体的・精神的健康の関係:同時発生する障害)
2005 Mental and Physical Health Across the Life Span(一生に渡る精神・肉体的健康)
2006 Building Awareness – Reducing Risk: Mental Illness & Suicide(啓発ー心の病と自殺のリスク低減)
2007 Mental Health in A Changing World: The Impact of Culture and Diversity(変わりゆく世界におけるメンタルヘルスー文化と多様性の影響)
2008 Making Mental Health a Global Priority: Scaling up Services through Citizen Advocacy and Action(市民のアドボカシー・活動を通じ、「メンタルヘルス」を世界的な優先トピックへ)
2009 Mental Health in Primary Care: Enhancing Treatment and Promoting Mental Health(プライマリ・ケアにおけるメンタルヘルス:治療の拡充とメンタルヘルスの促進)
※プライマリ・ケアに関する詳細説明は日本プライマリ・ケア連合学会HPの解説をご覧ください。
2010 Mental Health and Chronic Physical Illnesses(メンタルヘルスと慢性的な身体の病)
2011 The Great Push: Investing in Mental Health(メンタルヘルスへの投資を)
2012 Depression: A Global Crisis(うつ病:世界的危機)

(2013~2020年はWHOと同じテーマ)
2013 Mental Health and Older Adults(メンタルヘルスと高齢者)
2014 Living with Schizophrenia(統合失調症とともに生きる)
2015 Dignity in Mental Health(メンタルヘルスにおける尊厳)
2016 Psychological and Mental Health First Aid(心理学的及びメンタルヘルス面の応急処置)
2017 Mental Health in the Workplace(職場でのメンタルヘルス)
2018 Young People and Mental Health in a Changing World(変わりゆく世界における若者とメンタルヘルス)
2019 Mental Health Promotion and Suicide Prevention(メンタルヘルスの推進と自殺防止)
2020 Mental Health for All Greater Investment – Greater Access(メンタルヘルスへのさらなる投資とアクセスを)
2021 Mental Health in an Unequal World(不平等な世界におけるメンタルヘルス)
2022 Make mental health & well-being for all a global priority(すべての人のメンタルヘルスとウェルビーイングの優先度を地球規模へ)
2023 Mental Health is a Universal Human Right(メンタルヘルスは万人の人権)

・グリーン/シルバーリボン運動

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この日の周知のほか、メンタルヘルスに関するシンボルとして、緑または銀色のリボンがあります。国際的には、この日を定めたWFMHが提唱している「グリーンリボン」を身に着けることで「私はメンタルヘルスに関心があります・メンタルヘルスに関するアクションを起こしています」といった意思表示をする動きが定着しています。
また、緑色は健康・生命を表す色でもあるため、グリーンリボンは環境保護や臓器移植のシンボルも兼ねています。

 

一方、日本では厚生労働省が脳や心に起因する疾患・障害およびメンタルヘルスへの理解促進を目的とした「シルバーリボン運動」を特設ページで紹介しています。[1]
※シルバーリボン運動の詳細・歴史は特定非営利活動法人 シルバーリボンジャパンHP内の解説をご覧ください。

・SDGsとメンタルヘルス

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同じく緑色のロゴであるSDG3でもメンタルヘルスに関する目標が定められています。

SDG3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。

・メンタルヘルスとは

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日本語にすると「精神的な健康(状態)」と訳せるように、「心の健康状態」のことを表します。
身体が疲れたり弱ったりしたまま無理をし続ければ、筋肉痛や疲労骨折を起こしたり、病気にかかったり悪化したりしてしまうのと同じく、メンタルヘルスも調子が悪いまま放置したり負担をかけ続けたりすると「心の病」にかかってしまいます。

厚生労働省では、メンタルヘルス不調を「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」と定義しています。[4]

その他、ギャンブルやスマホ、薬物やアルコールなどの「依存症」も心の病に分類されています。[5]

・メンタルヘルス不調、心の病と身体の怪我、病気との違い

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「身体の病気・怪我」と「心の病気・怪我(心的外傷・トラウマ)」には多くの違いがあります。筆者の実体験を交えながら幾つか挙げていきます。

●自分がメンタルヘルス不調だと自覚しにくい

「のどが痛い」「せきが出る・目が充血する」「傷口から出血している」など、主な身体の病や怪我は目に見える・自覚しやすい症状がありますが、心の病は兆候(初期症状)や自覚症状が分かりにくい上、周囲からも分かり難く、きっかけや治療法も人それぞれ異なるなどの違いが多数あります。
(「動作が全体的に遅い・緩慢」「物事を素早く・正確に判断できなくなる」「表情が虚ろ」「涙が止まらない」「死んでしまいたい・消えてしまいたいと頻繁に言う(自殺願望または希死念慮(きしねんりょ)と表現することもあります)」など、周囲が明らかに異常と判断できる症状が現れるのは、メンタルヘルス不調がかなり深刻になってからです)

 

これらの初期症状も個人差が大きく、「肩甲骨周りがヒートアップする」「考え方がネガティヴになる」「何事に対しても批判的な態度・思考になる」「語気が強くなる」など、身体・思考・感情・行動などの様々な面で複合的に表れるため、「今、自分は~の状態だからストレスが溜まっているな、イライラしているな、落ち込んでいるな、精神的に疲れているな」と、自分のメンタルヘルスやその変化へ敏感になることが重要です。こうしたアンテナを立てておき、知見を蓄積することで、周囲の人のメンタルヘルス不調を(本人以上に)いち早く察知して手を打つこともできるようになります。

 

また、後述する「メンタルヘルス不調に対する理解不足・偏見」によって、自分がメンタルヘルス不調・精神障害だと自覚せず放置して重症化するケースや、精神障害に対する偏見で、周囲が通院を勧めても患者本人が診療を拒否するケースもあります。
筆者の場合、メンタルヘルス不調に陥ったのは2014年でしたが、「何事にも興味・関心が薄れて無気力になり、趣味も止めてしまった」「何事に対しても意欲・やる気が出ない」といった症状を「過労だから・多忙で趣味に割く時間が無いだけ」「うつ病=気分の落ち込み・自殺願望が酷い病気だから自分の無気力は心の病ではない」と長らく間違った思い込みをしていたり、周囲の信頼していた上司たちから間違った入れ知恵を鵜呑みにしたりしていたため、正確な情報を知って自分がうつ病だと自覚し、通院・治療を開始したのは2年後の2016年秋、症状も前職の仕事にドクターストップがかかるほど進行していました。

 

●治らないわけではないが、改善・回復には長い時間と根気を要する(数日~1週間程度で治るようなものではない)

多くの書籍や専門機関などのウェブサイトで「メンタルヘルス不調は不治の病ではなく、改善・回復できるもの」と記載されていますが、「処方薬や漢方薬・栄養ドリンクを飲んだ・点滴を打った・薬を塗った・手術して悪い場所を切除したから”近いうちに”直る」というものではなく、回復には身体の怪我や病気よりも長い時間を要します。(寧ろ焦って治そうとすると焦りが負担と化して逆効果になったり、後述する再発リスクを高めることになります)

症状の程度や個人差で大きく異なりますが、療養・治療にかかる期間は月単位から年単位、長いものでは10年以上になるケースもあります。
筆者の場合、メンタルヘルス不調に陥ってから7年経った2021年現在でも通院や服薬を続けながら当団体の業務を行っています。

 

●フラッシュバック/再発リスクがある

軽症/傷の怪我や病気の場合、損傷・病変した部分が完治すれば、傷口が後で開いてしまったり、新たに感染・発症していないのに同じ場所に炎症や腫瘍ができたりする可能性は限りなくゼロに近くなります。
一方、心の病の場合、「再発リスク」を伴っていることや、(ある程度耐性を鍛えることもできますが)予防接種、ワクチンなどのように(ほぼ)確実に予防できる対策をなかなか見つけにくいことも大きな違いです。

人の記憶や心的トラウマはSF映画・特撮・バトルアニメやコンピュータのデータやバグのように完全・容易に消去・克服できるものではないので、辛い経験や記憶(心的トラウマ)を完全に自分から切り離すことはできません。メンタルヘルス不調から回復した後でも、些細なきっかけで、自分の経験した辛い過去の記憶や場面を無意識に思い出してしまい、気分が落ち込んだり、涙や汗が出てくるなどの症状が出たり(これを「フラッシュバック」と言います)、不調時と同じ症状が何年も後に繰り返し出ることがあります。

筆者の場合、今でも過去の嫌な経験と同様の言動を受けると酷く落ち込んでしまったり、個人的な心的トラウマに関連する言葉を目にするだけで、過去の嫌な記憶に気を取られ、判断力や注意力が落ちたりしてしまうことがあるため、嫌な記憶に関連しそうなものがある場所を(遠回りしてでも)避けるなどの自己防衛をしています。それでも意図せずフラッシュバックが起きたり再発したりしてしまった場合は、「とりあえず一旦寝る」「家を掃除して気を紛らわせる」などの、「セルフケア」(後述)をしています。

 

●対処・予防策(セルフケア)の個人差が大きい

勿論、心の病や障害に対しても、症状・病気ごとにどのような薬を使うかはある程度決まっており、「じっくり休むこと」がどの症状に対しても有効であることは分かっていますが、メンタルヘルス不調の改善や予防策も個人の好き嫌いや興味関心に大きく影響されます。

例えば「好きなコスメを使うことで気分が上がる」という人もいれば、「運動することで汗とともにストレスを発散する」という人がいるように、ストレス発散・解消の方法や、「スクイーズをにぎにぎする」「失敗しても良い経験とポジティヴ変換する」など、ストレスへの予防策は個々人で大きく異なります。
※無理なポジティヴ変換は逆効果になる場合もありますので程々に…

どのような対処法が自分に適しているのか、他の人の取り組みや考えを取り入れつつ、試行錯誤を重ねていくこともメンタルヘルスケア手法の一つです。

 

・精神障害者に対する偏見、差別

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凶悪犯罪に関する偏った・誤った報道(犯人の精神鑑定・責任能力の有無云々の報道がなされるなど)、精神・心・脳の障害、発達障害などへの理解不足・偏見から、こうした障害のある人に対する差別やいじめ・人権侵害・凶悪犯罪が未だに起きています。

筆者の実体験ですが、メンタルヘルス不調による無気力に対して「人格・性格の問題・愛情不足」(要約)といった「精神論」で周囲から言葉・身体的双方の暴力を振るわれたり、前職で心の病をカミングアウト(打ち明けた)したらパワーハラスメントや不当解雇を受けたり、「精神障害者は入居できない」と引越の内見や案内を門前払いされたりしたこともあります。

・メンタルヘルスを考えるうえで大事なこと

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先述したような偏見や差別は、正しい知識・情報を知り、伝え、実践していくことで、時間をかけて課題や問題を払拭・解決していくことが重要です。
自分のメンタルヘルスをメンテナンスしていくためには、自分がどのように感じ・考え、どのように反応するのか、「自分をより深く知ること」で現状把握や予防・対処・治療方法の精度を、「急がず」「1つずつコツコツと」時間をかけて試し、向上させていくことがコツです。
そして、他の人とメンタルヘルスに関する取り組みや考えを共有し、取り入れていく柔軟・寛大さも心がけていくことで相乗効果へ繋げることもできますよ。
(メンタルヘルスに限った話ではありませんが、)「どんなに小さななことでも構わないので、自分ができる範囲のことからやっていく」ことを心がけてみてくださいね。


できることから始めてみよう!

<関連コンテンツ>

4月28日「職場での安全と健康のための世界デー」

【今日は何の日?】4月28日:職場での安全と健康のための世界デー / World Day for Safety and Health at Work

・当団体のウェルビーイング事業説明ページ

ウェルビーイング

 

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、国連で定められている「国際デー」などを参考に、1枚10分以内で考えられる無料の教材を作成しました。
↓こちらのリンクからご覧いただけます。↓

今日は何の日!? 国際デーから世界のことを考えよう!

ディスカッションのテーマとして、子どもが国際に興味を持つきっかけに、
授業の冒頭での活用など、たくさんの場面でご活用ください!

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<引用>

 

・この記事を書いた人(筆者プロフィール)
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FTCJインターンS.S(記事公開当時、本人の意向により氏名・写真は非公開)

東京都出身、工学修士。ジャズやディスコ音楽、洋楽に傾倒していた両親や、海外の大手医療機器メーカーに勤務していた親族に感化される形で幼少から国際志向を有し、中学・大学でオーストラリア・アメリカ・フィンランド・エストニア・タイ、計5カ国の海外渡航、短期留学を経験。

大学/院では塾講師のアルバイトを6年、うち2年は機械製図・設計科目のTAも兼任し、当時全盛期だった「ゆとり教育」などの日本の教育や、(現在の「ブラック校則」なども含め)教育者の在り方、教育制度などに強烈な問題意識を覚えつつ、教育を通じた子ども・ユースの人格・リーダーシップ(現在の「生きる力」)などの育成・醸成に携わる。

大学院卒業後は一般企業2社に計5年勤務、労働災害による精神障害罹患&ドクターストップで退職、障害と貧困の二重苦の中、2年ほど三途の川のほとりをお散歩。

2018年以降、自身の「Gift + Issue = Change」の体現として、国際協力+教育の非営利活動、業界での社会復帰を模索するようになり、「世界一大きな授業(現:SDG4教育キャンペーン)2019」事務局インターンをきっかけに、2019年2月末から教育・国際協力分野双方を扱うFTCJと関わるようになる。

2019年7月以降は翻訳・教材開発・データ集計/分析・資金調達/クラウドファンディング・事務局運営などの裏方全般、団体広報代理(2020年~2022年5月)、「SDG4教育キャンペーン2021・2022」実行委員(子ども・ユースロビイング企画)を歴任。2022年8月以降はインターンからボランティアへ立場を変え、2023年5月現在、団体事務局・翻訳業務、フィリピン支援(、たまにケニア支援)、ウェルビーイング事業を担当。