【最終報告】「SDG4教育キャンペーン2021」子ども・ユースロビイング活動(外務省)
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、持続可能な開発目標(SDGs)の教育目標4の達成を目指す「SDG4教育キャンペーン」(主催:教育協力NGOネットワーク(JNNE))に本年も実行委員として参加しました。
「SDG4教育キャンペーン」は、SDG4(教育目標)に関する、主要政党へのアンケートの実施、アンケート結果に対する子ども・ユース世代からのウェブ投票・意見募集や、子ども・ユース世代によるロビイング活動を展開しています。
本年の「SDG4教育キャンペーン2021」では、4~5月にかけて、6党(自民・公明・立憲・共産・社民・れいわ)から頂いた「SDG4(教育目標)に関するアンケート」の回答を、政党名を伏せた状態で読み、自分が「最も賛同する」党を選んでウェブ投票を行いました。その結果、昨年を大幅に上回る3,896人から延べ4,134件の投票・コメントをいただきました。(詳細はキャンペーンHP内の報告をご覧ください。)
※アンケートの詳細解説はこちら
全国からいただいた投票結果・コメントは、当団体が4月~大型連休にかけて募集・選考した子ども・ユースロビイングメンバー24名が、6~9月にかけて、アンケートに回答した政党及び関連省庁へのロビイング(訪問・政策提言)時にお届けしました。
9月30日(木)、ロビイング最終回として外務省担当者とオンラインで面会しました。(当初、対面・オンライン混合形式で実施する予定でしたが、緊急事態宣言延長により全面オンライン形式へ変更しました)
本記事では、子ども・ユースロビイングメンバーが行った質問・提言や、省庁担当者との意見交換の様子を抜粋して報告致します。
9月30日(木)17:00~17:30に、外務省国際協力局の岡田審議官、また同局地球規模課題総括課高杉上席専門官と青木課長補佐と、キャンペーンのメンバー10名がオンラインで面会し、政党アンケートの国際課題に関連する質問4・5・6(緊急下の教育支援、女子教育支援、学校保護宣言の支持)について提言・意見交換を行いました。また、スタッフとして、キャンペーン事務局である開発教育協会(DEAR)、同じくキャンペーン実行委員であるシャンティボランティア会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、ワールド・ビジョン・ジャパン、プラン・インターナショナル・ジャパンの職員も同席しました。本記事では、外務省の返答・コメントを抜粋し、一部情報を補足した上て報告致します。
質問4:緊急時の教育支援を行う「教育を後回しにできない基金」(ECW)について
子ども・ユースロビイングメンバー:シリアやイエメンなど紛争が長期化している地域において、子どもたちが教育を受けられない状況がある。教育を受けられない子どもたちは、今後紛争に加担していく可能性もある。日本はユニセフなどに拠出していますが、それは教育だけに焦点を当てた基金ではない。緊急下の教育に焦点を当てたECWへの拠出も検討してください。
岡田審議官: 私たちもECWの主旨には賛同しており、積極的に取り組む基金であるとは認識している。現在、JICAを通じた2国間支援やユニセフなどを通じて教育支援をしている。今年の3月には遠隔教育の必要性があり、拠出をした。
質問5 国際的な教育課題に対する日本の支援:「教育のためのグローバルパートナーシップ」(GPE)について
【補足】
この質問は、下記の背景を前提に行いました。
コロナ禍で女子教育への支援の歩み・手が緩んだり止まったりしてしまうと、アフターコロナ(新型コロナウイルス感染拡大が収束した後)の世界は、コロナ禍前よりも悪い状態に後戻りしかねない。 ↓ そのため、 ・6月にイギリス・コーンウォールで開催されたG7(Group of Seven、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの主要な先進国のこと)サミットで「女子教育への支援」が重要議題の一つになった ・教育のためのグローバル・パートナーシップ:GPE(Global Partnership for Education)という基金が、2025年までに50億米ドルを超える巨額の資金調達(お金を集めて用意すること)を表明し、2021年7月28-29日に増資の(もっとお金を集める)ための会合「世界教育サミット2021」を同じくイギリス・ロンドンで開催。G7を筆頭にGPEにお金を出している国々が、今後(2025年までに)GPEにどのくらいのお金をさらに拠出(増資)するのか発表した。 ↓ 一方、日本がGPEへの拠出している金額は、世界の国々の中でも下から数える方が早く、G7内ではイタリアに次ぐ最下位に位置している。(リンク先はGPE日本語版公式サイト) 以上から、2021年上半期は「女子教育への支援」を拡充し、国際社会で日本がリーダーシップを示していく上で絶好のチャンスだった。ここまでの背景を受け、本キャンペーンが主要政党へのアンケートを3月に実施。 (ここまでは5/1に投稿した解説記事と同じ内容) ↓ しかし、GPEの増資会合「世界教育サミット2021」では、参加した国々の中で唯一日本政府だけが具体的な拠出額を表明しなかった。 外務省は「日本は1年ごとに予算を組んでおり、長期間の拠出要請には明確に応じられない」と共同通信に理由を回答したとのこと。 引用:高知新聞2021年9月5日号(紙面版) ↓ 8/27に本キャンペーンが財務省担当者とオンライン面会した際にもGPEに関する質問をし、財務省は「GPEへの追加拠出は想定していない。財務省としてはIDA(世界銀行最貧国向け基金、173カ国が出資)において効果的な支援を行っている。」と回答。<参考> ・9/4 共同通信ほか多数「日本、女子教育資金示さず G7、27億ドル提供合意」 https://nordot.app/ ・GPE公式サイトによる「世界教育サミット2021」 |
子ども・ユースロビイングメンバー:GPEの増資会合(世界教育サミット2021)で、日本は先進国で唯一増資を表明しませんでした。教育を受けることで人生の可能性をいかに広げることができるのか、学生として実感しているので、是非GPEへの拠出を増額してほしいと考えています。
岡田審議官:記事(上記)を読まれたとのことだが、今後より深く考えるためには、さらにもっと自分で勉強して調べていくことが大事だと思う。今回は遠隔教育が大事だということで、世界教育サミットの前に前年度より大きな金額を拠出している。GPEについては2021年度に720万ドル拠出するとしている。「教育、特に女子教育は大事。日本では男女同様に教育を受けられるが、途上国にはそうでないところもある。支援していく」と茂木外務大臣も発言している。
質問6 国際的な教育課題に対する日本の支援:教育を受ける権利・学校保護宣言について
子ども・ユースロビイングメンバー:タリバンが首都を奪還したアフガニスタンのような地域でも、学校が守られるよう、ぜひ学校保護宣言への支持を表明してください。
岡田審議官:目的自体は基本的によいと評価しているが、国際人道法などのほかの条約と比較すると用語の使い方が不明瞭な部分も見られる他、国として支持するかどうかも別の話になってくる。みなさんにはもっと勉強していただき、関心を広げてほしい。国内、そして、国外の課題解決のために取り組んでほしい。今の思いを持ち続けて将来に活かしてほしい。
最後に、岡田審議官から「放課後の貴重な機会に参加してくださり、ありがとうございます。若い方々が他の国々に関心を寄せていることや、提言を出してくださったことに感謝しています。活動を通じていろいろ学ばれたことと思います。将来、外務省や国際機関へのキャリアも将来の選択肢に加えてください。」というお礼とエールの言葉をいただきました。
外務省国際協力局地球規模課題総括課の皆様、ありがとうございました!
<メンバーの感想>
・私は今回の活動を通し、自分が社会の一員であると自覚することができました。そして、政治家や省庁で社会の中枢にいる方々に、自分の意見を伝えられるという事に新鮮な驚きと喜びを感じました。また、他のメンバーの意見を聞き、問題意識の高さに感銘を受けました。個人の力や一度のロビイングでは難しいと思いますが、みんなで繰り返し声をあげ続ける事によって、何かが変わるかも知れないと思えました。これからもキャンペーンを続けていただきたいし、より多くの人々に知って欲しいです。(おおはし さん(2020年FTCJ子どもアンバサダー)・神奈川県)
・外務省の方は、すごく経験や知識が豊富であったので、話していて面白かったです。また、外務省の方々と話して、国民の税金を使ってODAを行うことへの責任、というものがいかに大きいかを感じました。どこにでも援助をするのではなく、効果的に援助が行えるところに援助を行う、ということが大切なのだと感じました。これからも、さまざまなことに関心を持って勉強していきたいです。(高橋さん・東京都)
・外務省の方々とのロビイングを通して、なぜ日本がECWに拠出していないかなどの理由を知ることができたので、今後に活かしていきたいです。また、外務省の方が親身になって話を聞いてくださって子どもが声を上げることの大切さに気づきました!(植岡さん・神奈川県)
本年も全国から約4,000人からたくさんのご意見やご感想・提言をいただき、国政を担う主要政党の国会議員、省庁の皆様へお届けすることができました。ご参加いただいた皆様へ心より御礼申し上げます。
本ロビイング企画に参加したメンバーたちも「ゼロベースで参加したので不安だったが、政治・国会議員に対するイメージが変わった」「参政に対する意識・関心が高まった」といった認識の変化や様々なスキルの成長を実感して活動を終えることができたようです。
(2021年10月18日22:45更新)
本キャンペーン・ロビイング企画が自らのソーシャルアクション(社会貢献活動)の拡がりに繋がったメンバーも居るようで、「本ロビイング企画の経験を基に、別分野で新たなアドボカシー(政策提言)活動を始めたい」という企画案が複数のメンバーから当団体にそれぞれ届き、下記のとおり活動を開始しました。
【子どもメンバー主催】With Refugees’ べんきょう会(We are the MOVEMENT 2021-2022)
政権が移行し、10月31日にはハロウィンとともに第49回衆議院選挙も控えています。新政権・議会に本年のキャンペーンでお届けした声を最大限反映していただけるよう、JNNE(教育協力NGOネットワーク)及び当団体は引き続き様々な分野から子ども・ユースの声を政治へ届けてまいります。
引き続き、来年の「SDG4教育キャンペーン2022」(仮)にもご参加いただけますと幸いです。