【報告】「SDG4教育キャンペーン2022」子ども・ユースロビイング企画:文部科学省訪問

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、持続可能な開発目標(SDGs)の教育目標4の達成を目指す「SDG4教育キャンペーン」に、本年も実行委員として参加しています。「SDG4教育キャンペーン」は、SDG4(教育目標)に関する、主要政党へのアンケートの実施、アンケート結果に対する子ども・ユース世代からのウェブ投票・意見募集や、子ども・ユース世代によるロビイング活動を展開しています。

「SDG4教育キャンペーン2022」バナー
キャンペーンバナー (C)JNNE

 

本年の「SDG4教育キャンペーン2022」では、8党(自民・公明・立憲・維新・共産・国民・れいわ・社民)から頂いた「SDG4(教育目標)に関するアンケート」の回答を、政党名を伏せた状態で読み、自分が「最も賛同する」党を選んでウェブ投票を4~5月にかけて行いました。その結果、延べ4,383件の投票・コメントをいただきました。(詳細はキャンペーンHP内の投票結果報告をご覧ください。)
※アンケート設問の詳細解説はこちら

 

全国からいただいた投票結果・コメントは、当団体が募集・選考した子ども・ユースロビイングメンバーが、アンケートに回答した政党及び関連省庁へのロビイング(訪問・政策提言)時に毎年お届けしています。
なお、本年の政党・国会議員への政策提言は6月6日(月)に実施した院内集会で代替致しました。(院内集会のアーカイブ動画はこちら
さて、今回は省庁訪問前半として、7月14日(木)に文部科学省を訪問し、担当者と面会しました。本記事では、子ども・ユースロビイングメンバーが行った質問・提言や、省庁担当者とのディスカッションの様子を抜粋・要約して報告致します。


7月14日(木)17:30~18:00に、文部科学省の皆様(里見大臣官房審議官(総合教育政策局担当)・井川初等中等教育局児童生徒課生徒指導調査官・齊藤初等中等教育局教育課程課教育課程総括係長・平井総合教育政策局政策課企画調整係員・齊藤総合教育政策局地域学習推進課法規係員)(肩書は当時)とメンバー4名が対面・オンライン双方で面会し、政党アンケートの質問1(理不尽・非合理校則と子ども・若者の意見表明権)、質問2(夜間中学設置推進)、質問3(高校無償化促進)の投票結果報告と、質問1に関するディスカッションを行いました。本記事では、文部科学省からのコメントやメンバーとのディスカッションの様子を抜粋して報告致します。

 

集合写真 ※感染対策を講じたうえでマスクを外しています

 

●子どもの意見表明について

ロビイングメンバー:周囲に子どもの権利や意見表明権について質問したり、アンケートをとったりしたところ、「自分には無関係だと思っていた」「そもそも知らなかった」といった回答が多く、子どもの権利(条約)の存在・内容や「子ども・若者には社会を変える力がある」という意識の周知・浸透が進んでいないと感じている。また、校則の変更・改善について年1回の生徒総会で毎年議論しているが、「決まっていることだから」など、色々な理由をつけて大人から否定されることが多く、大人が子ども・若者の声を聴く機会や姿勢が足りていないのではないかと感じている。そのため、「子どもの意見表明権」を次期教育振興基本計画に盛り込み、学校教育の場で子どもの意見表明権を伝え・教える機会や、大人が子ども・若者の声を聴く機会をさらに拡充してほしい。

 

文部科学省:様々な地域・学校・学年の子どもたちが、国内外の社会問題に着目し、議論・提言をされていることを大変心強く感じている。教育基本法」の「教育の目標」の一つに「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。」(第2条第3号)という条文があり、子どもの意見を年齢に応じた形で表明することは非常に大事だと考えている。
引用:電子政府の総合窓口e-Gov「教育基本法(平成十八年法律第百二十号)

 

6月に成立した「こども基本法」の基本理念にも、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。」「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。」(法案第3条第3号・第4号)と明記された。こうした法律からも、皆さんが意見を表明する機会を求めていくことは第一歩であり、私たち大人も、子ども・若者の立場に立って、声をしっかり受けとめ、尊重していくことが大事だと考えている。
引用:内閣官房HP「こども政策の推進(こども家庭庁の設置等)」「こども基本法(令和四年法律第七十七号)」

 

ロビイングの様子

●次期教育振興基本計画について

文部科学省:次期教育振興基本計画は現在議論を進めているところで、パブリックコメントの募集も予定している。中央教育審議会によるこの議論の中でも、子ども・若者の意見をもっと聴くべきではないかという意見も出ていた。

(参考)
中央教育審議会教育振興基本計画部会
第1回 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo17/siryo/mext_01082.html
第2回 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo17/siryo/mext_00001.html
第3回 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo17/siryo/mext_00002.html
第4回 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo17/siryo/mext_00004.html

 

 

●理不尽・非合理校則について

文部科学省:校則については、昨年6月8日に「校則の見直し等に関する取組事例について」を筆頭に、全国の学校へ理不尽・非合理校則などを時代に合わせた形で適切に運用できるよう常に見直すことを通知したり、全国の改善事例を共有したりする取組を継続している。子ども・若者の皆さんの意見も聴いて、一緒に考えていけるような環境にしていきたい。

 

 

●ディスカッション:子どもの権利や意見表明権を教え・広めるためには何が必要・重要か?

ロビイングメンバー:(先述された)「国・政府の方針」があるものの、自治体や学校などの「現場」では、子どもの権利は名称や存在を教えるだけに留まっているなど、国と現場との「温度差」が生じている現状があるが、これに対しどのように考えるか?

 

文部科学省:ケースバイケースだが、勉強を教えることだけではなく、子ども・若者の声を聴くことや、学校の安全面、いじめ・虐待対策(地域・家庭との関わり方)など、学校に求められている要素が増え、現場の教員の負担も過大になっている。こうした問題を解消するには、お互いを尊重しながら意見を聴き合い、時間をかけてコミュニケーションを重ねていくことが重要になってくると思う。

 

ロビイングメンバー:確かに、地域・学校ごとに教員の負担や校則などの制度の違いは大きかったり、ケースバイケースになってしまう部分もあるとは思うが、「おかしいと思ったことはおかしいと言える環境を整えること」など、「どの学校でも”これだけは必ず守る”」というような「最低ライン」を設けてもよいのではないか?

ディスカッションの様子

 

ロビイングメンバー:子どもの意見表明権をより広く周知・浸透させていくためにはどうすればよいと思うか?

 

文部科学省:「大人に意見を聴いてほしい」と子ども・若者が感じる・思う状況というのは、大人との距離がある時に生じるものだと思う。18歳から投票できるようになったこともあり、これまで以上に子どもが(決まりや制度を)つくる側・社会に参画する側になる時期が思った以上に早く到来することを、先生方がより深く認識・意識できるようになることが重要・必要であると思う。誰もが子ども時代を経験している以上、自分が子どもだった当時にどのようなことに不満を感じたか、どのような思いをしてきたかは記憶している。子ども時代に感じた不満などを、社会に出た・参画した時にどのように変えるか、変えられる人になるか、と考えることがこれからさらに重要になってくる。

 

皆さんにとっては学校が最も大きな社会になっており、これからより(広く)大きな社会へ出て行き、国内外の社会問題を変えられるようになるための訓練をしているところだと思うので、大人に認められる人になるために、すごく勉強してもらうことが大事ではないかと思う。

 

ロビイングメンバー:(今年から成人年齢が引き下げられたこともあり、)高3になってから急に社会について考える・学ぶようになったように体感している。小中当時は「決められた物事に従わなければならない」と自ずと思い込んでいたが、高校に入ってから「先生や大人に意見を伝えることができる・伝えてよい」ことに気づいた。このように、「社会に参画していく・自分も社会の一員だ」という意識・気持ちの醸成が高校(特に高3)になってから急に行われていて、(自分を含めた)当事者である高校生が少なからず戸惑いを覚えていることからも、こうした意識を小学校・中学校と、より早い段階から醸成していけるような制度・体制があるとよいのではないか。

 

文部科学省:成人・投票年齢が18歳に引き下げられたことで、高校における主権者教育の取組が注目されてきたが、仰られたとおり、高校段階でいきなり始まるものではなく、小中学校(義務教育)の段階からの主権者教育の充実が求められる。この点、文部科学省で、先生方の参考となる資料を作成しているところ。

 

ロビイングメンバー:中学校当時の公民や、新しく始まった公共の授業で、権利や選挙について学習しているが、内容が権利が存在している・保有しているという”事実”や選挙の”仕組み”などの「説明・暗記」に偏重しているように感じる。「権利をどのように行使するのか」「選挙の仕組みなどをどのように活用するのか」など、実生活で役立つような実践的な内容を教える・学ぶような在り方・内容になるとよいのではないか。

ディスカッションの様子

 

文部科学省:公共の学習指導要領では、知識を習得するだけでなく、高校生が課題を自ら見つけ、習得した知識を活用しながら社会問題を自分事として捉えられるような学習をしていくよう求めているが、まだ始まったばかりゆえ、学校ごとの取組に差が生じているかもしれない。国として事例を収集し、全国へ周知・共有していきたい。

引用:新科目公共の学習指導要領
https://www.mext.go.jp/content/1384661_6_1_3.pdf#page=81

1 目 標

人間と社会の在り方についての見方・考え方を働かせ、現代の諸課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 現代の諸課題を捉え考察し、選択・判断するための手掛かりとなる概念や理論について理解するとともに、諸資料から、倫理的主体などとして活動するために必要となる情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

(2) 現実社会の諸課題の解決に向けて、選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理を活用して、事実を基に多面的・多角的に考察し公正に判断する力や、合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養う。

(3) よりよい社会の実現を視野に、現代の諸課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養(かんよう)される、現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚や、公共的な空間に生き国民主権を担う公民として、自国を愛し、その平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し、各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを深める。

 

 

ロビイングメンバー:公民科の先生と主権者教育について話していると、「限られた時間内で、生徒たちにとっていかに効果的な学び・実践の場を実現していくか」という課題・ジレンマや、「ただ議論を活発にすればアクティブ・ラーニングの実現になるのか?」といった用語の定義や考え方・価値観に悩むことが多いと聞く。先程、「学校は小さな社会である」と仰られていたが、現状では、中学生になっていきなり「どの政党がよいか」考えたり、選んだりするのは難しいと思う。そのため、自分の意見をどのように社会へ反映させていくかという点を考えるうえでは、やはり「子ども・若者の意見表明権」を明文化して定めることが必要である。

 

文部科学省:引き続き議論・検討していくようにしたい。皆さんも次期教育振興基本計画のパブリックコメントの募集が始まったら意見を寄せてほしい。

 

ディスカッションの様子

 

文部科学省の皆様、有難うございました!

 

<メンバーの感想>

・「会話が1往復で終わってしまった」という院内集会の反省点を踏まえ、伝えたいことが伝えられたと感じました。国と現場との間に温度差が生じてしまっていることは、解決されるべき問題だと思います。パブリックコメントなどで、社会に対して「子どもの意見表明権」を行使していくとともに、自分自身も、現場での浸透のために情報発信をしていきたいです。

・パブリックコメントの存在など、知らないことがまだまだあり、私たちと行政との間に依然ギャップがあることを感じました。行政には「国民の声を聞く体制を整える」だけではなく、その体制をフル活用できるようにしてほしいし、私たちにもその解決策を考えて伝えていけたら良いなと思います。

・省庁は実際にシステムを動かしているところなので、議員さんと話すのとは違う感じでとても貴重な時間になりました。時間が過ぎても話してくださって、聞きたかった子どもの権利や学習指導要領のこともたくさん質問することができてよかったです。

・確かに、理不尽・非合理校則の撤廃、改善や、主権者教育などの取り組み状況に地方格差や温度差があるように感じているので、途中で仰られていた好事例の収集やそれらの周知、共有の取り組みをさらに拡げていってほしいと思いました。


フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもや若者が「声を上げることで世界を変えられる」と信じることができる社会の実現に向け、活動を続けています。
※8月4日に実施した外務省ロビイング報告記事は、キャンペーン公式HPをご覧ください。(本年は当団体ブログでの記事掲載はございません)