【報告】「SDG4教育キャンペーン2022」SDG4(教育目標)達成に向けた国会議員と子ども・ユースとの意見交換会
アーカイブ動画
配信協力:NPO法人地球対話ラボ
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、すべての人々が教育を受ける権利を受けられるよう、持続可能な開発目標(SDGs)の教育目標の達成を目指す「SDG4教育キャンペーン」に、本年も実行委員として参加しています。
6月6日(月)17:00~18:00に衆議院第二議員会館第3会議室で院内集会「SDG4(教育目標)達成に向けた国会議員と子ども・ユースとの意見交換会」を開催しました。当団体は、今回の院内集会のプログラム構成と、参加した子ども・ユースロビイングメンバー9名の募集・選考・研修を担当しました。本記事ではアーカイブ動画に沿って当日の様子を報告致します。
1:「SDG4教育キャンペーン2022」キャンペーン説明・オンライン投票結果報告(03:03~10:00)
まず、キャンペーン事務局:開発教育協会からキャンペーンの説明と、4~5月に実施したオンライン投票と授業・ワークショップの一環として実施した投票の集計結果の報告を行いました。
※キャンペーンの説明は過去の動画(https://www.youtube.com/watch?v=d8wx9m1sjQg)と同じ内容です。
※今回の院内集会で報告した数値は6月4日時点の集計結果(ウェブ投票分+6月3日までにキャンペーン事務局に報告された授業・ワークショップ実施分)です(6月5~16日に報告された授業・ワークショップで投票された分は含んでいません)。最終的な投票結果は、6/20頃にキャンペーンHPで公開される予定の「ファクトシート」をご覧ください。
2:子ども・ユースと国会議員との対話・意見交換(1回目:13:55~27:27、2回目:27:58~42:06)
研修報告記事に記載したとおり、今回の対談は、テーブル内の子ども・ユースロビイングメンバーが、自分の主張・提言したい内容をフリップボード(画用紙)と1分間のスピーチで国会議員に伝え、それを聴いた国会議員からコメントや質問を返していく形で会話のキャッチボールを展開していく流れを2回実施しました。
※本年のロビイングメンバーに顔やトーク内容の公開をNGとしているメンバーが複数名居るため、アーカイブ動画では限られた範囲のみを写しています。何卒ご了承ください。
<ロビイングメンバーからの提言・メッセージ>(概要)
●質問5 「教育を後回しにできない基金」(ECW)について
詳細解説:https://ftcj.org/archives/29550#content4-5
今、紛争下の子どもが学校に通えない状況が世界各地で発生していることにとても悲しい気持ちを抱いている。学校は勉強以外にも友達との関わり合いなど、社会性を育むうえで不可欠なだけではなく、紛争からの復興など、その国の将来を担っていくためにも、紛争下の国・地域の子どもたちが教育を受けられる状況を確保・維持することが重要である。そのため、こうした「紛争下の子どもの教育支援」に特化したECWに日本政府も資金を拠出してほしい。
●質問6 「教育のためのグローバルパートナーシップ」(GPE)について
詳細解説:https://ftcj.org/archives/29550#content4-6
日本はこれまでにユニセフへの資金拠出やODAなどの海外支援に長らく取り組んできたが、教育支援に充てている資金や人手などの割合が低い。確かに、医療・保健などの人道支援も重要だが、これからの未来を担う子どもへの教育も重要である。そのため、経済的に困難な国の教育支援に特化したGPEへの資金拠出や参画度合いをより増やすことで、もし困難に直面した時でも、滞りなく世界中の子どもたちに教育が行き渡るようにしてほしい。また、日本の教育や教育支援のノウハウをGPE(のローカル教育グループに参加することで)積極的に支援先の国へ提供し、支援先の国が自立して教育を提供し、よりよくしていける環境づくりにも貢献する必要や余地がまだたくさんある。
●質問2 夜間中学校について
詳細解説:https://ftcj.org/archives/29550#content4-2
昨今、海外にルーツのある人や、不登校などで義務教育を形式卒業した人など、夜間中学のニーズが再び高まりつつあるものの、「公立夜間中学校を全都道府県に最低でも1校設置する」取り組みがなかなか進んでおらず、設置状況の地域格差も大きい。SDG4及びSDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」を守り、達成するためにも、この取り組みを加速させて欲しい。
(補足)
現場では文部科学省HP「夜間中学の設置促進・充実について」というページで2022年3月時点で公表されていた「2021年末時点のデータ」を引用し、「12都道府県に36校・北海道には公立夜間中学がまだない」と言及しましたが、このページが今回の院内集会とほぼ同時期にリニューアルされたらしく、「2022年4月に札幌市、相模原市、三豊市、福岡市に4校が新設され、公立夜間中学校は全国15都道府県に40校」に増えたとのことです。
引用:文部科学省「夜間中学設置応援資料 夜中を全国に!」
<国会議員の皆さんからのコメント>(概要)
・青山議員
幼稚園の園長を10年ほど務めていた。皆さんの声を1つでも実現に近づけていくことが私たち国会議員の役割である。
教育機会確保法は、立法者の一人として野党と協力しながら作ったものであり、「全都道府県に公立夜間中学校を最低1校設置する」取り組みはスピード感を持って引き続き取り組んでいきたい。
(補足)
動画内で「前回」と言及されているのは、昨年の本キャンペーンのことです。詳細は当時の報告記事をご覧ください。
・福島議員
ODAの中でも、教育支援の割合をより増やす必要がある。学校を軍事拠点にさせないなどの平和構築も政治の役割である。
「公立夜間中学校を全都道府県に最低1校設置すること」はもちろん、地域格差が生じないように設置していく必要性を改めて感じた。
・高瀬議員
若い人たちの声を直接聴ける機会は、政治家にとって本当に有り難いものだと思っている。今、国会で制定・設置の準備を進めている「子ども基本法・子ども家庭庁」の一番のポイントは、子ども・若者の皆さんから直接声を聴いて、それを政策に反映していくことである。
質問2・5・6の提言内容(上記)は、今後設置される子ども家庭庁でもしっかり議論して前に進めたい。公明党としてもこれまで以上に注力して取り組んでいきたい。特にODAについては、現在深刻な状況になっている円安の影響を受けないような予算の立て方や、教育分野へのODAにより注力することを政府に働きかけていきたい。
・河西(かさい)議員
公明党は子ども・若者の声を聴くことを以前から重視して取り組んできており、「VOICE ACTION」などを通じて、子ども・若者から政策提言や意見を募っている。しかし、こうした場は「元々政治に興味・関心のある子ども・若者」が集まるため、政治に興味・関心のない子ども・若者の声を聴きにくいというデメリットもある。そのため、政治に興味・関心のない子ども・若者が気軽に政府へ意見を伝えられるようなアイデアがあれば是非教えてほしい。
・宮本議員
夜間中学の問題は超党派で足立第四中学校を見に行ったことから始まり、本国会でも議論を進めている。
・三木議員
教育はすべての人にとっての基礎・基本であり、「誰一人取り残さない」世界は教育によって成り立っていくと思う。支援している国が、自ら教育を子どもたちに提供できるようにするための支援が非常に重要であることなど、(ロビイングメンバーの)皆さんが仰られたことに共感する部分がたくさんあった。夜間中学の件は自分も頑張って取り組んでいく。
・吉良議員
子どもに「へいわって どんなこと?」(童心社・浜田桂子著, 2011年)という絵本を読み聞かせている。その本には「平和についてみんなで考え・勉強できることが重要である」という一節があり、平和の基本は教育であることを実感している。「教育が受けられない状況」や、ウクライナで学校が攻撃されている現状は絶対にあってはならないことである。
教育に十分なお金を回すことは日本でも世界でも求められており、国の予算を教育にもっと回して「誰一人取り残さない」を実現できる政治にしていきたい。
もちろん、海外の教育支援だけではなく、給食無償化や学費の半額化など、国内の教育にも必要な予算を回せるようにしていきたい。ちなみに、全国の公立学校の給食費を無償にするために必要な経費を国会で質問したところ、4451億円であるという回答があった。今、政府では軍事費を10兆円以上増やそうとする話が出ているが、少し使い方を見直したり考えたりすれば、教育に予算をもっと回せるはずだ。
(参考:吉良議員のTwitter投稿)
学校給食を無償にするのに必要な経費は「4451億円」
(2018年12月6日時点の答弁↓)今の物価高騰分などを見積もったとしても、あと5000億円ほど教育予算を増やせば給食無償化は実現できます。
軍事費を5〜6兆円も増やすより、学校給食無償のための予算こそ増やすべき。 pic.twitter.com/Fd5WiUM73n
— 吉良よし子 (@kirayoshiko) June 2, 2022
3:国会議員の皆さんからのコメント(42:17~52:40)
上記の対談を通じ、国会議員の皆さんにも「SDG4の達成に向けたご自身の意思/志や約束」を画用紙に記載いただき、全体に向けて発表していただきました。
4:閉会・記念撮影(52:44~58:20)
最後に、本キャンペーンの代表である、ラオスのこどもの森さんが閉会の挨拶を行い、集合写真を撮影して終了しました。
参考:参加議員のSNSでのコメント
キャンペーン公式HPの報告記事をご覧ください。
https://www.jnne.org/sdg2022/post1294/
メンバーの感想(抜粋)
(6/11に実施した、メンバー振り返り会で出たコメントも含んでいます)
・自分と異なる立場の人と意見を交換する機会が少なかったので、すごく勉強になりました。また、普段私たちが考えていることは、あまり議員さんに伝わっていないことに気がつきました。ユースの生の声を届ける機会が、今後も増えていってほしいと感じました。議員の皆さんは、私たちの提言を真剣に受けとめてくださり、決意を話してくださいました。これからも社会の一員として、様々な問題について考えていきたいです。
・議員さんの中にも積極的に子どもや若者の意見を聞こうとされていて、常日頃から聴く機会を設けるている方がいらっしゃることを知ることができました。他のメンバーの意見を聞く中で、既に意識の差と言いますか、世代間ギャップのようなものも感じました。刻一刻と子どもの抱える問題課題は変化しているので当事者の声を聞く必要性も私自身感じました。ただ意見交換をするだけではなく、それを形にしていただきたいです。また、今回限りではなく、今後も対話を積み重ねることで一時的なものではなく、実現まで持っていきたいと思いました。
・オンライン参加で緊張していたのですが、国会議員の皆さんが真剣に私の意見に耳を傾けて接していただき、安心して発表することができました。議員さんのお一人が私の問題視した夜間中学についてまとめで発表してくださったときは嬉しくて涙が出そうでした。国会議員の方々に私の思いを伝えることが出来て次も頑張ろうと決心できました。
・議員さんへ直接提言することは初めてですごく緊張しましたが、自分の伝えたいことを真正面から言えてよかったです。一回目は時間が足りず、すべてを伝えられませんでしたが、二回目でそれを改善し大事なことをしっかり伝えられました。いろいろな人のいろいろな意見に触れることができ、すごく勉強になりました。本当はすべての議員さんに話を聞いてもらい、深い議論をしたかったです。これから広い年代の人が政治を身近に感じ、日本での生活を自分たちがどんどん良くしていくためにも、まずは私が、私たちが政治に関心を持ち、行動し、意識を高めたり広めたりしていきたいです。
・1分間という短い時間では収まりきらないくらいの思いや、訴えがある中、懸命に伝えたメッセージを参加してくださった議員の皆さんがさらに国会で声を大きくし、解決・実現に向けて動いてくださることを楽しみにしています。日本国内外を問わず、教育への課題は山積みですが、その分改善の余地があるということだと肯定的に捉え、スピード感のある対応を求めていきたいです。
・多くの議員の方々がしっかりと耳を傾けてくださいましたが、議員さんからのコメントではECWやGPEに関する提言をしたのにも関わらず、こども家庭庁の話にそれてしまい、子どもの権利条約に関する提言ではないのにと思いました。また、提言に国外の教育の状況、ECWの大切さ、私が思っていることしか含まなかったため、議員さんからのコメントが明確なものではなく、提言に対するコメントになってしまうことが多くありました。そのため、これからのロビイングの際には、「党内で話し合ったことはありますか?」「達成に向けて党内でこういうことをするなどはありますか?」「公約に掲げていただけませんか?」などの「はい」「いいえ」がある明確な質問(クローズド・クエスチョン)を含めるなどの手段も用いていこうと思います。
・子どもが声を出すことで何かを変えられると思える社会にしたい、そういう経験が私たちには必要で、そのためには子どもの意見表明権が保障される必要があるし、そしてそれらのプロセスや法律がしっかりと明確にされる必要がある、と思っている国会議員の方もいるのだなと思うと嬉しかったです。
議論を通して、こんな取り組みしてたんだ、と初めて知ることも多くありましたが、それがちゃんと伝わっていないんだということも実感しました。国会議員が「やっていること」と私たちが「知っていること」に大きなギャップがあるということを実感できたのは、今後のアクションにつながる良い経験だったと思います。
・初めての経験で、一分間スピーチではこれを言えば良かったのではないか、という反省や後悔も少なからずあるものの社会の一員として声をあげ直接議員の方々に働きかけることができて良かったです。私にとっては効果的なスピーチについて学んだり、自分の意見だけでなく投票に参加してくださった他の人の意見を代弁する、という面で新たな学びが多くありました。最後に議員の方々が画用紙に書いたことが本当に実現されるのか、また実現に向かっていい方向に進んでいくのか、どれほどの影響を私たちがつくりだせたのだろうかといったことを、本番の後も考えていました。今回の経験を生かして今後どのような社会作りに貢献したいのかについて自分なりにもう少し考えを深めて、行動を取ることを続けていきたいです。社会はそう簡単には変わらないと思っているので、単発で終わりではなく、これからも長く問題解決に携わっていきたいと感じました。
・オンライン参加で、通信環境の影響で聞こえなかった部分もありましたが、政治家のみなさんが教育について真剣に考えてくださっていたことを知り、嬉しかったです。こうした、政治家の方々の思いを知る機会を増やしてほしいと思いました。
・緊張することもなく、自分の思いを伝えられたと思います。にこやかに、且つ力強い眼差しでお話を聞いてくださった議員の方々が印象的です。今回のような集会であれ、SNSであれ、友人や周囲の人間たちと、こまめにディスカッションしたりすることが、小さなムーブが大きな変化に繋がるんだと痛感しました。多種多様な意見、多種多様な発信の仕方が認められる現代をフル活用し、今後について考えていきたいと思います。
キャンペーンとしては3年ぶり(現在の名称に改名してからは初)の院内集会でしたが、大きなトラブルもなく、予定とおり進めることができました。終始ハラハラしながらの運営でしたが、子ども・ユースロビイングメンバーの言葉の力に私たちおとなもエンパワーされ(力づけられ)、当団体の「子どもや若者は助けられるだけの存在ではなく、自身が変化を起こす担い手である」という基本理念を体現・体感できる院内集会になったと実感しております。
今回の院内集会は、本キャンペーンで例年6~7月に行っている政党訪問と参議院選挙の時期が重複したため、イレギュラーに実施したものでした。今後の「SDG4教育キャンペーン2022」は例年とおりの流れに戻り、7月に文部科学省・外務省を訪問する予定です。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもや若者が「声を上げることで世界を変えられる」と信じることができる社会の実現に向け、キャンペーン実行委員として活動を続けてまいります。
<実施要項>
イベント名
「SDG4教育キャンペーン2022」 SDG4(教育目標)達成に向けた国会議員と子ども・ユースとの意見交換会
日時
2022年6月6日(月)17時~18時
会場
衆議院第二議員会館第3会議室
参加議員
- 自民党 山本ともひろ衆議院議員(幹事)
- 自民党 青山周平衆議院議員
- 公明党 高瀬ひろみ参議院議員(呼びかけ人)
- 公明党 河西宏一衆議院議員
- 日本維新の会 三木圭恵衆議院議員(呼びかけ人)
- 日本維新の会 梅村みずほ参議院議員
- 国民民主党 伊藤孝恵参議院議員(呼びかけ人)
- 日本共産党 吉良よし子参議院議員(呼びかけ人)
- 日本共産党 宮本岳志衆議院議員
- れいわ新選組 舩後靖彦参議院議員(呼びかけ人)
- 社会民主党 福島みずほ参議院議員(呼びかけ人)
※立憲民主党の参加議員がご不在だったのは、「党の重要スケジュールと重複してしまったため」とのことでした。
後援
ガールスカウト推進議員連盟、子どもの貧困対策推進議員連盟、超党派ママパパ議員連盟
主催
教育協力NGOネットワーク(JNNE)
キャンペーン実施団体:開発教育協会、ガールスカウト日本連盟、シャンティ国際ボランティア会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、チャイルド・ファンド・ジャパン、プラン・インターナショナル・ジャパン、フリー・ザ・チルドレン・ジャパン、ラオスのこども、ワールド・ビジョン・ジャパン