インドレポート:マクタニール子どもの家の卒業生のストーリー②
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)は、2001年からインド西ベンガル州で、
現地パートナー団体CCDを通じて国際協力事業を行っています。
▶元学生メンバーが子どものための養護施設「マクタニール」を訪問
現地パートナー団体CCDは路上や児童労働から少年を救出、運営する養護施設「マクタニール」で保護し、
教育や医療を提供したり貧困地域の子育て世帯へヤギの提供を行い生計維持支援等を実施しています。
学生時代にCCDを支援する学生組織AshAを立ち上げ活動していた
FTCJの協力者の3人の皆さんが2024年1月に、インドのパートナー団体CCDを訪問し、
インドの現状と課題を探ってきてくれました。その際、CCDによってかつて貧困から救出され、
支援を受けて自立した児童労働に従事していた元少年たちに約15年ぶりに会い、
現在の状況を聞くことができましたので、彼らが養護施設マクタニールで過ごすように
なった経緯や背景も含め2回に分けてご紹介します。
(本記事は第二弾の記事です。第一弾はこちらhttps://ftcj.org/archives/39035)
▶養護施設「マクタニール」で育った元児童労働者のサイフルさんがパパに!
サイフルさん(写真右) 6歳から17歳までマクタニールで過ごしました。息子さんと共に |
サイフルさんは3歳のときに父親を結核で亡くし、母親は精神障害に悩むようになりました。2人の姉と1人の兄がいて家族の中では一番の年下です。姉の1人は誘拐されてしまい、今でも居場所は分からないままだといいます。
このような状況だったため、サイフルさんの家族はいつも貧困にあえいでいました。サイフルさん自身、働き手として幼い時から畑で多くを過ごし、固い土の塊をレンガで砕く仕事などをしていました。しかし、夜明けから日暮れまで働いても、1日に手にするお金は日本円に換算するとたったの10円ほどでした。こういった仕事は季節が影響する仕事(季節労働)労働だったので、1年に30日ほどしか働けませんでした。
そこでサイフルさんは別の仕事を探し、ヤギ飼いの仕事をはじめました。19頭のヤギの面倒を日の出から日没まで見るようになりました。ヤギが1頭でもいなくなったら、雇用主からひどい体罰を受け食事も与えられず給料ももらえない。そんな状況で常に目を見張って緊張して働いていました。サイフルさんは幼稚園や小学校に通ったことがなく文字の読み書きもできませんでした。
そんな、サイフルさんの大変な生活環境を知ったCCDのスタッフは、サイフルさんが安心して健康的に過ごせるよう救出しました。過酷な環境から保護されたサイフルさんは養護施設「マクタニール」で暮らすようになります。6歳の時でした。
えさを与えなければいけないヤギもいなければ、えさ用の草を集める必要もない。サイフルさんは、マクタニールで過ごすことで子ども時代を楽しみ、学校に通うことができるようになり、施設や学校の子どもたちと日々を楽しんで過ごしていました。
CCDはサイフルさんと離れて暮らすお母さんとお兄さんが自立して生活できるよう2頭のヤギを提供し、家族は収入が増え生活は少し安定するようになりました。
マクタニールでは兄弟のような仲間とお父さんのようなCCD代表のスワパンさんと過ごしました。CCDの支援で、義務教育だけでなく、高等教育を受けることができました。
現在は成人し、食品加工会社に勤め自立した生活を送っています。結婚し妻と息子3人で幸せに暮らしているそうです。しかし今でもマクタニールが恋しくなることがあり、時々施設を訪問しているそうです。
CCDはお寺のような存在。代表のスワパンさんは僕にとって父のような存在です。自分たちを良い方向に導いてくれました。悪い教えはなかった。今、悪いことをすれば罪悪感じるのはきちんと育ててもらったからだと思います。
と話してくれました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※CCDが運営する「マクタニール子どもの家」は、児童労働や路上など過酷な環境にいる子どもを救出し、子どもが権利を守られ、安心して生活できる環境を提供する養護施設として2020年まで事業を行っていました。現在は運営を終了し、貧困農村地域の子育て家庭への自立支援を行っています。
■インドの貧困と子どもたちの動画を公開しています。
ご興味ある方はぜひこちらもご覧ください。