【報告】ケニアの教育支援レポートが現地から届きました!(2)
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、パートナーNGO「WE Charity Foundation」(略称:WCF、リンク先英語)を通じてケニアのナロック群マサイマラ地区に暮らす先住民族の子どもたちが、質の良い教育を受けられるよう、キサルニグループ中等学校(4年制高校)の「ミリマニ女子キャンパス」及び「ングロット男子キャンパス」で学ぶための奨学金支援や、学校の運営を支援しています。(事業詳細はこちら)
2022年10月に、奨学金を得て学校に通う生徒さんたちの様子や、中等学校で学び、大学へ進学した学生の学びの様子(レポート第3弾として近日投稿予定)などのレポートが現地から届きました!
11月11日に「ミリマニ女子キャンパス」からの報告を投稿しましたが、今回は続きとして、「ングロット男子キャンパス」からの報告を翻訳して報告します。
(前記事)
(参考:英文ですが、キサルニグループ中等学校の詳細は、WE Charity Foundation公式HPをご覧ください。)
https://www.wecharity.org/kisaruni-group-of-schools
2022年、WCFが運営する男子中等学校(ングロット男子キャンパス)では、30人の新入生を迎えることができました。入学した生徒たちは、みな優れたリーダーシップを発揮し、学校全体に活気をもたらしています。新入生たちは早速学校生活にうまく溶け込み、他の学年の生徒たちも保護者とともに新入生を歓迎しており、学校全体が徐々にコロナ禍の混乱から抜け出しつつあります。
そして、27人が卒業し全員が大学に進学することができました。私たちはこのことを誇りに思っています。生徒たちは、学問だけではなく若きリーダーとしての能力を育んでいます。学生リーダーシップクラブ、サービスラーニングプロジェクト(後述)、継続的なカリキュラム変革、ファシリテータによる導きなど、これら全てが組み合わさり、生徒たちひとりひとりの発達・成長を後押ししています。
▼サービスラーニングプロジェクト
本校のサービスラーニングプロジェクトは、世界的な気候変動の抑制と、生徒それぞれが属するコミュニティの降雨量に対するニーズへの対応(水害対策)を目的とした植林活動と連動しています。今期の生徒たちは、苗木とチューブに転用した廃棄物を利用することで、廃棄物のリサイクルを通じて持続可能な環境を創出することや、在学中に一人50本以上の植樹を行うことを提案しました。
▼リーダーシッププログラム
本校のブートキャンプの目標は下記のとおりです。
-効果的なリーダーシップや成功体験に必要なスキル、態度、知識を育むための、学習者を中心とした支援的基盤を提供すること。
-学習者に、個々の成長のためのツールとして、内省、視覚化、自分に対する肯定的な宣言(アファメーション)を学ぶよう推奨すること。
-対等な関係でやり取りすることで、学習者たちを体験的な学習プロセスへ参加できるようにすること。
-対話を通じ、個々の人格の基本的構成要素としての「感情面の気づき」を探求すること。
-仲間同士で協力・支援し合う関係づくりに向けた、需要の環境を創出すること。
(補足:内省(self-reflection)、視覚化(visualization)、自分に対する肯定的な宣言(affirmation)については、当団体が今年4月から始めた「ウェルビーイング事業」の方で後に解説していく予定です。)
なお、このリーダーシップブートキャンプは、当団体がパートナーNGO「WE Charity Foundation」を通じて運営などを支援している高等教育機関(日本の大学に相当)「WEカレッジ」の協力によって企画されました。
(補足:WEカレッジの詳細は過去の翻訳記事またはWE Charity Foundation公式HP(英語)をご覧ください。)
▼部活動・課外活動など
生徒たちは楽しみながら課外活動に参加しています。7月22・23日にはサッカー、バレーボール、バドミントン、卓球、ハンドボール部の地区大会が行われ、バドミントン、卓球部が次の(郡)大会に勝ち進みました。
音楽系の地区大会も近日開催される予定で、校内の誰もが本校のチームや部が全国レベルで競えると信じています。
▼生徒の声
ギデオン・コーチさん(10学年、日本の高1相当、キプソンゴルコミュニティ出身)
彼は孤児で、2人の妹がいます。2013年に母親が亡くなる前、彼は歩く・働くことができない母の介護と2人の妹の世話をするため、3学年(日本の小3相当)で学校を中退しました。
そのため、彼はおじの支援を受けて3学年をやり直さなければならなかったうえ、7学年(日本の中1相当)の時には出生証明が無かったため留年を強いられました。
そのため、(当時の)彼の担任は、彼がKCPE(Kenya Certificate of Primary Education:ケニア初等教育修了試験、日本の「中卒程度認定試験」に相当する一斉テスト)を受験できるよう、彼の出生証明の取得を支援しました。
2018年、彼が初めて受験したKCPEの結果は262点(5科目・各100点満点)でした。彼は本校に入学するため、1年浪人してKCPEを再受験して346点を取り、自ら本校の門を叩きに来ました。その際、彼の初等教育当時の担任だった先生方は、彼が本校に入学・通学するにあたって必要なものを提供したり、支援したりしました。
彼は医者になるという夢を叶えるチャンスを与えてくれた本校や、かつての恩師たちに心から感謝しており、将来は家族やコミュニティに恩返しをしたいと語ってくれました。
(補足1)
ケニアの学制は初等教育8年(日本の小1~中2相当)→中等教育4年(日本の中3~高3相当)→高等教育(日本の大学相当)4年と定められています。(引用:外務省HP)
(補足2)
KCPEは国語(スワヒリ語、障害者の場合は手話でも受験可)・算数・理科・社会・英語の5科目、各100点満点で、この成績を受験・入学のボーダーラインとしている中等学校(日本の中2~高3相当)も多く存在しています。同様に、中等学校でもKCSE(Kenya Certificate of Secondary Education:ケニア中等教育修了試験、日本の「共通入試(旧センター入試)」に相当する一斉テスト)が12学年(日本の高3相当)で実施されており、KCSEの成績を受験ボーダーラインとしている大学も多く存在しています。
ケニアの先住民族の子どもたちがキサルニグループ中等学校で、質の良い教育を受けられるように奨学金や学校運営のためにご協力くださった皆さま、改めて心から感謝申し上げます。
第3弾は、本記事の途中で出てきた「WEカレッジ」の卒業式の様子を翻訳して報告致します。(近日公開予定)
当団体では、この「キサルニグループ中等学校の奨学金」に充てるための寄付を引き続き受け付けています。ご協力よろしくお願いいたします。詳細は下記をご覧ください。
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