【子どもメンバーからのイベント感想】日本子どもフォーラム(2021年11月20日)
2021年11月20日(世界子どもの日)に、日本財団と日本ユニセフ協会の共催で「日本子どもフォーラム~子どもの権利を基盤とした子ども施策の実現に向けて~」がオンラインで開催され、当団体代表理事の中島のほか、子どもメンバー・アンバサダーの3人(ゆりなさん、坂口くり果さん、さかもとひとみさん)が子ども発言者としてイベントに登壇し、子どもの権利が守られる社会に向けて意見を発表するなどしました。
イベントでは、子どもの権利向上に取り組む弁護士や海外のコミッショナーも登壇され、子ども庁の設置にあわせて子どもコミッショナー/オンブズパーソン(※)を設置することについて講演やディスカッションが行われました。
※子どもコミッショナー/オンブズパーソンとは、子どもの権利が守られているかを行政から独立した立場でモニターし、調査や勧告する権限を持つ機関のことです。国際的に子どもコミッショナー、子どもオンブズマン・オンブズパーソン、子どもの人権機関などと呼ばれています。
イベントのアーカイブ動画がYouTubeで公開されています。是非ご覧ください。
上記の子ども発言者とともに、日頃から子ども基本法の制定などに向けて政策提言活動を行っている、FTCJ子どもメンバー・高校2年生の栗原璃音さんが、イベントを自宅から視聴し、感想を寄稿してくださったので紹介します。
▼日本子どもフォーラム プログラム
開会あいさつ:尾形武寿(日本財団理事長)
応援メッセージ:塩崎恭久(元厚生労働大臣)
来賓あいさつ:野田聖子(子ども政策担当大臣)
ビデオメッセージ:ヘンリエッタ・フォア(ユニセフ事務局長)
基調講演1:大谷美紀子(国連子どもの権利委員会委員長・弁護士)
子どもたちはどう考えている?:フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの子どもメンバー3人
基調講演2:ブルース・アダムソン(スコットランド子ども若者コミッショナー)、セオニ・コフォニコラコウ(ギリシャ子どもの権利オンブズマン)
パネルディスカッション:
モデレーター 奥山眞紀子(日本子ども虐待防止学会理事長)/山田太郎(自由民主党参議院議員)/古屋範子(公明党衆議院議員)/岡本あき子(立憲民主党衆議院議員)/大谷美紀子/ブルース・アダムソン
閉会挨拶:高須幸雄(日本ユニセフ協会副会長)
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渋谷教育学園渋谷高等学校2年の栗原璃音(17歳)と申します。日本子どもフォーラムにオンラインで参加し、感想を箇条書きでまとめました。イベント途中で回線・Zoomの不調で抜けてしまった時間帯があったため、誤解や聞き落としがある可能性がありますが、どうぞご了承ください。
- 国連子どもの権利委員会委員長の大谷さんがおっしゃっていた「世界子ども権利の日」のアイデア(動画の25:27時点)がとても面白いと思った。ネーミングの理由を聞いて、納得し、賛成したくなった。この案が反対されてしまったことを大変残念に思う。
- 私の印象では、日本では「子どもの権利」がタブーである上、そもそも欧米に比べて「人権」という意識自体がとても低いように感じる。私は小学生時代をイギリスで過ごし、欧米では幼い頃から、ジョークとしてでも子どもの間で「人権」という概念があったように思う。問題児の男の子が怒られた時に「いや、だって僕には自分のことを自分で自由に決める権利があるから」と、罰としておやつを禁止された子が「いや、子どもに食べ物を与えるのは親の責任だ!」などという主張を自然と口にする子どもの姿などがみられるのに対して、日本では「人権」という考えが浸透していないように感じる。イベントスピーカーのひとりブルースさん(スコットランドの子ども若者コミッショナー)が紹介した スコットランド の子どもたちの短詩もまさに、この「人権」という概念が海外で幼児から広まっている証拠であるように私は思う。このような日本社会に「権利」という言葉を広める大チャンスだったのが世界子どもの日のネーミングだったと思う。
- 提言活動仲間の「子ども発言者」3人がやっぱりかっこよかった。特にゲストの議員さんやスコットランドのコミッショナーさんが、「子ども発言者」のスピーチを繰り返し言及されていたのが印象的であった。私たち子どもの声がしっかりと大事な大人の耳に響いていることを実感した。
- EU、そして特に スコットランドの成功例を見て、前まではまだ少し漠然としていた子どもコミッショナーの役目、またコミッショナー制度導入後の社会がより的確にイメージできるようになった。改めて日本でのコミッショナー制度導入の必要性を感じた。
スコットランドコミッショナーのブルースさんの言葉(動画の54:27~1:13:14):
- 私が小学生にコミッショナーの役目を説明すると、「コミッショナーは子どもを代表する政治家なのだ」。日本中の子どもたちが直面する様々な困難を認識し、解決に向けて優先的に動くのだ。
- 日本では色々と憲法などの下、権限の分担などが複雑なのだろうが、正しく行えば、子どもコミッショナーは口や形だけでなく、しっかり結果を残せる役割なのだ。
- 名だけなどではなく、コミッショナーは本当に全国の子どもが頼りにできる相談相手になれるのだ。政府と子どもを結ぶ大切な存在となるのだ。
- ギリシャの子どもの権利オンブズマンのセオニさんがおっしゃっていたこと(動画の1:13:15~1:35:47)で特に印象的だったのが:
- 子ども権利を守ること=国の将来のための「投資」
(これはとても同感だ。私自身既に院内集会や内閣官房子ども政策チームの方との意見交換でこのような考えを繰り返し表明してきた)
- 子どもコミッショナーの名前や顔を公開することで、全国の子どもが特定できるようにする必要がある。
- 初めて日本政府の詳しい苦戦どころなどを知ることができた。例えば子どもコミッショナー設置に関してであれば、調査権に関する法律について。他日本特有の市区町村の仕組みの調整など。また、政府&国民間のコミュニケーションの大切さを改めて感じた。「提案したけど、失敗した。そしてなぜ失敗してしまったのか。」などのことを可能な限り公開して行く仕組みが必要だと思う。もちろん毎回TVや新聞で活動報告などを行うことは不可能に近いだろうが、せめて公式HPなどでこのような進展を簡単にフォローできるようにしてほしい。興味を持っている人が簡単に検索しやすいように。
- 海外には子ども議会がある。存在を前から知っていたが、似たようなものを日本でも作りたいなと、以前思っていたことを思いだした。
- 最後に全体としては、野田聖子議員を初めとする大変多くの議員さんが子ども権利の活動にとても積極的な姿勢を示されていることに改めて感動し、勇気づけられた。まだまだ多くの障害が私たちを待っていますが、子ども庁、そして子どもコミッショナー制度設立に向けて、自分も1人のhuman rights defender (人権擁護者) として活動を頑張り続けたいと思った。
【その他、子どもの権利が守られる社会の実現への私の想い】
政策提言活動で伝えてきたこと
- 小学生時代をイギリスで過ごした。世界を自分の目で見て、自分の体で体験した経験から、日本は技術、礼儀よさ、アニメーションなど色々な分野で世界の注目と憧れを集めるが、人権問題、貧困、差別やいじめでは正反対であることを知った。幸福度ランキングでも、OECDに所属する36カ国中日本は34位。日本人である以上、このような分野でも日本が世界の見本になってほしいと強く思う。
- いじめや虐待に対して長期的な解決策を求める。被害者を救出するだけでなく、加害者自身が抱える問題が解決されて、行動や考えを変えない限り、何も変わらないから。生まれながらにして悪人はいないと私は思っている。つまり、膨大な悩みやストレスを加害者は抱え込んでしまっているから、暴力的な行動に出てしまう傾向があるのではないか。だからこそ、加害者を犯罪者扱いをするのではなく、加害者へのケアにつながる社会保障制度を見直すこと、全国規模でのメンタルヘルス支援ネットワークの構築などを行い、彼ら(加害者)に寄り添う仕組みをつくる。そもそも一番立場的にも精神的にも「弱い」人をサポートすることが社会、そして社会を代表する議会の仕事であるのではないか。
子どもの権利を守るために政府にお願いしたいこと
- まず、作成に携わせて頂いた「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン提言」最終案にある全ての提案の実現
参考:提案の概要
<新しい仕組みづくり>
1.子どもの権利をどんな場面でも大切にすることを約束する「子ども基本法」をつくる <大切だと思うこと> |
- 特に「子どもの声をきき、子どもと共に行動する」こと
- 「政治において年齢は関係ない!」。一人一人生きている人生は違うものであり、経験する幸せや辛さも違うことを、提言活動の仲間が気づかせてくれた。だから、意見を取り入れていく際には、大学生以上、中高生以上などと年齢に制限をかけることは絶対行って欲しくない。
- できるだけ多くの人の意見を集めるためには、発言の方法をたくさん設けること、そしてそのたくさんの方法の存在を全国の子ども&大人に知らせること
- 電話相談所や相談窓口、意見回収用のwebsite作成はもちろんのこと、SNSの利用をより普及するべきだと思う。
- なぜなら、SNSは匿名性があり、「@子ども」や「@文部科学省」をするだけで気軽な意見投稿を可能にするから。
- また、他に是非併用していただきたい工夫点が3つある
- 1)子ども庁を始めとする政府や自治体の顔を子ども、若者、女性やLGBTQの方など多様にするべき。今は一定の年齢層と性別、つまり決まった視野や人生経験をもった人の集まり=政府というイメージを私たち若者は持ってしまっている。そのため、「言ってもどうせ理解をしてくれないから。。」と思って、声をあげる勇気を無くしてしまう子どもや女性が多いことが多いため。
- 2)現在は意見を回収しっぱなしの印象が残念ながらも存在する。他国の首相のように、SNSを利用してライブのQAを行い、提案や意見にその場で回答できるようにしたり、集めた提案を実際実現した活動報告などもSNSを利用して行うべきだと思う。
- 3)政治報道の方法を工夫するべき。会議を中継するだけなどではなく、子ども向けに要約をしたり、イラストをつけたりするべき。
(関連情報)
公明党HP「「子ども基本法」の制定に全力挙げる」(2021年11月21日)