【今日は何の日?】5月3日:世界報道自由デー / World Press Freedom Day

5月3日:世界報道自由デー
World Press Freedom Day

1991年のこの⽇に、ユネスコ・国連が「アフリカの独立した多元的な報道の促進に関するウイントフック宣言」を採択したことにちなみ、1993年に国連で定められました。
世界中の報道の自由を守ることと、仕事中に命を落としたジャーナリストの業績を称えることを目的としています。

 

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<もう少し解説>

・制定経緯(詳細版)

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1970年頃から、「開発途上国は先進国からの情報ばかり入ってくるので、開発途上国の人たちが自ずと欧米化されてしまうのではないか」「先進国で、開発途上国の社会問題に関する話題ばかりが報道されがちなので、先進国の人たちが開発途上国に対してよくない固定観念を持ってしまうのではないか」といった問題提起があったことや、放送に使う電波の周波数帯(厳密ではありませんがラジオやテレビの「チャンネル」のようなもの)の大半を先進国が独占してしまっていることなど、情報の発信や流通のあり方、情報インフラ面の様々な格差を巡り、先進国と開発途上国の間で数多くの問題が提起され、ユネスコや国連などの国際社会の場で議論が続いていました。
※こうした問題は「南北問題」「世界情報通信秩序/新世界コミュニケーション秩序」などで検索すると、専門的な解説や情報がヒットします。
参考例:総務相HP「昭和58(1983)年版 通信白書 第2章第1節 情報通信をめぐる国際的動向」

 

また、戦闘地域や独裁政権国、テロ・クーデター組織などの問題を報じようとする報道関係者が圧力や暴力を受けたり、口封じや身代金目的で誘拐・殺害されたりしていることなども、当時から深刻な国際問題になっていました。

 

こうした社会背景の中、1991年4月29日~5月3日に、ウィントフック(ナミビア共和国の首都)で「アフリカの独立した多元的な報道の促進に関するセミナー」(Promoting and Independent and Pluralistic African Press)を国連広報局とユネスコが共同開催し、最終日の5月3日に「アフリカの独立した多元的な報道の促進に関するウィントフック宣言」が採択されました。[1](地名や名称の日本語表記には若干の表記揺れがあります)

 

この宣言には、「国家の民主主義の発展・維持および経済発展にとって、独立し、多元的で自由な報道の確立、維持、育成が不可欠である」と述べられています。そして、報道が独立しているというのは、「政府、政治または経済の統制を受けず、新聞、雑誌、定期刊行物の作成と流通にとって重要な素材やインフラの統制を受けない」ことであると定義され、報道が多元的であるというのは、いかなる種類の独占もなく、「その社会におけるできるだけ幅広い意見を反映するできるだけ多くの新聞、雑誌、定期刊行物」が存在することであると定義されています。[1]

 

これがきっかけで、宣言から2年後(1993年)の第48回国連総会で「5月3日を世界報道自由デーとする」ことが決まりました。[2][3][4]

・報道を巡る問題と対処方法(一例)

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「報道の自由」が保障されているからといって、取材や報道のために何をやっても良いわけではありません。不正確・間違った情報まで報道・発信・拡散してしまうと大きな問題が起きてしまいます。

 

確かに、情報を隠ぺい・改ざん・ねつ造したり、自分達に不都合な情報を発信しようとする報道関係者に圧力をかけたりしている行政や国家勢力、企業などが未だ数多く存在していることなどの「情報源に問題があること」も長らく大きな課題になっていますが、ICTの発達で誰でも簡単に情報を発信・拡散できるようになったためか、近年では「偏向報道」「メディアによる迷惑行為」「フェイクニュース・ディープフェイク[5]・デマ」といった、「発信者に問題があるケース」も増えてきています。

 

●偏向報道

本来中立の立場であるはずのメディアが、特定の相手に関する報道をする際に、相手にとって不利・不都合になる情報を誇張(・酷い場合はねつ造(詳細後述))したり、自分が不利になる情報や情報操作がばれてしまうような真相・本来必要な情報を切り取ってあえて報道しなかったりすることで、その報道を見聞きした人に誤解や差別・不安や危機感など、偏った感情や考えを与えたり煽ったりする報道のことです。

 

例えば、特定人物・団体・行政機関などの不祥事ばかりを頻繁かつ長い間取り上げ、出演者が私情を交えながら批判・非難を繰り返したり、特定の物事に対して批判・反対意見を述べている人や専門家のインタビュー動画しか流していなかったり、特定コミュニティの文化や特徴を「変わっている・普通じゃない」などという意図の「笑いのネタ」として面白おかしく伝えたりするなど、日常のテレビ・ネットには偏向報道と思しき記事や番組が少なくありません。

 

本来あるべきではないのかもしれませんが、「何かおかしくないか?特定の考え方に偏っていないか?」など、「情報を疑う視点を持つこと」も、生きていく上で日々重要度を増しています。

 

 

●人権侵害、マナー・報道倫理違反

例えば、1997年にイギリスのダイアナ妃が事故死した事件をきっかけに、取材対象をしつこく追跡してプライバシーを侵害する「パパラッチ」の存在や「メディアによる迷惑行為」に関する議論が起こりました。

 

現在の日本でも、ネットメディアや個人のブログ、掲示板まとめサイトなどで炎上案件の当事者の顔写真や氏名、住所や鍵付きアカウントのSNS投稿などの個人情報が晒され(公開され)たり、凶悪犯罪が起きると容疑者の出身校の関係者や親族、卒業アルバムの内容などの生い立ちが根掘り葉掘り報道されたり、悲惨な事故現場で手を合わせる人にフラッシュを浴びせ、しつこく現在の気持ちをインタビューしたり、脚立などの備品で道をふさいだりするなど、人権侵害・マナー・倫理などに抵触・反する取材・報道がなされています。記者が取材する相手に暴力を振るう事件も発生しています。

 

また、事件や事故現場に居合わせた一般の人・やじ馬が、負傷者の保護・介助などをせずに当事者の写真や動画を撮影してSNSにアップするなどの行為も、プライバシー保護や倫理などの様々な観点から問題視されています。

 

先述した通り、今の時代は私たち自身も簡単に「メディア」になれるため、「発信する情報が適切なのか否か、情報を発信すること自体が今適切なのか否か」といった「発信の判断」は、難しい判断であることも確かですが、テレビ局や新聞記者などの報道関係者だけではなく、私たち自身にも求められています。

 

●デマ・フェイクニュース

最初の緊急事態宣言の頃、多くのデマが多く飛び交い、日本国内では日用品の買い占め・高額転売や特定対象への誹謗中傷など、様々な混乱が生じました。1年経って3度目の緊急事態宣言が出された現在でも、コロナ禍に関する不正確な情報・間違った情報や、特定対象を貶(おとし)める(評判を下げる・悪く言う)ために偽造された「フェイクニュース」も日々世界中で発信されています。

 

他にも、ICT発達の功罪として、画像・動画や音声を加工・差し替え・偽造した「ディープフェイク」という事例も顕在化してきています。「コラ画像」と呼ばれる単純なものから、特撮・SF映画などの編集技術やAI(人工知能)などを悪用し、動画の登場人物の顔を別の人物の顔に合成したり、写真や動画内の人やものを消したり追加したりすることで、被害者が「これは偽物だ」と立証するのを難しくし、見た人に本物ではないかと信じ込ませて拡散され易くしたりするなどの巧妙で悪質なケースまで存在しており、いたちごっこが続いています。

 

SNSが発達し、情報の拡散が容易になったことで、情報はその真偽や内容を問われる間もなく世界中へ拡散されています。また、SNSは、自分がフォローしている対象=自分の好きな物事・人物、身内に関する情報が主に表示されるようになっているため、先述した「情報を疑う」警戒意識が薄れがちになることも、間違った情報が拡散され易い要因の一つです。

 

デマやフェイクニュースの類は、発信源に最大の非がありますが、虚偽と認識していたか否かに関わらず、拡散した時点で、拡散した人もデマやフェイクニュースに加担したことになってしまいます。
・もし、特定の団体や企業に関するデマを拡散したことで、そこが潰れてしまったら…?
・もし、特定個人に関するデマを拡散したことでその人や周りの人たちが傷つき、病気になったり自殺したりしてしまったら…?
・もし、新型コロナに関するデマを拡散したことで、デマの内容を実行した人が死亡してしまったら…?
全て国内外で実際に起きた事例です。状況や案件によっては、デマを発信した人だけではなく、拡散した人も罪や責任を問われる可能性もありうるのです。

 

・私たちが情報と関わる上で大事なこと:メディアリテラシー(一例)

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先述したように、現在では報道関係者だけではなく、SNSや動画配信サイト・アプリなどを通じて、私たちも簡単に「メディア」として報道・発信することができます。
ここ数年で、SNS発祥のデモや運動、キャンペーンなどがネット上・現実双方で影響力を持つことが増えてきました。

 

こうした便利さの反面として、たった1回の安易なクリック・タップによる情報発信・共有によって、自分が知らぬ間に「加害者」になるリスクがあることも、SNSなどのネットメディアを利用・活用する上で認識しておくことが大切です。

 

「自ずと(知らないうちに)特定の物事・人物に対する間違った意識・考え方・感情・価値観などが自分に根付いていた」「真実を知らずに特定の物事・人物などへの間違った批判・差別・迫害、デマに加担していた」といったことにならないよう、私たちも見聞きした情報を鵜呑み(そのまま信用する)のではなく、その情報が本当に正しいのか、本当に中立なのか(何かの立場・考え・価値観などに偏ったものになっていないか)、その情報量で全てなのか(他にまだ知られていない事実があるのではないか?)など、情報を吟味・確認し、拡散・共有する場合は、その情報やタイミングなどが本当に適切なのかしっかり判断してから発信することが大切です。

 

状況・事態によっては「”知らなかった”では済まされない」ことにもなりかねないのです。


できることから始めてみよう!

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<引用>

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[1]国連広報センター「世界報道自由デー(5月3日)に向けた国連共同メッセージ」(2002年5月15日)
[2]国連デジタルライブラリ E/RES/1993/54(英語版pdf、左上「1993/54. Promotion of press freedom in the world」末尾)
[3]国連デジタルライブラリ A/48/624(英語版pdf、P.22下「DRAFT DECISION II」)
[4]国連デジタルライブラリ A/48/PV.85 (英語版pdf、P.29左「Draft decision II was adopted.」)
[5]総務省HP「令和元(2019)年度版 通信白書 第1部第4節4 フェイクニュースを巡る動向」