「性差別的な五輪報道に異議あり!」:メディアの五輪報道への異議申したてに成功したSNSの底力

クレイグとマークのコラムです。

今回はリオ五輪閉幕記念特別編です!

http://www.huffingtonpost.ca/craig-and-marc-kielburger/social-media-sexism_b_11699176.html

 

盛り上がりを見せたリオ五輪。その陰で、メディアによる女

性アスリートを軽視するかのような報道姿勢に憤り、抵抗と

して風刺に富んだ取り組みを行っていた人たちがいます。そ

の名も「オリンピックのメディアによる性差別ビンゴ」です。

 

この刺激的なタイトルの「ビンゴ」を始めたのは、コメ

ディアンのミーガン・フォード氏です。フォード氏は、

自らのツイッターのアカウントに、「ビンゴカード」を

投稿します。スポーツキャスターが、女性アスリートの

技や技術についてではなく、ファッションに関して発言

しているところを見たら、カードに記載されている番号

をめくることができます。21歳以上の女性アスリートが

、「○○ちゃん」や、「女の子」と呼ばれているのを見

た時も、カードをめくっていくことができます。コメン

テータが嫌味っぽく、「男子顔負けの..」と言ってい

るところを見たら、その時点でビンゴです!

 

「性差別ビンゴ」は、メディアの、性別に対する固定観念に

基づいたスポーツ報道に対抗するために、SNSで行われてい

た数多くの取り組みの一つです。そして、その取り組みは成

功を収めました!

 

女性アスリートは、今回のリオ五輪で歴史的な足跡を残しま

した。多くの世界新記録が、女性アスリートによって新たに

刻まれました。多くの印象的な場面も生まれました。競泳女

子のカナダ代表として出場したペニー・オレクシアック選手

は、夏季オリンピックに出場したカナダ人アスリートとして

は最多となるメダル数(金銀メダルをそれぞれ一個と、二個の

銅メダル)を今大会で獲得しています。この最多記録は、性別

を問わずカナダ人アスリートとしては最高記録です。

 

しかし、このような素晴らしい活躍に水を差していたのが、

メディアによる性差別的なコメントでした。女性アスリート

の業績は、男性アスリートに比べて異様なほど過少評価され

ました。しかし、そのような明らかに偏りのある屈辱的なメ

ディアの報道やコメントに対し、SNSでは多くの人が抗議の

声を挙げました。そのような動きもあり、性差別的なメディ

アの報道自体について扱う記事も出てきたのです。

 

最近ではすっかり、[炎上]のイメージが定着してしまってい

るSNSですが、今回のリオ五輪では、小さな差別的な行為に対

しては、SNSが声を挙げるための手段になり得るということが

示されました。

 

競泳女子のハンガリー代表、カティンカ・ホッスー選手が

400m個人メドレーで金メダルを獲得した際、カメラはホ

ッスー選手の夫/コーチを映しました。そしてアメリカNB

Cのリポーター、ダン・ヒックス氏が、「こちらが記録更

新をもたらした立役者の男性です」と発言しました。この

発言がツイッター上で批判を受けたことで、ヒックス氏に

とっては気まずい状況になり、発言への後悔の思いをにじ

ませる声明を発表します。

 

射撃女子トラップで銅メダルを獲得したコーリー・コグデ

ル・アンレイン選手の地元紙シカゴ・トリビューン紙は、

「ベアーズのラインマンの妻、リオオリンピックで、今

日銅メダリストに輝く」とツイートします。これは、ア

ンレイン選手の夫が、NFLプレーヤーのミッチ・アンレ

イン氏であることからきたツイートだったのですが、こ

のツイートと記事は大きな批判を受け、後日トリビュー

ン紙は、アンレイン選手の功績を称える記事を改めて掲

載しました。

 

カナダのカヌー男子代表のアダム・バンコバーデン選手が、

友人で元ボートカナダ男子代表のアダム・クリーク氏に忠告

を行ったことは、金メダルに値する行為ではないかと思いま

す。クリーク氏はテレビ放送の中で、テニス女子カナダ代表

のウージニー・ブシャール選手について「彼女は競技よりも

自撮りに熱心なようだ」と発言しました。

 

バンコバーデン選手は、自身のブログでこの件に関し以下の

ように投稿しました。

 

「男性であっても、男性が行っている性差別的な言動に対し

て声を挙げていくべきです。そうしなければ、このような問

題は永久に解決しませんし、私たち自身もその問題に加担す

る側にいることになります。」(クリーク氏はその後発言を謝

罪しています。)

 

メディアや広告の性差別に、SNSがレッドカードを突き付け

た例は、リオ五輪だけではありません。

 

今年の初め、LG電子カナダは、新製品の洗濯機の広告で「洗

濯時間が減れば、ショッピングの時間が増える」というスロ

ーガンを使用しました。このスローガンはネット上で批判を

受け、LGは「ステレオタイプなイメージを思わせる広告を出

してしまった」として、謝罪しました。

 

広告会社「エデルマン・カナダ」のリサ・キンメルCEOは、

今の消費者は、企業が打ち出す、性別に対する固定観念に基

づいた広告に対して、これまでにない多くの対抗手段を持っ

ていると指摘します。「今ではSNSで声を挙げることができる

ようになりました。そしてもっと重要なのは、みなさんは自分

自身のお財布の使い方次第で、企業に声を挙げることもできる

ということです」

 

最新の消費者調査では、六割のカナダ人が、「性差別的な広告

を打っている企業の製品は買わない」と回答しています。

 

メディアや企業は、私たちの意見にとても敏感です。なぜな

ら私たちは、視聴者、そして消費者だからです。消費者がい

なければ、どんな事業も成り立ちません。そして今、消費者

たちは、自分たちが買う商品や、消費しているコンテンツに

対して、これまでには前例のないくらい大きな声を挙げて、

あらゆるツールを駆使して消費者としての自ら責任を果たそ

うとしているのです。ネット上で声を挙げることで、スポー

ツキャスターや企業に「消費者だってちゃんと見ているんだ

ぞ」というメッセージを伝えることができるのです。

 

性差別的なコメントや屈辱的なコメントを聞いたら、ビンゴ

だけではなく是非ツイートもして下さい。そして声を挙げて

下さい。もっと人に対して正当な評価や賛辞を贈ることがで

きる社会をつくっていくために!

 

参考リンク

 

オレクシアック選手の活躍

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3097298

 

性差別的なメディアの報道を取り上げている記事
http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/08/sexism-olympic_n_11396858.html (コラムの中のダン・ヒックス氏のコメン

トと、トリビューン紙のツイートは、このハフポストの記事の翻訳部分から引用致しました。)

バンコバーデン選手のブログ記事(英語)

 

http://www.vankayak.com/blog/2016/8/12/feminism-in-sport.html

 

批判を受けたLG電子の広告(英語)

 

http://www.cbc.ca/news/trending/sexism-lg-canada-1.3532536

 

最新の消費者調査(英語)

 

http://www.adstandards.com/en/ASCLibrary/2016ASCConsumerResearch.pdf

おまけ

広告と性差別の関係についての記事
コラムでも指摘されている広告と性差別の問題について、日

本での事例や問題点を指摘している。

 

http://www.huffingtonpost.jp/genki-katsube/apology_his_b_9919154.html

 

SNS発の運動としてしられる、#BringBackOurGirlsに関す

るクレイグとマークの過去のコラム(SNS発の運動に懐疑的

な見方をしている点が、今回のコラムとは対照的。)