【今日は何の日?】3月22日:世界水の日 / World Water Day

3月22日:世界水の日
World Water Day

世界水の日は、1992年6月の「国連環境開発会議」(ブラジル・リオデジャネイロ)で提案(制定を勧告)され、同年12月に制定されました。
地球に生きる全ての生命にとって、安全で清潔な水を確実・平等に使える世界にするため、私たちにどんなことができるのか一緒に考えませんか?
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<もう少し解説>

・制定経緯(詳細)

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国連は1992年6月3~14日、ブラジルのリオデジャネイロで、環境と開発を包括的に扱う会議:国連環境開発会議(UNCED:United Nations Conference on Environment and Development)を開催[1]し、「環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言(略称:リオ宣言、リンク先は環境省ウェブサイト・pdf、英語版は参考文献[4]の3~8ページを参照)」など、環境と持続可能な開発に関する多くの声明・条約などが合意・提起されました。ここで合意・提起された多くの条約や取り決めは、「京都議定書」や「MDGs→SDGs」など、2021年現在の国際的な取り決め・ルール・目標などに繋がっています。

 

(補足)
この会議は「地球サミット」という通称がありますが、「地球サミット」はこの会議から10年後の2002年8月26日~9月4日に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(World Summit on Sustainable Development:WSSD、通称:ヨハネスブルグサミットなど)」[2]、20年後の2012年6月20~22日に開催された「持続可能な開発会議」(通称:リオ+20など)[3]も含んでいる(まとめて「地球サミット」と呼んでいる)場合もあります。

 

この「リオ宣言」に決められたことを国際的に取り組んでいくための行動計画「アジェンダ21」も同時に定められました。
(アジェンダ21の英語版は参考文献[4]の9~480ページを参照)
この「アジェンダ21」の中で、世界水の日を制定することが勧告[4]され、1992年12月22日の国連総会本会議で1993年から毎年3月22日を「世界水の日」と定めることが決議されました[5][6]
「世界水の日」は水資源の開発・保全や関連する教育、アジェンダ21に関する普及・啓発を行う日とされ[5]、世界中で水に関するイベント・セミナー・キャンペーンが実施されています。

 

・日本の「水の日」

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水道インフラが現在ほど発達していなかった高度経済成長期頃の日本では、都市部への人口集中による水不足、急速な都市開発による地盤沈下など、夏(渇水時期)の水不足の他にも水インフラに関する問題が度々発生していました[7]
(2020年末に千葉県で起きた渇水・断水など、現在でも、雨・雪不足や猛暑などの異常気象・気候変動による水不足・渇水・取水制限や給水車の出動といった水問題が毎年発生しています。)

 

「世界水の日」制定よりも15年前の1977年5月31日に、水資源の有限性、水の貴重さ及び水資源開発の重要性について国民の関心を高め、理解を深めるため[8]、1年で水の使用料が最も増える月である毎年8月の最初の日=1日を「水の日」、この日を初日とする一週間を「水の週間」とすることが閣議了承で定められました[9][10]。その後、2014年7月1日に施行された「水循環基本法」第10条で法定されました[9]

 

・SDG6「安全な水とトイレを世界中に」 ①水の衛生・流通の確保

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SDG6のうち、
6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。
(外務省仮訳)
の4つのターゲットが安全で清潔な飲み水・生活用水・お手洗いを確保・整備することを定めています。

※お手洗いに関する問題については、以下の翻訳記事をご覧ください。

ドキッとするけど大事なトイレのお話

 

日本では殆どの家・建物に蛇口やお手洗いが設置されており、私たちは当たり前のようにいつでも清潔な水を利用していますが、日本のこうした状況は、外から見ると稀です。

 

例えば、蛇口から水は出るものの、その水道水は飲用に適さ(飲め)ないため、飲み水や料理用の水は水道水を一度沸騰させたり、市販のミネラルウォーターを使ったりしている国もあれば、家にも近所にも水道や井戸・お手洗いがないので、子どもたちや女性が数十分・数時間歩き、濁った川へ水を汲みに1日に何度も往復したり、草むらや川で用を足したりしているという国もあります。

 

 

実際、2019年時点で世界の約22億人が安全な水を確保できず、約42億人が安全に管理されたお手洗いを使えず、約30億人が(水道が無い・石鹸が無いなどの理由で)家で手を洗うことができていないという、ユニセフ・WHOの調査報告もあります[11][12][13]

 

そのため、遠くの川や湧き水へ家で使うための水を汲みに行くだけで1日を費やしてしまうために学校に行けない子どもたちがいたり、不衛生な水・野外排泄で汚染された土壌に加え、手を洗う水道がないために病気にかかって亡くなったりしている子どもたちが今もたくさんいます。
手を洗う水道がないという問題は、新型コロナウイルスの感染拡大にも繋がってしまっています。

 

各国政府・国際機関・世界中のNGO・NPOなどの取り組みによって、
・しっかり仕切られたお手洗いを家、地域(コミュニティ)、学校へ設置
・水と衛生について教育の機会を設ける
・動物と人間が同じ水を使わないように水源を分けたり、タンクに蓋をつけて水に不純物やゴミが混じらないようにしたりする
・上下水道や浄水場、下水処理施設などを整備する
・地域(コミュニティ)内に給水所や井戸を設置する
・植樹や自然の保全などによって水質を改善する
・水質を改善し、上水道や給水所、井戸へ飲める水を供給する
といった、ハード・ソフト面双方からの水インフラの整備などが行われており、誰もが安全で清潔な水を負担無く使えるようにする(SDG6達成の)ために、こうした取り組みを今後さらに推進・加速させていく必要があります。

 

・SDG6「安全な水とトイレを世界中に」 ②水資源不足・環境問題への対応

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SDG6のうち、
6.4 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
(外務省仮訳)
の4つのターゲットが水資源の管理や環境問題への対応などについて定めています。

 

地球の表面は約70%が水(海)で覆われ、総量は14億km3と推定されていますが、内訳を見ると、約97.5%が海水で、淡水は約2.5%となっています。さらに、約2.5%の淡水は、大半が氷河や氷、地下水などの形で存在しているため、河川や湖沼に流れていて私たちが利用しやすい状態の淡水の量は、地球全体の水の量の約0.008%[14]とごく限られています。

一方、この限られた水を使う人間の数は急速に増えています。国連によると、世界人口は今後80年間増え続け、2050年頃には約100億人に達すると見込まれている[15]そうです。また、経済や産業、インフラの発展、都市化などによって、一人ひとりが使ったり、農業や工業で用いたりする水の量、生活・工業排水の量も増えている[16][17]ため、限りある水の量がどんどん限られ、少なくなっていく…という悪循環に陥っています。

 

また、地球温暖化・大気汚染・環境破壊などによる気候変動などによって、
・雨水が汚染されたり、酸性(酸性雨)になったりして水源が汚染される
・場所によっては極端な干ばつが発生したり、いわゆる「ゲリラ豪雨」のような極端な大雨が多発したり、雨や雪が本来降るべき時期に降ったり積もらなくなったりして、地球上の水の分布バランスがさらに不安定になってしまう
(必要な時・必要な場所に水が足りなかったり、災害を起こすほどに水が多過ぎる状態や場所が生じてしまったりして、水を効率よく利用できなくなってしまう)
(勿論、防災・減災、生態系保護などの観点からも対策を考える必要があります)
といったリスクもあり、私たちが使える、地球上の水の量がますます限られていくという悪循環に拍車がかかることが懸念されています[18][19]

 

 

このように、私たちが使える、地球上の水の量が日々限られていっていることから、水の管理、保有、配分や水質汚染などを巡る「水紛争」が起きている地域も存在しています[20]
このまま世界の水不足がますます深刻になっていくと、世界平和もさらに脅かされる事態へ発展してしまうのです。

 

・水問題を解決するためには(一例)

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少しでも多くの人が清潔で安全な水を使えるようにするためには、
・先述したような、水にまつわる社会問題を多くの人に伝える
・お手洗い、上下水道、給水所、井戸といった「インフラ整備」への支援(の輪を拡げる)
などの手段があります。

 

また、先述したように、水も限りある資源ゆえ、少しでも多くの生きものが水を安全・清潔に使い続けられるようにするためには、
・水を使う時は必要最低限に留める(ただし、飲み水などの摂取分は我慢しないように…)
・水をできる限り汚さないようにする
・土壌や樹木などの「天然の浄化槽」を守る
などの、節水や環境保全に取り組むといった手段もあります。

 

ここに記載したものは一例であり、他にも様々なアクションがありますので、周りの人と話し合って考えてみましょう。


できることから始めてみよう!

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<引用>

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[1]経済産業省「国際連合の活動への対応」
[2]外務省「持続可能な開発に関する世界首脳会議について」(2002年7月1日)
[3]外務省「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」(2012年8月)
[4]国連デジタルライブラリ A/CONF.151/26/Rev.1(Vol.I)「Report of the United Nations Conference on Environment and Development Volume I」(英語版pdf、288ページの(p))
[5]国土交通省「世界水の日」
[6]国連デジタルライブラリ A/RES/47/193「Observance of World Day for Water」(英語版pdf、1ページ)
[7]国土交通省「渇水対応タイムライン作成のためのガイドライン(初版)」(pdf、5ページ)(2019年3月)
[8]国土交通省「「水の日」及び「水の週間」」
[9]水の週間実行委員会(独立行政法人水資源機構)ウェブサイト
[10]水の週間実行委員会(独立行政法人水資源機構)ウェブサイト「水の週間について」
[11]gooddo マガジン「世界の水・衛生問題について知ろう!私たちにできる支援を考える」
[12]ユニセフ プレスリリース「1 in 3 people globally do not have access to safe drinking water – UNICEF, WHO」(英語)
[13]ユニセフ「Progress on household drinking water, sanitation and hygiene, 2000-2017 Special focus on inequalities June 2019」(英語pdf、7~9ページ)
[14]内閣官房水循環制作本部事務局「水循環とは!?」
[15]国連広報センタープレスリリース「世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか:国連報告書」(2019年7月2日)
[16]独立行政法人国立環境研究所「OECD、水資源管理の早期改革を求める報告書を発表」(2012年3月7日)
[17]経済協力開発機構(OECD)「Meeting the Water Reform Challenge」(2012年3月8日、英語、28(pdfデータ上は30)ページ)
[18]なるほどSDGs「水不足の原因とは?私たちにできる対策を考えよう」(2020年6月17日)
[19]独立研究開発法人 国立環境研究所「ココが知りたい地球温暖化 Q1 世界の水不足、原因は温暖化?」(2010年3月)
[20]国土交通省「水資源問題の原因」

<参考>
認定NPO法人ウォーターエイドジャパン「水の格差 2018年世界の水の状況」