きれいな水が家族4世代にもたらす変化

日本ではきれいな水が当たり前のように飲めますが、それ

故に水の有難みが感じにくいのも確か。しかし、エクアドル

には、99年生きてきた人生で初めて、その有難みを噛みし

めている女性がいます。(清田)

 

https://www.we.org/stories/we-villages-helps-bring-clean-water-to-amazon-community-in-ecuador/

 

 

 

ローサ・グランハは今年で99歳になります。99回太陽の周りを回

ったことになり、99年間で家族もたくさん増えました。「子どもがこ

こにも、あそこにも、あちらこちらに…子どもたちに囲まれていま

す。」と笑いながら話すローサは、この地球上に9人の子どもたち

と、その孫たち、ひ孫たちが誕生してから、その幸せを願ってきました。

 

ローサは99歳になる年に、自分からひ孫まで各世代にもたら

されるある変化を目にしています。アマゾン流域にあるローサ

の自宅の裏には貯水塔が建てられ、空に向かって伸びていま

す。最近のこうした空の景色の変化も、彼女の生活が大きく転

換する兆しです。

 

「生きているうちにきれいな水をここで目にするなんて思って

もいませんでした。」とローサは言いました。しかし百聞は一

見に如かず、それは息子のおかげで現実のものとなりました。

WE(フリー・ザ・チルドレン)とのパートナーシップによってロス・リ

オス村で近年実施されたウォーター・プロジェクトにより、小学校

にはきれいな水が供給され、家にも水道が通るようになりました

。きれいな水が供給されるようになったことは、その実施前後で

はっきりと状況を変化させるほどその村にとって歴史的な快挙となりました。

 

ロス・リオス村は、エクアドルのアマゾン盆地を流れるナポ川

岸に囲まれた、移民によって形成された村で、45年前にはま

だ存在していませんでした。ローサの息子ヘクトルは、人口過

密地域の分散と未開の土地の農業化を進める政府の政策の

もと最初に移住してきた移住者の一人でした。

 

ヘクトルの話によると、その土地にたどり着くためにまず彼

は川を渡ったのですが、その手段はなんと…ジップライン

(木に設置されたワイヤーロープを滑車で渡る移動手段)

でした。現在はロス・リオスとなっているその森につながる

道路は当時なかったのです。「村として成立させるためには多くの困難を乗り越えなければなりませんでした。」

 

 

道路でのアクセスがなかったのに加え、他にも大きな困難

があり、作物の収穫をだめにしてしまう厳しい天候や疫病

の蔓延、また村では医療も子どもたちのための学校もなく、

飲料に適した水すらありませんでした。

 

しかしヘクトルと家族は、同様に結束した5世帯の家族と

ともによりよい暮らしを求め、アマゾンに定住することをあ

きらめませんでした。彼らは当初コーヒー豆を栽培してい

ましたが、疫病が発生しその収穫量が減ると、家畜の飼

育やカカオ、とうもろこし、調理用バナナ、キャッサバの栽

培も始めました。また村に子どもの教育の場として一間の

校舎を建て、現地の行政に講師派遣を依頼しました。

 

村が大きくなるにつれ、ニーズもその分増えていき、より良

い学校、医療、安全な飲み水が求められるようになりました。
ローサはいつも孫やひ孫たちに、「生水を飲んではいけないよ」

と何度も繰り返して言っていたのを思い出します。寄生虫による

感染から身を守るためでした。当時は水を飲む前に煮沸する必

要がありましたが、学校では行われていなかったのです。

 

WEがアマゾン地域で活動を始めたとき、最も急を要する課

題への取り組みと基本的人権が保障された生活の提供を

手助けするために、ロス・リオス村とパートナーシップが形

成され、ヘクトルはここでもリーダーシップをとりました。

「今日、私たちは村を全く新しく産まれ変わらせることに

ついて話し合っています。WEはこの場にすばらしい影響

を与えてくれているのです。」

 

一間の校舎は各学年ごとの教室を設けるため現在建て直

されています。近隣のマンダナという村には新しいクリニッ

クができ、より質の高い医療が提供されるようになり、女性

たちは工芸グループに参加し収入を得る機会を持てるよう

になりました。またローサが驚き、喜んだのは、学校の生徒

や家庭に飲み水を提供するための飲料水プロジェクトでした。

 

「私たちには水があります。水なら何でもよいわけではあり

ません、人間が飲むことのできるきれいな水です。」

 

水場のおかげで、ローサのひ孫たちは学校でも健康でいられ

ます。村では、この飲料水プロジェクトの維持費として給水塔

の10パーセントを出資しました。これは村の未来への投資で

す、とヘクトルは言います。

 

「これにより恩恵を受けるのは私たち家族4世代のみでは

ありません。この先何世代もがこの水の恩恵を受けるでし

ょう。こう言っていいかどうかわかりませんが…、」ヘクトル

は一呼吸おいて、続けました。「これは私の村に対する貢

献としてこれからも残っていくでしょう。」

 

息子の功績のおかげで、ローサは心穏やかに過ごしてい

ます。人生はいい方向に変わる、それを経験してきた彼女

は、99歳まで長生きするのも悪くないよ、と若い世代を勇気

づけています。

 

(原文記事執筆:ワンダ・オブライエン  翻訳:翻訳チーム
山本晶子 文責:清田健介)