インド支援事業報告2020年版を発行しました
インド支援事業レポート2020年版をお届けします。
インドの貧困地域の自立に向けて、ご支援ご協力くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
皆さまから集まったご寄付で事業を実施することができ、現地からレポートが届きましたので共有いたします。
特に、大東建託グループみらい基金様からは、たくさんのご寄付をいただき、本当にありがとうございました。
重ねて心より温かいご支援ご協力に、感謝いたします。
インドの持続的な発展へ向けて
インド支援事業 報告書 2020年
インドでの国際協力活動に対する多くの皆さまからのご支援・ご協力に心から感謝致します。皆さんのご支援のおかげで、事業地であるインドのラジャスタン州ラジサマンド地区に住む人々が、貧困の悪循環から抜け出せるよう、知識や技術などを習得し、持続可能な地域づくりを自分たち自身で取り組めるよう支えることができています。
今回のレポートでは、新型コロナウイルスによるインド国内での制限が課される前の
地域で行ってきた活動や、この前例の無い時期の中における、地域での取り組みに
ついてご報告します。改めて、たくさんの方々からのご支援に重ねて御礼申し上げます。
支援先の村が発展し自立できるよう、私たちは現地パートナー「WE インド」を通じて
「5つの支援の柱:教育・水・保健・農業と食料・収入の機会拡大」を打ち立てて
包括的な国際協力事業に取り組んでいます。
インドでは、フリー・ザ・チルドレンの現地パートナー団体「WE」の「5つの支援の柱」の下で設立されたプロジェクトが、コロナ感染拡大という困難な時期の間においても地域が機能するよう、地域に寄り添いながら活動しています。
特に、清潔な水へのアクセス、保健や衛生維持の活動に注力し、地域と個人のレジリエンスを高め、新型コロナウイルスの困難を乗り越えられるような力を地域に与えるよう努めています。
現在、インド政府による制限により、私達のプロジェクトは、
一部を一時的に中断し、新型コロナウイルス対策に重点を移しています。
インドでは、食糧安全保障が依然として特に大きな問題であり、1億9,500万人以上の国民が栄養不足に苦しんでいます。ロックダウンのため、食料へのアクセスはますます困難になっています。支援地域をサポートするために、WEはWE農場での作物の生産と種子の流通の継続に注力しており、支援地域が今の混乱した時期に食料を確保できるようにしています。
5つの支援の柱:
教育の支援の柱を通じて、村の学校に新しい教室ができ、学生達が夢を叶えられるようエンパワーしています。
インドで新型コロナウイルスによるロックダウンが始まる前、私達はラジスマンド地区の村に第3の教室を建てることに取り組んでいました。基礎は完成し、壁を建造している段階で新型コロナウイルスのパンデミックにより作業が中断しました。
新型コロナウイルスによるインド政府の制限が
解除され次第、工事を再開する予定です。新しい教室が完成すれば、
村の子ども達は地域の安全な環境で質の高い教育を受けられるようになります。
女の子の生徒に対しては、月経の理解と保健衛生に関する知識を深めるためのワークショップを実施しました。ファシリテータが参加者に生理用ナプキンを配布し、月経に関する誤解や偏見(生理中の女性の体は忌まわしいなどという考え方)を取り除くために正しい情報を伝えました。思春期の女の子に月経や身体への理解を深めることで、健康的に過ごせるようにすることと同時に、彼女達の自尊心や自信を高めることを目指しています。
私達は学校が再開され、学生が戻ってくることと、新しい教室の建設が再開されることを心待ちにしています。
5つの支援の柱:
「今では家のすぐそばで1年中簡単に水を手に入れられるようになりました。
井戸水を使って作物をより多く育てることで、より多くの食べ物を手に入れることができます。」
ーラクシュミー・バイさん
村の井戸を改修したことで、ラクシュミーさんや他の地域の人達は年間を通して清潔な水を手に入れられるようになりました。
ラクシュミー・バイさんは、夫・2人の子どもと4人でこの村に住んでいます。
家計を維持するために、ラクシュミーさんは農家として働き、夫は結婚式やイベント会場のアルバイトとして働いています。さらに、妻のラクシュミーさんには、農家の仕事の他、家事や生活用水の確保といった仕事もあります。
以前、生活用水の確保はラクシュミーさんにとって時間のかかる重労働でした。
「私は、40年前に作られた井戸から手動のポンプで水を汲んでいました。夏になると、井戸もポンプも乾いてしまいました。そのため、私達は水を汲むために家から約1時間歩く必要がありました。飲み水と農業に必要な水を手に入れるだけで精一杯でした。」
と彼女は言います。
約1時間もの長い徒歩移動のため、彼女が一度に運べる水の量には限りがありました。
そのため、ラクシュミーさんは、家と井戸を一日中往復しなければなりませんでした。
「飲み水・料理・皿洗いなどの家事や牛の世話で、一日に約250リットルの水が必要です。
1往復で30リットルの水を大きな鋼鉄のピッチャーに入れ、頭に乗せて運ぶので、家と井戸を1日で8~10往復する必要がありました。」
さらに、ラクシュミーさんが汲んできた水は、本来は処理が必要な、あまり清潔ではない水でした。
「私の井戸にはパラペット(胸壁:井戸の土砂崩れや浸食を防ぐ壁)がなかったので、モンスーンの期間中は、泥や砂などの汚れや、動物の排泄物・死骸などが混じって井戸水が汚染されてしまうため、井戸水を使うことができませんでした。」
ラクシュミーさんや地域の村びとたちはみな、下痢・腹痛・発熱・黄疸など、水に関わる病気で定期的に苦しんでいました。2018年からWE(現地NGO)は村と協力し、長期間に渡る工事計画を立て、水質調査なども行い、井戸の改修を行いました。
その結果、ラクシュミーさん達の生活は大きく変わりました。
「前の井戸は深さが30フィート(約9.1m)しかありませんでしたが、新しい井戸は深さが60フィート(約18.3m)あり、より多くの水を貯えています。井戸は家のすぐ横にあるので、これまでのように遠くまで水を汲みに行く必要がなくなり、何時間もの節約になりました。私達は新しい井戸の水を灌漑用水として農地に使い、夏の間に自分達が必要な分を含めた、多くの作物を育てることができます。今年は小麦を植えたので、市場で食料をそんなに買う必要がなくなりました。
清潔な水が手に入るようになり、私達の健康も改善されたので、今では通院の必要もなくなり、医療費も節約できています。子ども達の健康も改善したので、学校が再開すれば、病気で欠席することなく通えるようになります。近隣の地域でも井戸が改修され、私達のように清潔な水を使える人が一人でも増えることを願っています。」
(参考)
WEがインドで展開している水支援につきましては、
こちらの翻訳記事も併せてご覧ください。
5つの支援の柱:
農村地域での健康教育は、病気を減らし、予防する上で極めて重要です。そのため、私達は村の人々が健康を維持するために必要な知識を身につけるための保健ワークショップを提供しました。
特に、村の女性を対象に、身体の成熟にともなう身体の変化や、個人の衛生習慣と母乳育児に関するワークショップを行いました。これらのワークショップによって、これまで村で一般的だった病気を大幅に減らすことができました。
地方の地域がヘルスケアに関する保健教育を受けることによって、
私達は、支援地域の村の人々が健康で生産的な生活を送り、
貧困から脱して自立できるよう支援しています。
5つの支援の柱:
WEが運営する農場は支援地域に、栄養価の高い食品を安定的に供給し、困難なコロナ禍の時期でも食料保障(食料の確保)を維持できるようにしています。WEの農場によって、私達は全ての支援地域の農家へ、農業と食料の支援の柱を拡げています。
WEの農場は、支援地域の人達が各家庭で安定した食料確保をできるようにするための知識・スキル・ツールを提供する、デモンストレーション及びトレーニング施設です。ラジャスタン州の田舎にある支援地域から少し離れた場所にある、1エーカー(約4,047平米)の敷地で、支援地域の農家の人達が直面している農作業や食料収穫での課題を解決することを目的としています。
ロックダウンにより、食料を確保することがこれまで以上に困難になっています。
そのため、WEはこの農場での作物生産を継続し、6月には改良したトウモロコシの種を90を超える農家へ、大豆の種を30を超える農家に配布し、モンスーンや新型コロナ
ウイルスの困難な時期でも食料を確保できるようにしました。
「ヤギの群れは今では18頭に増え、定期的な収入源になっています。」
ーバーリ・バイさん
収入の機会拡大支援事業により、バーリさんは家計を維持する上で十分な収入を得られるようになりました。バーリ・バイさん(56歳)は、私たちが支援する村のひとつで暮らす、6人家族です。
バーリさんは普段、料理や掃除、家畜の世話などで一日を過ごしています。
夫や息子・娘は単純作業の仕事をしており収入が少なく、家計を維持することが難しい状態です。
「食べ物を買うためには、今の収入では足りません。私の畑は作物を生産しないので、農業で収入を得ることもできません。」と彼女は説明します。
家計を支えるため、バーリさんは村でWEが展開している、女性のための収入向上グループに入り、他の収入源を確保するためのスキルを教わっています。
「5匹のシロヒヤギを提供してもらい、ヤギの飼育を始めるための知識を学ぶ研修を受けることができました。また、飼育小屋の建設もサポートしてもらいました。」
とバーリさんは説明しています。
収入向上グループに参加すると、WEからヤギの提供の他に、ヤギの飼育や金融に関する研修も受けることができ、ヤギの販売で得られる収入を自分達で管理できるようになります。
「WEによる研修では、ヤギの食事の特徴や、ヤギの健康を保つためのワクチン接種について学びました。また、ヤギを売る最適な時期についても教えてもらい、より多くの収入を得られるようになりました。
シロヒヤギは1年に2回繁殖するので、ヤギの群れは今では18頭に増え、ヤギを売ることで定期的な収入源になっています。もし、ヤギを提供してもらわなかったら、この安定した収入源はなかったでしょう。この収入のお陰で、家族全員を養うために十分な量の食料を買うことができています。」
安定した収入によって、バーリさんは家庭の将来に希望を持てるようになりました。
「子ども達には、教育を受けて親元から独立し、良い仕事に就いて公正な収入を得ることで、幸せで健康的な人生を送ってもらいたいです。」
(補足)
ヤギを贈る支援活動の詳細につきましては、以下のコンテンツも併せてご覧ください。
2019年12月14日に実施したクリスマス募金
「Let’s Merry!クリスマス街頭募金 ~インドのママ達にヤギを届けよう~」
インド支援事業の過去の報告はこちらからご覧いただけます。