【今日は何の日?】4月28日:職場での安全と健康のための世界デー / World Day for Safety and Health at Work

4月28日:職場での安全と健康のための世界デー(労働安全衛生世界デー)
World Day for Safety and Health at Work

1914年4月28日、カナダで「包括的な労働災害補償法」という法律が成立しました。それから70年後の1984年にカナダの公務員労働組合が4月28日を「労働者の追悼の日」にすることを決めました(後にカナダの法律として定められる)。

 

この取り組みは他の国にも広がっていき、1996年に、現在の国際労働組合総連合(ITUC)(当時は国際自由労連(ICFTU))によって国際デーと定められ、2003年にILO(国際労働機関)が現在の名称「(仕事における)職場での安全と健康のための世界デー(または労働安全衛生世界デー)」に変更しました。

 

この日は、先述した「死傷した労働者を悼む」という目的のほか「労働災害及び職業病の予防に焦点を当て、職場における予防的安全衛生文化を形成し、持続させる方法の推進」を目的としています。[1]

 

労働災害に遭わないようにするため、社会の労働災害をなくすためにどんなことができるのか一緒に考えませんか?
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<もう少し解説>

※本記事では日本の労働災害保険・労働基準法に関する詳細は全て省略しています。労働災害保険や労働基準法について知りたい方は、厚生労働省のウェブサイトや各地の労働基準監督署、弁護士・社労士事務所、労働組合などのウェブサイトをご覧いただくことを推奨します。(当団体では労働災害保険や労働基準法に関するお問い合わせはお答えできかねますのでご了承ください)

・労働災害とは

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労働災害とは、働いている人が仕事中または通勤中の事故や事件などでケガをしたり、病気や障害を負ったり、死亡したりしてしまうことです。

例えば、

・自転車通勤中に落車(転倒)した、通勤途中で交通事故に遭った
・職場で階段や足場から転落した
・倉庫で高く積んである商品在庫から転落した
・機械に服を引き込まれたり、体を挟まれたりした
・トンネル、炭鉱、鉱山などの落盤(崩落)や爆発に巻き込まれた
・木の伐採作業中に大きな枝が折れて下敷きになった

といった「不慮の事故」によるものや、

・地下やタンク内などの閉鎖空間での作業中に、換気不足で酸欠やガス中毒になり、後遺障害が残った
・真夏の炎天下、倉庫、トラックの荷台内などの極端に暑い場所で作業していて熱中症になった
・老朽化した足場を放置したために足場が壊れ、乗っていた人が転落した
・水や油で濡れた床で滑って転倒した
・機材の不具合を気にせず使い続けたところ、機材が爆発、炎上して巻き込まれた
・前後の確認不足で作業車輌に轢かれた
・工具を間違った方法で使ってケガをした
・無免許で重機を運転させて事故が起きた
・本来人を乗せてはいけない乗り物に人を乗せていたら転落した
・残業続きで脳梗塞・心筋梗塞などの重病を発症し、後遺障害が残った

など、本来やらなければならない対策を怠ったり、やってはいけないことをやったり、相手に無理や無茶を強要したりしたことが原因の労働災害、「人災」と呼べるケースもあります。

 

かなり専門的な内容ですが、国内での労働災害の発生状況や労働災害の事例集は、厚生労働省HPでデータベースが公開されています。
厚生労働省 労働災害発生状況
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」 労働災害事例
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_FND.aspx

・労災は体の被害だけではない

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とても残念なことですが、ここ15年くらいで「ブラック企業」「~搾取」「~ハラ(ハラスメント)」という言葉をメディアなどで日常的に見聞きするようになりました。
長時間労働やパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、カスタマーハラスメントなどで、身体だけではなく心に傷や障害を負ってしまう労働災害が未だに後を絶ちません。

 

詳しいことは長く、専門的な話になってしまうのでここでは割愛しますが、心の傷や病気は、兆候・症状・治療法などが一人ひとり異なり、兆候・自覚症状も一般的な病気よりも分かりにくいものです。
(一般的な病気と異なり、「これが原因でこの病気にかかる」「この病気にかかるとこんな症状が出る」「こうすればこの病気は治せる・防げる」といったセオリーが通用しない)

 

その上、症状の改善や治療には何年、何十年単位の長い時間を要します。また、「治った」と思っても、ちょっとしたきっかけ(トラウマに関連する言葉を見聞きするなど)で症状が再発したり悪化したりすることもよくあります。

 

長い間働けなくなって仕事を失ったり、再就職をしようにも再発や悪化のリスクから働き口が限られてしまったり(酷い場合は障害を理由とした差別や人権侵害を受けることもあります)、最悪の場合自ら命を絶ってしまったりするなど、心に被害が及ぶ労働災害は多くの面で極めて深刻な問題であることを私たち一人ひとりが認識することが求められています。

 

・労働災害・事故を防ぐ対策①(一例)

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工事現場や社会科見学で訪れた工場などで「労働災害を無くそう」「安全第一」「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」などの横断幕やパネルが掲示してあるのを見たことがある人もいるかもしれません。
同様に、学校で「あいさつをしよう」「手洗い・うがいをしよう」などの目標が定期的に掲示されていたり、水道やスイッチの周辺に「節水・節電」というステッカーが貼ってあるのを、誰もが毎日目にしていると思います。

 

「人間は必ず間違いを犯し、~しようと意識しても、時間が経つとどうしても忘れてしまう」生きものです。そのため、これらの例のように「大事なことを可視(見える)化すること」は、忘れないようにしたり、思い出させたりする効果・目的があります。
(労働災害から論点がずれますが、事故対策について詳しく知りたい方は「フール・プルーフ」「フェイル・セーフ」「失敗学」「ハインリッヒの法則」「技術者倫理」といった言葉でウェブ検索してみてください)

 

ほかにも、鉄道の運転手や駅員さんが頻繁に「~ヨシ!」と声を出したり指差し確認したりしているのも、「指差喚呼(しさかんこ:鍵をかけた・扉を閉めたなどの対策を、動作・音声で確実に確認すること)」という安全対策の一環であり、自分だけではなく、周りの同僚・仲間、お客さんや通行人などの安全を確保しているのです。

 

・労働災害・事故を防ぐ対策②(一例)

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前節で述べた対策は「労働災害を起こさない環境・組織風土づくり」に着目したものですが、「自分が労働災害の当事者にならないようにする」という「自己防衛策」もあります。

 

ハラスメント行為に対する正しい認識を持つ、労働やその権利に関する特に重要な憲法・法律・法令について知っておくなど、知識面で対策するという方法もありますが、「翌日早朝から営業車を運転するので、交通事故を起こさないよう睡眠時間を確保する」「夏場の作業時は一定時間ごとに水分補給する」といった、ほんの小さなことでも労働災害を防ぐ対策になります。

 

ほかにも、「なんだか細かいミスが増えているな、このままだともっと酷いミスに繋がりかねないから少し休憩しよう」「仕事で失敗して酷く凹んじゃったから、こういう時は一度眠って気持ちを落ち着かせよう/家を掃除して気を紛らわそう」など、自分の心や体がどういう時にどんな状態になるのか、どうすれば良い状態へ戻せるか/良い状態を保てるかなど、「自分の心身をよく知ること」も自己防衛策になります。
(この方法は労働災害の対策以外にも日常のウェルビーイングなど、様々な場面でも活用できます)


できることから始めてみよう!

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<引用>
[1]ILO駐日事務所メルマガ2007年4月29日号
[2]ILO駐日事務所ウェブサイト