【報告】6月12日(木): 院内集会「児童労働ゼロ、その日はいつ?」~SDG8.7 児童労働撤廃目標期限の2025年の今、 私たちにできることは?~

児童労働者数の新推計が、ILOとユニセフより発表されました。(児童労働の世界推計 2024年版

新しい調査によると、世界中で働かされている子ども(児童労働者)は、約1億3,800万人いることがわかりました。これは5歳から17歳の子どものうち、13人に1人の割合です。つまり、クラスに30人いたら、2人以上が児童労働をしている計算になります。

 

6月12日は「児童労働反対世界デー」。この日にあわせて、フリー・ザ・チルドレンジャパンが会員団体としてかかわる「児童労働ネットワーク」は、衆議院第一議員会館で院内集会を開催し、当団体の元FTCJ子どもアンバサダーの植岡さんが子ども・ユース世代という立場から発言を行いました。

 

当日は「児童労働の世界推計2024」の概要を説明もありましたので、新推計の一部の内容をご報告します。

院内集会は、児童労働ネットワーク 代表の堀内光子さんの挨拶ではじまり、ILO活動推進議員連盟の会長である田村憲久衆議院議員、ユニセフ議員連盟事務局長を務める牧島かれん衆議院議員が続けて挨拶を行いました。

来賓としては、仁木博文厚生労働副大臣、宮路拓馬外務副大臣、鈴木馨祐法務大臣、そして、駐日ガーナ大使を務めるジェネヴィーヴ・エドゥナ・アパルゥ閣下がお越しになり、挨拶をされました。

院内集会では、児童労働ゼロに向けた政府、企業、NPOなど様々な立場の人々が集い、課題、取組、希望について分かち合いを行いました。

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンからは以前にFTCJ子どもアンバサダーとして活動をしていた植岡さんが子ども・ユース世代という立場から発言を行いました。児童労働ゼロを目指して、ご自身が行った子どもやユース世代向けの啓発イベントや街頭募金、バースデードネーションについて紹介をし、一人ひとりが行動することの重要性を訴えました。

また、参加者の高校生による「児童労働の規制に関する国際法が存在するにも関わらず、あらゆる形態の児童労働がいまだ存在している中で、グローバルな枠組みが果たしていくべき役割や、あるべき姿は何か?」という政府とNGOへの問いかけに対し、厚生労働省の平嶋壮州大臣官房国際課長は「児童労働の撲滅という目標には到達していないが、着実に減少している。今後もSDGsに向けた様々な取組などを総合的に行うことが重要だ。」と答え、認定NPO法人ACE代表の岩附由香氏は“児童労働がなくならない原因は、貧しさではなく、政治的意思の欠如によるものだ”というカイラシュ・サティヤルティ氏の言葉を引用し、「児童労働は途上国の日常生活の中で起こっているので一朝一夕になくすことは難しいが、様々な立場による児童労働を許さない継続的な意思とそれに伴う行動が重要。」と回答しました。

植岡さんの発言全文

認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン元子どもアンバサダーの植岡優里奈です。
本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、「世界は変えられる」と子どもが信じられる社会を目指して活動している団体です。『国内外の貧困や差別から子どもをFree(解放)すること、「子どもには世界を変えられない」 という考えから子どもをFree(解放)すること』という2つのfreeの実現をビジョンにしています。

ここで、私が今までにフリー・ザ・チルドレン・ジャパンの子どもアンバサダーとして行ってきた児童労働に関するアクションをいくつかご紹介させていただきます。

1つ目は、2022年の6月12日児童労働反対デーに合わせて、ユースに向けた啓発イベントと街頭募金イベントの開催を行いました。このようなイベントの開催によって、ユース世代への認知度を高めること、そして街頭募金への参加など実際にアクションを起こす機会を作ることを目指しました。

2つ目に、バースデードネーションの開催です。バースデイドネーションという言葉、ご存知でない方もいらっしゃるかもしれないのですが、バースデードネーションというのは、自分の誕生日に合わせてクラウドファンディングのようなものを行い、寄付を募る活動です。私は、2022年、高校1年生の時に児童労働撤廃に向けて、この活動を行いました。

さらに、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、毎年、子どもメンバーがフェアトレード商品の企画から販売まで行っています。

子ども・ユース間では、子どもの権利の認知度も低く、児童労働に興味があまりない人が多いのも事実です。しかし、児童労働は、国家や国際機関主体の解決策だけでなく、私たち市民、そして子ども・若者が先ほど挙げたような身近にアクションを起こすことができる課題だと思います。私たちフリー・ザ・チルドレン・ジャパンはこれからも、子どもや若者が児童労働の解決に向けてアクションを起こすということにコミットしていきたいと考えております。

ご清聴ありがとうございました。

 

当日会場には、党派を超えて多くの国会議員が出席し、また複数の報道機関も取材に訪れていました。

(掲載記事) 朝日新聞 「児童労働ゼロ」その日はいつ? 達成には11倍のペース必要 関係団体ら取り組み議論

 

「児童労働ゼロ」その日はいつ?

ILO(国際労働機関)とユニセフ(国連児童基金)が6月11日に発表した児童労働の世界推計 2024年版によると、世界でおよそ1億3,800万人の子どもたちが働いていて、その中の約5,400万人は、体や心の健康に悪い影響を与えるような、危険な仕事をしていることがわかりました。ここでは報告書の内容をポイントを絞ってご紹介します。

アジアや太平洋の国々では、子どもが働かされるケースがこの4年間で約45%も減りました。これは世界の中でも一番大きな減り方です。その理由には、それらの地域で子どもが学校に通えるようにしたことや、子どもを守るための法律を強くしたことなどが関係しています。

新型コロナウイルスの広がりの影響で、児童労働が増える心配がありましたが、前に発表された数字よりも2,200万人以上少なくなっていて、いい方向に進んでいる部分もあります。

しかし、仕事の種類で見ると「農業」で働いている子どもが全体の6割を占め、場所で見ると「アフリカのサブサハラ地域」(アフリカの南の方)に住んでいる子どもが6割以上で、これらの数字にはほとんど変化がありませんでした。

また、児童労働はお金の少ない国で多く見られますが、少ないながらも日本のようなお金のある国でも、児童労働があることが報告書の中であらためて指摘されています。

児童労働の数は、2000年には約2億4,600万人でしたが、今では約1億3,800万人と、半分近くまで減りました。

しかし、世界が目標としている「2025年までに児童労働をなくす」という目標(SDGsの目標8.7)は、今のままではとても難しい状態です。

ILOとユニセフは、報告書の中で「あと5年で児童労働をなくすためには、今の11倍のスピードで減らしていく対策が必要だ」と言っています。

そして、各国の政府に対して、次のような行動を呼びかけています。

各国が取り組むべきこと

  • 子どもが働かなくてもすむように、生活が苦しい家族をお金の面で助けるしくみ(たとえば「児童手当」など)に、もっとお金を使ってサポートすること。

  • とくに危ない仕事をしている子どもたちを見つけて、守る仕組み(子どもを守る制度)を強くすること。

  • 農村や貧しい地域でも、すべての子どもがしっかりとした教育を受けられるようにすること。

  • 若者や大人がきちんとした働き方(ディーセント・ワーク)ができるようにし、労働者の権利を守ること。

  • サプライチェーン全体で子どもを守る。
     ※サプライチェーンとは、商品が作られてからお店に届くまでの「つながり(流れ)」のことです。たとえば、Tシャツなら、綿を作る農場→糸をつむぐ工場→布を縫う工場→運ぶ会社→お店、などいろんな場所と人が関わっています。
     その流れのどこかで子どもが働かされていないかをチェックし、企業に対して「ルールを守ってください」と責任をもたせることが必要です。

 

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、引き続き、子どもたちと共に児童労働ゼロを目指して活動を続けてまいります。