【最終報告】フィリピン・視覚障害者支援プロジェクト

2020年9月に当団体が実施したクラウドファンディングプロジェクト「障害者に再就職のチャンスを!コロナ禍で職を失った仲間を救いたい」につきまして、現地パートナー団体のフィリピン盲人連合(以下PBU)と、視覚障害ITセンター(以下ATRIEV)から最終報告を受け、今後の支援方針・方法に関するオンラインミーティングを行いました。

 

このプロジェクトは、コロナ禍で収入や仕事を失った、視覚に障害のあるフィリピンのマッサージ師に対するICT・起業研修を通じた生計立て直しのため、2020年10月~2021年8月の期間で実施しました。プロジェクト全体を振り返りながら結果・成果を報告致します。

 


【プロジェクトの経緯】

●背景(~2020年9月)

フィリピンでは、視覚障害者が十分な教育を受けるためのインフラ・体制がまだ整っていないため、フィリピンの視覚障害者が安定した収入を得られる仕事に就くことは難しく、職業の選択肢があまりないという現実があります。そのため、視覚障害者のほとんどがマッサージ(按摩)師の仕事に就き、1日10米ドル(1,000円)程度の収入で生計を維持していました。

写真提供:PBU

さらに、フィリピン国内のコロナ禍も長期化したことにより、「視覚障害のあるマッサージ師の多くが、貯金も底をつき、自分や家庭・家族を養うことが困難な状態になっており、物乞いなどでギリギリ生き延びようとしている人も出てきている」という、切実なヘルプが現地から当団体に寄せられました。

 

そこで、当団体で現地パートナー団体のPBU、ATRIEVと協議した結果、「コロナ禍で失業してしまった、視覚障害のある35歳以上のマッサージ師に対し、ICT・起業スキル研修を行い、Androidスマホ・タブレット・パソコンなどを活用したビジネスを新たに興すことで、収入を得られるようにする」という支援事業を行うことになりました。そのためには300万円が必要なことがわかり、資金調達キャンペーンを行うことにしました。

ATRIEVによるパソコン研修の様子(2019年に撮影された動画より)

 

プロジェクト資金を集めるために、当団体フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは2020年9月に寄付プラットフォームサイト「Syncable」にて200万円を目標としたクラウドファンディングを実施し、残りの100万円は助成金を申請することにしました。多くの方からのご寄付のおかげでクラウドファンディングの目標額は開始から12日で達成することができました、ご協力本当にありがとうございます!

一方で、助成金は残念ながら採択されませんでした。しかし、皆さまからのご寄付を通じて600万円以上が集まりましたので、予定通り事業を実施することができました。より詳細な情報は当時の記事をご覧ください。


●視覚障害マッサージ師へのICT・起業スキル研修の実施(2020年10~2021年1月)
※中間報告記事からの抜粋紹介

事業実施のパートナー団体「ATRIEV」でのICT・ビジネス研修は2020年10月からスタートし、定員100名に対し、フィリピン全土から120名の受講希望がありました。PBUによる選考(面接など)を経て受講者の絞り込みを行い、研修をスタートしました。しかし、その矢先、2020年11月に記録的な大型台風が連続してフィリピン本土に接近・上陸して研修を中断・延期したため、2020年末時点で研修を受講できていたのは35名でした。

この35名のうち26名が研修を修了し、オンライン印刷サービスや雑貨店、手作り料理の屋台など、それぞれ新しいビジネスを始めました。(上記記事で一部を紹介しています)

 

手作りピーナッツバター・デザートの製造・販売を始めたジャイム・カンポさん
(C)Philippine Blind Union
雑貨店(フィリピンでは「サリサリ・ストアー」と呼ばれています)を始めたクリソストモ・ルラガスさん (C)Philippine Blind Union

 


●事業内容の変更・起業計画の審査と必要資金の助成へ(2021年2月~9月)
中間報告では、上記のICT・起業研修の実施において、以下の課題・問題点があることが現地から報告されていました。
1.ネットインフラの問題
・フィリピンのネットインフラ整備がまだ不十分なため、研修中にネット接続が不安定になり、研修が中断してしまうことが度々発生することがおおくあった。
・受講者の自宅や地域にインターネット回線自体が無いためにそもそも研修を行うこと自体が困難なケースが少なくなかった。
2.ICT端末の問題

・ATRIEVのICT・起業研修は「Android端末」に特化したものだったため、iOS(iPhone・iPad・MACパソコン)ユーザーが受講できなかった。
・スマホやタブレットなどのICT端末を所有していない受講者が少なくなかった。(ATRIEV・PBU側も機材を貸与することで対応したかったが、貸与するための端末も不足し、フィリピン政府による厳しい外出・営業制限のため入手困難になっているため打つ手が無かった)

3.フィリピン国内の教育格差
・(フィリピン国内で視覚障害に対応できる教育機関や教員が少ないなどの理由で)学校に通えず、教育をしっかりと受けられていないため、折角やる気はあるのに用語や研修内容を理解することが困難な受講者もいた。

4.(フィリピン国内の)コロナ禍の情勢変化に伴うニーズ変化
・「ネット回線が無い地方部に居住しているので研修は受講できないが、ICTスキルと起業計画はある」というマッサージ師が比較的多かった。
・2020年11月頃からフィリピン政府がロックダウンの措置を緩和したことで、経営していたマッサージ医院を再開できるようになった(視覚障害を有する)マッサージ師も出てきたものの、営業再開しても厳しいロックダウン措置で客足が戻らなかったり、マッサージ院内の感染症対策に要する費用が不足しており、開店休業・営業再開が困難な状態になっていた。

 

こうした「フィリピン国内のネットインフラ未整備・コロナ禍に伴う物流の停止などの事情で、コロナ禍でICT・起業研修を実施するにはハードルが多かった」「コロナ禍の状況変化で、視覚障害のあるマッサージ師に対する起業支援以外の支援ニーズが高まってきた」「貯金の尽きたマッサージ師が日々増え続けており、迅速な経済支援が必要になっている」といった事情を受け、皆さまから頂いた支援金をより多くの方々へ効果的かつ迅速に提供できるよう、「35歳以上で視覚障害のあるマッサージ師に対するICT・起業研修及び起業資金助成」から、「ICT・起業研修は1月でやめて2月以降は起業・営業再開するための十分な計画をPBUに申請・承認されれば、年齢を問わず、視覚障害のあるマッサージ師に必要な資金を助成する」という、ニーズに沿った資金提供へ変更することにしました。
これにより、ICT・起業研修を修了した26名に加え、さらに99名のマッサージ師の起業・営業再開に必要な資金の助成ができました。受益者数を合計すると26+99=125名となり、当初予定していた100名を超えるマッサージ師を支援することができました
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【フィリピン盲人連合からの資金助成を受けた、視覚障害のマッサージ師たちが新たに興したビジネスを紹介!】
前回の中間報告と同様、興したビジネスや再開したマッサージ院の経営がうまく行っているかどうか追跡調査・確認できるようにするため、起業・営業再開に必要な資金を助成したマッサージ師には、自分のビジネスの状況をPBUへ動画や写真などで定期報告することを義務づけています。
2月以降に本プロジェクトの助成を受けてビジネスを興したマッサージ師の方々から、たくさんの写真や動画と喜びの声が届いていますので、今回も一部をご紹介致します。

 

▼支援を受けたマッサージ師の皆さんからの声
・ご支援くださった皆さま、本当にありがとうございます!ご支援のおかげで、マッサージ師ではなく、お菓子や食料品を販売する新しいビジネスをスタートさせて、収入をえることができました。
・ご支援をしてくださったおかげで、マッサージ室のベッドや衝立などを新しくすることができました。本当にありがとうございます。
・マッサージ師としての収入がなく、困っているところにご支援をいただきとても励まされました。ご協力のおかげで、家族で雑貨屋をスタートすることができ、新しい収入源をつくることができました。心からお礼申し上げます。
・ビジネス研修を受けたことで、インターネットを通じて、商品を販売することができるようになりました。新しいかたちのビジネスをスタートすることができとても嬉しいです。ありがとうございました。

 

 

 

(C)Philippine Blind Union


改めまして、コロナ禍で収入を失ったフィリピンの視覚障害のあるマッサージ師への生計維持支援にあたたかいご協力をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 

今後も引き続き、フィリピンの視覚障害者への自立や教育支援を行っていきます。今後の事業の詳細については、別途ブログやメールなどでご連絡いたします。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。