【報告】4月22日(木): 子どもの権利保障のための提言発表 院内集会「包括的な子どもの権利保障を!~子どもとともに考える~」

みなさんこんにちは!
FTCJインターンの凜です。

4月22日㈭、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン実行委員会の主催で、多くの国会議員や省庁関係者のみなさんとともに、包括的な子ども権利保障の実現に向けた提言の発表と取り組みの共有のため、院内集会が開かれました。FTCJからは、子ども権利保障の実現に強く関心をもつ子どもたちが参加し、そのうち5名が登壇して自らの声を届けましたので、ご報告します。

 

 

【イベント当日について】
日時: 2021年4月22日(木)16:00~17:30(受付 15:40~)
会場: 衆議院第一議員会館 1階 多目的ホール
参加者数:議員(代理含む)46名
会場参加 69名
オンライン参加 160名
主催: 広げよう!子どもの権利条約キャンペーン実行委員会
後援: 児童の養護と未来を考える議員連盟、子どもの貧困対策推進議員連盟、ユニセフ議員連盟、超党派ママパパ議員連盟
協賛: 認定特定非営利活動法人OurPlanet-TV

・「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」とは
国連子どもの権利条約が採択され30年、日本政府が批准して25年の2019年に発足しました。日本社会において、「子どもの権利」の概念が浸透し、国、自治体、家庭などのあらゆるレベルにおいて、子どもの最善の利益が確保されることができるような社会状況をつくることを目的として、ネットワーク構築、政策提言、啓発等の活動に取り組みます。(「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」HPより)

・院内集会の目的
日本では、子どもの権利保障を基本にした総合的な法律、いわゆる「子ども基本法」(以下、「子ども基本法」)が制定されておらず、縦割り的に政策が実施されており様々な課題があると指摘されています。また近年では、痛ましい子ども虐待死事件をきっかけに親による体罰禁止が法制化され、子どもの権利保障への関心がますます高まっています。

これらの状況から、広げよう!子どもの権利条約キャンペーン(以下、本キャンペーン)では、包括的な子どもの権利保障を実現するための提言づくりを、子どもたち自身の意見も聴きながら進めてきました。

この度、その提言を発表し、子どもの権利が社会で守られるようにしていくために必要な政策や取り組み、さらに「子ども基本法」の必要性を、より多くの国会議員、省庁関係者、報道関係者、専門家および市民の方々に共有したいと願い、院内集会の開催を企画しました。子ども権利保障の実現に強く関心をもつ子どもたちも参加し、自らの意見を届けます。(「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」HPより)

 

【プログラム】

1.包括的な子どもの権利保障にむけた提言の紹介と、子ども庁創設に関する資料の説明:
荒牧重人(本キャンペーン共同代表、子どもの権利条約総合研究所代表)

2.子どもたちが考える子ども基本法や子どもに関する日本の課題についてのコメント
FTCJ代表 中島早苗
①波田野 優(小学6年)
②檜垣 恵麻(高校3年)
③関 志翔(高校3年)
④坂口 くり果(中学3年)
⑤阪本 瞳(高校3年)

3.大谷美紀子(国連子どもの権利委員会委員)からのコメント

4.関係省庁からのコメント
外務省、法務省、文部科学省、厚生労働省より

5.リレートーク「子どもの権利を守るために~各団体の取り組み~」
・子どもへの暴力:長谷有美子(NPO法人CAPセンター・JAPAN)
・子どもの貧困の視点から:田代光恵(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)
・日本財団「子ども基本法」提言:高橋恵里子(日本財団)
・子どもの権利実現の展望、まとめ:甲斐田万智子(本キャンペーン共同代表、認定NPO法人 国際子ども権利センター(シーライツ)代表理事)

6.国会議員からのあいさつ、コメント、質疑応答

 

 

【子どもたちの声のサマリー】

FTCJから登壇した5名の子どもの皆さんの主張をご紹介します。
子どもたちは、今回発表された政策提言の5つの柱に関してそれぞれの思いを語ってくれました。

①波田野 優 【柱1.子どもの権利条約を日本および世界の中で広める】
波田野さんは、「子どももおとなも子どもの権利条約について知り、日々の生活の中で活かされるような社会」を作っていくために、「おとな・子ども・社会」それぞれへのアクションを提案しました。
具体的には、おとなに向けては子どもの権利条約を母子手帳など親向けの資料へ掲載すること、子どもには教科書や生徒手帳に掲載して身近に感じてもらうこと、社会には子どもの日などの記念日を利用し、テレビやSNSも活用して子どもの権利条約を周知することなどが挙げられました。
最後には、小学生の優さんが日常的に子どもの権利条約に触れる機会はほとんどないと話し、「子どもなのにすごいね。」「子どもだからできないよ。」というような言葉を聞くことのない、子どもの尊厳が守られた社会になってほしいと訴えました。

②檜垣 恵麻 【柱2.子どもを誰ひとりとして取り残さない】
檜垣さんは、経済的な理由などで通常の学習塾に通うことのできない小中学生たちにボランティアで授業をした経験をあげ、自分の努力とは無関係の生きづらさを感じている子どもたちが大勢いるのだと肌で感じたと語りました。
お金のことや親のことは子どもにはどうすることもできないことなのに、彼らの多くが原因は自分にあると感じてしまっており、この状況を放置すれば彼らは周りに助けてもらうという経験のないままおとなになる。この負のサイクルを断ち切り、子どもの権利条約を実現するために、子どもたちを支えるという大切なステップを踏んでほしいと、国会議員や参加者に向けて、訴えました。

③関 志翔 【柱3.子どもへの暴力をぜったいにゆるさない社会をつくる】
関さんは、子どもたちを里親からの暴力と虐待から守るための里親制度の見直しを強く訴え、実際に里親家庭で生活している友人S君の経験について話しました。
S君は生後間もなくから3歳の姉とともに乳児院とグループホームで育ち、小学1年生のときに1件目の里親家庭に引き取られましたが、「女の子だけが欲しかった」という理由でS君だけ冷遇され、精神的苦痛から姉とともにグループホームに戻りました。その後S君は別の家庭に引き取られるもののそこでも虐待を受けて退去、現在暮らしている3つ目の家庭でも孤独な状況におかれているということです。
厚生労働省は現在施設ではなく里親のもとで子どもが育つよう、社会的養育の場所を施設から里親へとシフトさせ、里親委託を増やすことを目標にしています。里親で暮らす子どもたちの権利が守られるように、関さんは、「保育士の免許やその他福祉の資格を持つ者がいる家庭を優先」「子どもの権利を基盤にした子育てについての研修を必修・継続化」「専門職員による里子への1対1のカウンセリングの実施の徹底」の3つの改善案を提案し、子どもにとって最善の利益を考えた政策づくりを求めました。

④坂口 くり果 【柱4.子どもの声を聴き、子どもとともに行動していく】
坂口さんは、柱4に通じるものとして、子どもの権利条約の4つの柱「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」のうち、「参加する権利」の重要性を取り上げ、いくら子ども自身が守られる権利や恐怖にさらされずに生きる・育つ権利があるということを知っていたとしても、「参加する権利」を知らなければ暴力やいじめなどを受けたときに抵抗することができないのだと話しました。
しかし、現状は子どもたちの参加する権利は守られているとは言い切れない。虐待やいじめといった身体的被害の及ぶものが取りざたされる中であまり注目されないうえに、「子どもにこの条約を教えると、子どもが言いたい放題のわがままになる」という考えから子どもの意見を率先して聞こうという考えには至らないためなのではないか。これに対し坂口さんは、この権利を知ることによって子どもが様々な分野で自分の頭で考え、自信をもって意見を発信することができるようになるのではないかと話し、議員や省庁関係者に向けて、子どもの声を聴き一緒に行動していくことを求めました。

⑤阪本 瞳 【柱5.子どもの権利が守られているかどうかを確認する仕組みを作る】
坂本さんはこの柱について、「子どもの権利条約が守られているかどうか監視・救済することを目的とした、国や学校などの権力から独立した公的機関を作る」、「学校やフリースクールなどの教育現場に、子どもの権利に詳しい第三者を置く」という2つの提案を挙げたうえで、「子どものプライバシーを守りながら、子どもの権利を守る」ことの重要性を訴えました。
おとなが子どもから相談を受けた時、内容を子どもの許可なしに他人に話さないということを義務付けなければならない。もし相談した内容を勝手に他人に話せば、相談者が不利益を被り信頼関係が失われてしまうといいます。2019年の野田市の虐待事件や、今年報道されている旭川でのいじめを苦にした中学生が自死した事例などでも、子どもの訴えを加害者側に共有したことで被害者がさらに追い詰められるという事態が起きていると問題提起しました。坂本さんは、良かれと思ってした親や教師などへの情報共有が当事者の子どもが傷つく場合があると訴え、子どものプライバシーを守るという点を踏まえながら、子どもの権利が守られているかどうかを確認する仕組みを作ることを求めました。

 


子どもたちの声には子ども自身が語るからこその説得力、切実さがあり、会場全体が聞き入っているのが感じ取れました。登壇者の皆さん、本当にお疲れ様でした!また、今回の登壇者を決めるにあたっては、FTCJ主導で子どもたちを募り、彼らの包括的な子どもの権利保障への強い思いを伺ってきました。事前に行ったオンラインブリーフィングでは、子どもの権利条約や政策提言の内容のシェアを通じてさらに思いが強まり、数の限られた登壇枠を子どもたち全員が希望してくれ、様々な点を考慮してなくなく登壇者を絞りました。残念ながら今回は登壇する時間をとることのできなかった子どもの皆さんも、オフライン・オンライン会場から登壇者を見守ってくれていました。改めて、お疲れ様でした!!