【今日は何の日?】3月21日: 国際人種差別撤廃デー / International Day for the Elimination of Racial Discrimination

3月21日:国際人種差別撤廃デー
International Day for the Elimination of Racial Discrimination

 


1952年、当時の南アフリカ政府によるアパルトヘイト(後述)の一環として、一定の年齢以上の黒人にだけ身分証明書の携帯を義務付けた(もし身分証明書を持たずに外出した場合は身柄を拘束された)「パス法」が制定されました。

 

1960年3月21日、この「パス法」に対し、数千人規模の抗議デモがヨハネスブルグ近郊のシャープビルという町の警察署前で行われました。デモ隊は警察による警告や逮捕を覚悟の上、身分証明書を持たずに抗議運動を展開しましたが、これに対し警察が発砲、69人の死者、180人以上の負傷者を出す惨劇に発展しました。[1]
この惨劇は「シャープビル虐殺事件」と呼ばれています。

 

シャープビル虐殺事件は当時の南アフリカ国内の黒人による、人種差別に対する抗議運動拡大に繋がりました。
国際社会からも強い非難の声が上がり、国連は1960年代から人種差別撤廃に向け、様々な宣言や条約を決めていきました。
その中で、1965年12月21日に「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination)(通称:人種差別撤廃条約)」が採択され、1966年10月26日の第21回国連総会で「国際人種差別撤廃デー」が定められました。[3][4][5]

 

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<もう少し解説>

<アパルトヘイトとは>

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南アフリカ政府が1948年から1990年代初めまで行っていた、「法によって定められた人種隔離と差別制度・政策」[2]のことです。
昨今、「ヘイトスピーチ・クライム」といった用語をメディアで頻繁に見聞きするようになりましたが、アパルトヘイトの「ヘイト」は、英語で「嫌う」を意味する「hate」ではなく、アフリカーンス語(南アフリカの公用語の一つ)で「分離・隔離」を意味する「Apartheid」が語源です。(英語の「separation・isolation」に相当)
(ヘイトスピーチの詳細は法務省「ヘイトスピーチ解消法」解説ページをご覧ください)

 

南アフリカでは、1911年に金やダイヤなどの鉱山で働く白人と黒人の職種区分と人数比を全国で統一する法律「鉱山・労働法」という人種差別法が制定されて以降、白人政府が白人の生活を優先すべく、黒人の権利を不当に制限・侵害する差別法を次々と制定してきました。[1]

 

先述した1960年の「シャープビル虐殺事件」などをきっかけに、南アフリカ国内の黒人たちによる抗議運動・国連からの審議参加拒否、様々な国からの経済制裁、人種差別=憲章違反によるオリンピック参加拒否(1964年の昭和東京五輪~1988年のソウル五輪)などの国際社会からの非難・制裁措置[2]などが拡がりつつも、当時の南アフリカ政府は「人種ごとの分離発展のため」と耳を貸さず[1]、抗議デモの中心人物(後の南アフリカ大統領)であったネルソン・マンデラ氏を投獄するなど、アパルトヘイトを強硬に推し進めていきました。

 

40年以上に渡る長い闘いを経て、アパルトヘイトは1990年代前半にようやく廃止されました。(アパルトヘイトが廃止された時期については、ネルソン・マンデラ政権(当時)発足時(1994年)[2]、デ・クラーク元大統領によるアパルトヘイト撤廃宣言時(1991年)[1]など諸説あります)

 

1994年4月27日、南アフリカ史上初めて、全ての人種が参加した平等な選挙が行われ、ネルソン・マンデラ政権が発足、3月21日は「人権の日」という祝日になりました。
ネルソン・マンデラ元大統領は就任後、南アフリカ共和国内の融和・平等の推進へ大きく貢献しました。
彼の生涯の功績を称え、彼の誕生日である7月18日は国際デーに定められています。

【今日は何の日?】7月18日:ネルソン・マンデラ国際デー/Nelson Mandela International Day

<人種差別とは>

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先述した「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(通称:人種差別撤廃条約)」の第1条では、人種差別を以下のように定義しています。(日本は1995年にこの条約を批准しました[6]

 

日本語[5]
人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの

 

英語[4]
In this Convention, the term ” racial discrimination” shall mean any distinction, exclusion, restriction or preference based on race, colour, descent, or national or ethnic origin which has the purpose or effect of nullifying or impairing the recognition, enjoyment or exercise, on an equal footing, of human rights and fundamental freedoms in the political, economic, social, cultural or any other field of public life.

 

<国内外で根深く残る人種差別(一例)>

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アパルトヘイト以外にも、人種差別は世界史・日本史を辿れば様々な形態・対象のものが多くの国々で行われた過去があり、現在も残ってしまっているもの、ネット社会の発達や国交関係の悪化、コロナ禍などで新しく発生しているものもあります。

 

2020年にアメリカから広まった「Black Lives Matter」(黒人差別に抗議する運動、言葉自体は2020年以前から存在)が記憶に新しいかと思いますが、人種差別は海外で起きている問題・黒人を対象とした問題だけではありません。

 

例えば、スポーツの試合中に対戦相手やそのサポーター席から差別・侮辱的な言動や野次が飛んだり、SNSやネットニュースのコメント欄で外国人選手や芸能人などに対する差別的な投稿が横行していたり、偏見に基づく演出やフェイクニュースでメディアが差別を助長したりするなど、人種差別は世界中、日常のあらゆる場所でまだまだ根深く残り続けているのが実態です。

 

日本でも、歴史を辿れば、アイヌや琉球王国、近隣諸国に対する同化政策、士農工商・部落差別(同和問題)、ハンセン病やエイズ患者への差別など、多くの差別問題が存在し、現在まで残っているものもあります。他にも、最近顕在化してきた「ブラック校則」の「地毛証明書」の提出・黒髪への強制染髪なども人種差別の一形態といえます。

 

また、新型コロナウイルスに関連する人種差別やいじめ、ヘイトクライムも国内外で相次いで起きています。
例えば、留学先で感染源・ウイルスのような扱いを受けて暴行を受けたり[7]、母国からも「帰ってくるな」などの差別的な言葉をネット上で受けたり[8]するなど、留学生が留学先で新型コロナウイルスに関連する人種差別を受けている実態が明らかになっています。

 

日本国内でも、医療従事者・接客業・トラック運転手やその家族などが「近寄るな・帰省するな」などの排斥・差別的な言葉を受けたり、家族・親族・本人が新型コロナウイルスに感染すると、地域や学校でばい菌扱いされるいじめをうけたりするなどの「コロナ差別」が新たに発生しており、法務省などの政府機関・自治体やNGO/NPOなどがコロナ差別に対する啓発活動を行っています。[9][10]

 

その一方で、2021年2月に政財界から女性蔑視発言やそれを擁護するような問題発言が相次いだり、新型コロナウイルスで経済的に困窮している外国人留学生・技能実習生などの外国人に対する支援が遅れていたり、支援条件や内容に格差を設けたりするなど、人種差別やジェンダー平等などの「平等」に対する日本社会の理解・関心の低さが露呈する問題が相次いでおり、国内外から厳しい視線が向けられています。

 

<差別をなくすには(一例)>

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差別ともに「偏見」という言葉を頻繁に使いますが、「かたよった」「みかた」の2語から構成されているように、差別や偏見は生来(生まれつき)存在/内在しているものではなく、自分が身を置いている環境や周囲から見聞きする情報・教育などによって形成されていく、いわば「後天的」なものです。

差別問題を減らし、なくしていくには、反対の意思表示や発信などのアクションを起こす以外にも、何が・なぜ問題なのか調べたり、自分が差別的な言葉を言われた時どんな感情になるのかなどを考えたり、自分の表現や考え方などが差別になっていないか?という意識を持って生活したりするなど、さまざまなアクションができます。
全てに共通していることは「まず、問題に目を向けること」です。自分ができる、簡単なことから始めてみましょう。


できることから始めてみよう!

<関連コンテンツ>

南アフリカではなくアメリカの話ですが、マーティン・ルーサー・キング3世(中3英語教科書「NEW CROWN」(三省堂)の「I Have a Dream」で有名なキング牧師の息子さん)に関する翻訳記事・スピーチ動画も併せてご覧ください。

マーティン・ルーサー・キング三世が、若者たちに伝えたいこと

 

マーティン・ルーサー・キング3世による、WE Day(日本では下記「チェンジメーカー・フェスⓇ」として実施) ニューヨークでのスピーチ(WE本部のYoutubeチャンネル)
(2017年4月7日、全文英語ですが、画面右下の「字幕」から、自動生成による英語字幕を表示できます。)

・行動を起こした人が集う「チェンジメーカー・フェスⓇ」


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<参考・引用>