マーティン・ルーサー・キング三世が、若者たちに伝えたいこと
公民権運動の活動家のキング牧師を父に持つ、人権活動家のキング三世。
困難な状況でも希望を失わずにいることの大切さを、若者たちに訴え続けています。(清田)
https://www.we.org/en-CA/we-stories/we-day/martin-luther-king-III-on-kindness-and-his-fathers-dream
ジョージア州アトランタのとある三年生のクラスでの出来事です。
ある白人の少年がアフリカ系アメリカ人のクラスメイトを、肌の色が違うことを理由にいじめていました。
いじめられていたその少年は、白人の少年がお絵描きが好きであることに気が付き、彼の絵が上手であることを褒めました。
するとその日から毎日のように続いていたいじめは終わりを告げました。
この思い出はマーティン・ルサー・キング牧師の息子、キング三世自身の体験です。
憎悪に対する思いやりの力は、キング三世がいつも人生において大事にしてきたことです。
彼は、世界中から尊敬されるキング牧師と、その妻コレッタスコットキングの長男として、両親の遺産である思いやりと寛大な心を受け継ぐことに人生をかけてきました。
「私たちはみんな同じ人間で、世界を次世代のためにより良い場所にしていくため、ともに力を合わせていかなければいけません。」
2018年のWE Day UNの登壇の準備をしながら彼はこう続けました。
「いまだに特定の民族集団や、性別、性的指向によって差別をする人々がいることは本当に残念でなりません。」
彼は、WE Dayに参加している若者たちが立ち向かわなければいけない、祖国アメリカの現状について、神妙な面持ちで、こう話しました。
「残念ながら、私の国の大統領は、暗い方向に国を向かわせたいようです。闇は、闇で追い払うことはできません。光だけがそれを可能にします。暴力は、新たな暴力への連鎖を生むだけです。」
非暴力主義者であった父キング牧師の築いたものを、彼は生涯にわたり守ってきました。
父親が、南部での公共バス車内におけるアフリカ系アメリカ人分離を非暴力で廃止する目的で設立した、アフリカ系アメリカ人の公民権団体(SCLC) の代表を引き継いで、活動を続けてきました。その団体は、ジョージア州の州旗から南軍旗をあしらった州旗の除外の達成に大きく貢献しました。
(訳注:南北戦争の歴史的経緯から、南軍旗はアフリカ系アメリカ人への差別を容認する者の象徴とされており、人種差別を容認しないという立場を原則としている現代では、不適切なモノであるという意見が主流となってきている。)
キング三世は、父親の願いでもある、平等と人権がすべての人のものである、より良い世界の実現を心に決めています。
また、彼は、キング牧師の有名な「私には夢がある」のスピーチを心から敬愛していています。
キング牧師のワシントンでの大行進から56年が経ちましたが、最近の新聞を見ていると、いまでも、自由と平等の権利を擁護し、アメリカを一つにする必要性があることは明らかです。
キング三世の家族が何世代にもわたって戦ってきた問題の解決において、世界は大きく後退しているように見えますが、キング三世は自身の活動について前向きにとらえています。
それは、WE Dayで社会問題の解決に情熱的な若者を目にし、彼の貧困撲滅のためのチャリティ組織「Realizing the Dream」が、WE(フリー・ザ・チルドレン)の若者を含めた、たくさんの若い活動家と共にあることを実感したからです。
彼はこう言います。「私は若者の活動から未来への大きな希望を見出しています。」
WE Dayの哲学である、積極的な行動の支援と若者が社会的変化を起こすためのサポートをすることは、キング三世に慰めを与えました。
何度もWE Dayで演説を経験している彼は、参加した若者たちこそ、世界が今まさに必要としている変化の原動力だと信じています。
以前のトロントでのWE Dayで話したように、「私の父親の夢はまだ叶っていないが、今でも実現に向かって力強く存在しています。」
そして、次世代の中にも存在しています。彼はこう言います。「あなたたちは若すぎるということはありません。変化は初めの一歩から始まるのです。」
思いやりは悪に打ち勝つための重要な材料です。
キング三世は、自身の活動の影響力を理解するよりずっと前から、周りの人々や、彼の考えに反対する人たちさえ尊重し、親切に接してきました。
彼は、知り合う人たちすべてを大きな家族の一員だと考えてます。そしてこの様に言います。「思いやりは悪に打ち勝つための重要な材料です。」
彼はスピーチのため楽屋を後にする際、最後のアドバイスをくれました。
「反乱の嵐は、輝く正義が現れるその日まで、私たちの国の基盤を揺り動かし続けるでしょう。憎しみと苦味のカップを飲むことで、自由への渇望を満たすことを止めなければいけません。」
彼は今でも、いじめっ子に思いやりで打ち勝った、ジョージア州の3年生のヒーローであり、息子であり、より良い世界を実現するための希望です。
(原文記事執筆: ゾーイ・デマルコ 翻訳:翻訳チーム 池田晴 文責:清田健介)