【現地からレポート】インドのコロナ禍における深刻な状況

FTCJのインド支援事業の現地パートナー団体CCDの代表スワパンさんより、
コロナ禍における現地の子どもたちを巡る状況について連絡が来ましたので、ご紹介します。


▼COVID-19対応など政府など行政による貧困層支援、その他、NGOなど民間の支援について

インドには中央政府と、州政府があるのですが、
コロナウイルスの感染拡大に対応するため、インドの中央政府はある政策を打ち出しました。

その政策は、5kgの米または小麦と、ダル(インドの豆を挽き割ったもの)1kgを、
配給カードを持っているインドの各家庭に対し、毎月一人あたりに配給するというものです。
政府から、これ以外の支援は何もありません。

国中が封鎖されている時、日雇いの人たちはどうやってお金を手に入れるのでしょう?
人々は米だけでは生きていけません。

しかも、CCDのある西ベンガル州政府は、この中央政府の政策すら実行しませんでした。
配給カードを所持する家庭に一人当たり月5kgの米を提供する独自の救済策を実施しましたが、ダルの配給はなし。
さらに8月からは、一人当たりに提供する米を5㎏から1kgに減らしました。

 

それでも、政府による米や小麦の配給は確かに多くの命を救いました。
しかし、配給カードを持っていない多くの家庭はこの援助を受けることができません。

そこで、多くのNGO団体などが、配給カードを持っていない貧困家庭のために無料の食堂を始めました。
彼らは定期的に家庭に調理された食事を提供したり、米、野菜、食用油、石鹸、消毒剤、マスクなどを提供しています。私たちCCDも、食料配給支援を開始しました。

 

▼インドの子どもたちの置かれている現況

もし家族の誰かがコロナウイルスに感染したら、村の人々は感染を恐れ、感染者を村から追い出すでしょう。
公立病院の救急外来には空きがないので、家族は公立病院を利用することができません。
民間病院に入院する場合は、前払いで30万~50万ルピーという巨額の費用を請求されるので、
家族に大きな負担が生まれます。
国の打ち出している経済対策は、適切な人にお金が届くかどうか、保証は全くありません。

 

コロナ感染拡大に伴う移動制限によって、日雇い労働者は完全に失業状態となっています。
彼らは飢えに苦しみ、何とか生き延びるため、家事手伝いとして自身の子どもを働きに出すケースもあります。

 

都市封鎖の期間中、貧困農村地域では児童婚や少女の人身売買が横行しています。
約9ヶ月間、人々は仕事もなく、その結果お金もなくなり、家族は深刻な経済的困難に陥っています。

政府からのわずかな援助では家族の空腹を満たすことはできません。
子どもたちの飢えを満たすことができない親たちは、自分たちの運命を非難し、
子どもたちを家事労働(児童労働)に送り出したり、未成年の女の子を結婚させたりと、
愛する子どもたちを育てる義務を放棄し始めています。
事実、人身売買業者に誘い込まれていく子どもたちは、その多くが親の同意を得ているのです。

 

▼児童婚、女児の人身売買、児童労働について

いつもなら、子どもたちは日中は学校にいて、友だちと楽しい時間を過ごし、授業を受けています。
道路は多くの人や乗り物で混雑しており、道路脇の店も多くの客で賑わっています。

しかし現在は、人々はウイルスを恐れて家の中に閉じこもり、道路は閑散とした状態です。
これは、悪意のある人々にとっては、違法な活動をする絶好のチャンスなのです。

都市封鎖の長期化が原因で人々は失業し、その結果、日雇い労働者の多くが極度の貧困状態にあります。
そのような問題がある州の家庭では、子どもたちが仕事に行くことや、物乞いをすることすら許可しています。

 

コロナ禍以前には、地方の女性の地位向上のため、政府とNGOなどによって様々な取り組みが行われてきました。
地域での自助グループの形成、経済支援を通じた女性のエンパワーメント、貧困家庭の女児の学校への入学支援、貧困家庭の女性が選挙活動に参加するための女性参政権の確立のための体制づくりなどです。
村の村落会議や地区選挙に女性が立候補し当選した地域もありました。

しかし、コロナウイルスの蔓延とスーパーサイクロン「アンファン」による残酷な被害により、過去10年以上にわたって向上してきた女性の政治参画体制も台無しになってしまいました。女性たちは、年々地道に築いてきた財産が突然取り壊されてしまったのを目の当たりにしたことで、自尊心や自立心が失われてしまいました。

このような現状は、少女たちを誘惑し、家族に誤った希望を持たせ説得するのに理想的です。結果、たくさんの少女たちが、売春宿や家族との関係を断たれた農家に嫁がされるなどし、孤独な生活を強いられています。

 

▼現地の新聞新聞記事の要約を一部紹介

コロナ禍における子どもを巡る環境悪化に関して、インドの新聞記事で次のようなことが報道されています。

1)都市封鎖の期間中、子どもの人身売買の件数が増加。ある調査によると、近い将来に、子どもの人身売買の発生率が何倍にも増えることが明らかにされている。この状況を考慮して、最高裁判所長官は中央政府とそれぞれの州政府に対して通知を出した。長官はこのような違法行為を抑制するための様々な措置について、国家防災庁からの提案を求めている。

 

2)コロナウイルスによる悲惨な状況の中で、経済は崩壊しつつある。貧しい人々は自分の娘をを売ろうとするケースが増えている。ある子どもは、コロナ禍における貧困が原因で、生後間もなく売られた。

 

3)コロナウイルスとスーパーサイクロン「アンファン」は地方の貧しい人々を冷酷に襲った。家がなく飢えている人々は人身売買の餌食になりやすい。人身売買業者は村の客引きと共に未成年の少女に罠をかけ、彼女たちを売買する。西ベンガル州政府は、州の「子ども保護および子どもの権利委員会」を通じて、児童婚や児童人身売買を監視すべく地元のNGOを動員して努力してきたが、子どもに食べ物を与えることができない親は、子どもを幼いうちに結婚させたり仕事に行かせたりする傾向にある。