社会のみんなで考えたい、自閉症を抱えている人たちとの向き合い方

クレイグとマークのコラムの紹介です
https://www.we.org/we-at-school/we-schools/columns/global-voices/beyond-cure-autism/

デイビット・パッチェル・エバンスは、自身の娘さんが三歳の

頃から、「殻に閉じこもっていく」ようにみえたといいます。か

つては明るさをみせていた幼児が、以前は言えていた言葉

を言わなくなり、人と目を合わさなくなっていきました。夜中

に起きて、叫び声をあげるようにもなりました。そんなパッチ

ェル・エバンスの娘カイリーは、医者から自閉症と診断され、

施設に入れるように勧められました。
エバンスは、娘を施設に入れる選択肢ではなく、カイリーを

理解し、支援していこうという道を選択します。

 

当時は、「世界自閉症啓発デー」が誕生する10年前で、多

くの人は、「自閉症」という言葉を聞いたことすらないという

時代でした。(訳注:国連で定められた世界自閉症啓発デ

ーがスタートしたのは、2008年の4月2日から) 地元の

図書館には、自閉症について言及している本は三冊しか

ありませんでした。しかも、エバンスが望んでいたモノにつ

いて、三冊の本は一言も言及していませんでした。そこで

、エンバスは自ら資金を投じ、研究を始めたのです。自閉

症の治療法を解明することを目指して..

 

「治療法を何年もかけて探しましたが、それができなかった

時、私は挫折したように感じました」 現在、北米でフィットネ

スクラブチェーンを展開するCEOとして、カナダではおなじみ

の実業家であるエバンスはそう振り返ります。

 

エバンスは、治療法が見つからなかったことより、自分が

父親としての努めを果たせていないのではないかという自

責の念の気持ちを抱えたことの方が辛かったといいます。

 

カイリーが自閉症と診断されてから18年経った今、エバン

スは、カイリーの自閉症への理解を深め、自閉症そのもの

に対する考え方も変化していきました。その考え方の変化

というのは、この18年間の間に、エバンスだけでなく、専門

家の間でも、広がっていたものでした。それは、「治療不可

能な病気」という考えから、「68人に1人の子どもたちが、抱

えているスペクトラム障害」という考え方への変化です。私

たちは今、自閉症を、様々な症状がある「ひとつの状態(コ

ンディション)」として認識するようになりつつあります。

 

このような考え方の変化を後押ししている背景のひとつに、

「神経の多様性認めよう」と呼びかけている社会運動の進展

があります。この運動の核となっているのは、「脳が通常とは

違う働き方をしているからといって、それは脳が機能していな

いという意味ではない」という考え方です。

 

しかし、エバンスにとって、自閉症への理解を深めることは、

最初の超えるべきハードルのひとつにしか過ぎませんでした。次のステップとして、家族への支援の強化に取り組みはじめます。

「自閉症のある子どもたちの親の大半は精神的に疲れきっ

ています。彼らが必要としている支援や知識を自ら見つける

気力や、精神的な余裕を持っていないのが実情です。」と語

るエバンス。そこで彼は、ブリティッシュコロンビア州政府、自

閉症のある人たちを支援する団体などと協力しながら、自閉

症のある人と家族のためのハブをオープンさせます。

 

ハブではあらやる分野の専門家に、ひとつの窓口で相談す

ることができ、様々な症状のある自閉症の子どもたちを支援

するために、情報を得ることができます。ここに来れば、様々

な場所にいちいち行かなければならないという手間も省けます。

 

ハブの施設内の音響は照明は抑えられており、感覚過敏

の症状がある自閉症の人にも配慮した造りとなっていて、

自閉症のある人や家族にとってはオアシスであるといえそ

うです。ハブでは医療機関も受信できます。散髪もできます

。技能を習得できるキッチンや、社会性を育むことを目的と

した遊び場もあります。ハブは、コミュニケーションを支援す

るための最新のツールも装備されていて、州内の6万900

人の自閉症スペクトラムを抱える人を支援しています。

 

支援を強化するということイコール、医学的な自閉症の研

究をやめるという意味ではありません。「それは、変わるこ

とがない事実を嘆くことをやめて、前に進むという意味なの

です」エバンスは言います。「自閉症の人たちというのは、こ

の世界に、私たちも住む社会の一員と存在します。彼らは彼

らの人生を懸命に生きています。であるならば、彼らがよりよ

い人生を送れるように支援するべきなのではないでしょうか」

 

エバンスの言葉は、自閉症のある人たちを支えるのは、医

療関係者だけでなく、教師や、家族、建物を建築するデザ

イナー、そして私たち一人ひとりなのであるということを訴

えています。建物や学校を、全ての人に対する思いやりを

持って建てることがもしできたら、そして、子どもたちに思い

やりの大切さを教えることができたら、どんな状況にいる人

も、それぞれの可能性を開くことができる社会を、私たちは

つくることができるのではないでしょうか?

 

自閉症がある女の子が起こしたアクションを取り上げた過去のブログ記事

「私もみんなと同じ」:自閉症のある9歳の女の子が行ったスピーチ

 

清田からのコメント

 

今回のコラムのテーマは、自閉症でした。自閉症は、言葉

の発達の遅れや、感覚過敏など、人によって様々な症状

があります。今のところ、自閉症の原因は明確には分か

っていません。コラムに出てきた通り、治療法はありませ

ん。自閉症の当事者の人や家族が、様々な困難を抱えな

がら生きているというのは、紛れもない事実です。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg3288.html

 

その一方で、その違いを、強みにしているという自負を持

って生きている人がいるのもまた確かです。

 

動物学者のテンプル・グランディンさんは、言葉で考えるよ

りも、絵で考えることの方が得意という特徴があります。グ

ランディンさんの場合は、この特性を活かし、動物のための

家畜施設の設計などに関わってきました。グラディンさんは、

「自閉症のように、脳の機能の仕方が異なる人々の特性を、

いろいろな分野(例えばデザインなど)で活かせるような社会

をつくるべきだ」と訴えています。
https://www.ted.com/talks/temple_grandin_the_world_needs_all_kinds_of_minds?language=ja#t-713584

 

また、アーティストのロージー・キング:さんは、自閉症がある

ところの良いところとして、「想像力が豊かであるところ」と表

現しています。その想像力に引きずられて、周りが見えづら

くなって、体が動いて歩き回ってしまうようなことがあったとも。

また、ロジーさんは、発語の無い重度の自閉症の弟がいること

から、「自閉症をひとつの型にはめることはできないし、そもそも

、人を一つの型に当てはめることはできない」と訴えます。

https://www.ted.com/talks/rosie_king_how_autism_freed_me_to_be_myself?language=ja#t-195048

 

元々、自閉症は「稀な病気」とされていましたが、この20年

程で、自閉症の定義が広がったこともあり、従来は知的障

害があって発語の無い人だけを差していたのが、知的な問

題はなくても、コミュニケーションに困難を抱えている人も含

まれるようになります。そのような動きの中で、当事者の人

たちなどから、「自閉症を病気ではなく、多様な脳のひとつ

のあり方として認めよう」という声が出てくるようになります。

これが、コラムにも登場する「神経の多様性」という考え方が

出てきた経緯です。(下記の動画で、詳しく解説されています)
https://www.ted.com/talks/steve_silberman_the_forgotten_history_of_autism?language=ja#t-737788

 

現在、FTCJでも、視覚障害者支援事業を行っていますが、

(https://readyfor.jp/projects/ftcj_phspd) 障害のある人た

ちの可能性を本当に閉ざさない社会をつくっていくためには、

バリアフリーや設備の充実というのは一つの手段にしかすぎ

なくて、違いや困難を認識しつつ、ひとりひとりの可能性を、い

ろいろな生き方を通じて開くことができる社会をつくっていこうと

いう考え方を、社会で共有していくことが、必要なのかもしれま

せん。(特に自閉症のような障害の場合、設備だけでは解決で

きない問題も多いので、、)それは非常に面倒くさいことかもし

れません。でも、そういう面倒なことを引き受けるために社会

ってあるのかもしれないです。みなさんはどう思いますか?