インド・ラジャスタン州-村の自立を応援するプログラム-
ラジャスタン州の村の抱える課題と支援
私たちはインドのラジャスタン州にある地域と連携し、地域の自立支援プログラムを行っています。
この地域の村はどの町からも離れていて、他の村からも孤立しているため、村人は独自の文化や慣習に従って暮らしています。もともとはカースト制度も持たない地域だったのですが、インド社会全体のカースト制度導入によって、職業や政治的な面で色々な区別が生まれるようになり、村人たちは少数民族として暮らしていたために、低い階層と位置付けられ差別されるようになりました。村人の多くはこういった現代社会の変化への対応にとても苦労しています。
ラジャスタン州は、環境や経済、社会的にも様々な問題があります。インド、特にラジャスタン州では、女性の識字率は大変低く、性差別の問題は深刻です。そして児童労働に従事している子どもたちもたくさんいます。
経済状況
この地域の村の主な産業は、農業です。トウモロコシ、小麦が主に生産している作物ですが、この地域はとても乾燥しているため栽培は雨季のみに限られます。これらの作物は村の中のみで消費されてしまい、外の市場に売って収入を得られるほどの収穫がないのが現状です。
そして、雨が降らない時期は牛を育てて家計をやりくりしますが、これだけでは生活ができないため、多くの村人が町へ出稼ぎに行っています。出稼ぎに行く 人の多くは、ウダイプールの町の工場や工事現場、コットン畑やその他の農作物の収穫など肉体労働に従事しています。 また、村の中で政府の開発事業(道路建設)などの仕事をする人もいます。
その他に、違法とされているお酒の製造に関わっている村人もいます。このお酒は町で高く買われ、村の大きな収入源となってしまっています。
児童労働の現状
男の子は12歳くらいになると、町へ出稼ぎに行きます。
多くは工場で働いたりや店の清掃、レストラン店員、工事現場などで働いています。子どもの給料は とても低く、また仕事は過酷です。そしてほとんどの場合は家族と引き離されて暮らさなければなりません。村の子どもの2人に1人はこういった児童労働に従 事しています。
また、女の子は12~16歳くらいで結婚することが多く、結婚の印である鼻輪をつけた若い女の子たちが村の工事現場で働いているのは、よくみる光景です。女の子は、結婚もしくは小学校を終えたら、家計を助けるために家事手伝いとして毎日働くのは当たり前とされています。
“男女に関わらず働き手が必要”とはいうものの、実際には女の子が先に学校をやめさせられ、働くことを求められることがほとんどです。多くの女の子は小学校4年生までで学校を中退し、働くか兄弟の面倒を見なくてはなりません。
雨漏りでカビが生えてしまった教室
教育の課題
この地域の村の多くは、学校の校舎や、教師の不足などが課題で
す。そのため、遠くの学校まで歩いて通わなければいけない状況がありました。卒業する前にドロップアウ
トしてしまう子どもが大勢います。学校があっても、教室や先生の数、教科書、机、椅子などの設備が整っておらず、教育の質がとても低いのが現状です。そういったことから、親たちの中には「こんな学校に子どもを通わせるのは時間の無駄」という意見も多く、子どもを学校に行かせず家の手伝いや仕事をさせているという家庭も多いのです。
地域の水・衛生面・医療の課題
学校に併設されたドアのない古いトイレ
交通の便が良くない支援地域では、近くに病院やクリニック
が少ないことから、村人は十分な医療サービスを受けることがなかなかできない状況です。
インド伝統のアーユルベーダやハーブなどを使った治療法を知る村人もいないので、近代的な医療に頼るしかありません。そのため、村人が何か病気にかかったり、工事現場で事故にあったりした時は、バスに乗って遠くの町の病院まで自力で行かなくてはならないのです。村では特に、アルコールによる病気や不衛生な環境によって皮膚病などにかかる人が多くいます。また、汚染された水によって、感染症にかかり下痢などにより健康を害し、慢性的な栄養失調になっている子どもたち、中には命を落としてしまう子どもたちがいます。
支援のかたち
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、現地のパートナーNGOを通じて、5つの柱「教育・水や衛生・保健・農業・収入向上」を軸に、支援地域が抱えている課題を解決するために、地域の人々とともに、開発事業を行っています。
●教育の課題解決:
学校の校舎が足りない地域や、校舎があっても設備が不十分な場合は、新しい校舎を建設し、子どもが安心して楽しく学べるよう、明るく衛生的で機能的な学校づくりを行っています。また、先生が足りない地域では、先生の研修を行い、質の良い先生の育成と派遣を地域とともに取り組んでいます。更に、教材や学校の備品(パソコンの設置を含め)の提供を必要に応じて行っています。その他、女の子は結婚して家に入るから教育は必要ないと考える親世代の村人に対して、子どもの教育の権利や女の子が教育を受けると、その女の子から生まれる子どもの死亡率が下がり、健康的に子どもが暮らせるようになるというデータを紹介しながら、子どもが学校で学べるような啓発活動を行っています。
●水や衛生の課題解決:
この地域は半砂漠地域と呼ばれるほど、降水量が少なく慢性的な水不足に陥っています。きれいな水は、健康な生活をおくるうえで欠かせません。地域には水道がなく、トイレも家庭にありません。そこで、井戸の設置や、水ポンプやトイレを学校に設置して、学校に子どもたちが来やすくしています。豊かな収穫につなげるために、灌漑用水の設置なども行っています。
●保健の課題解決:
トイレやきれいな水へのアクセスができないことから、寄生虫による感染症や体調不良に悩む子どもも少なくありません。母親は家の中で料理をして煙を吸い込み肺の病気になっているケースもあります。そこで、地域と連携して、地域に母子健康センター(幼児教室)を設置し、定期的に保健スタッフが母子の健康のチェックをしたり、健康的な子育てのためのセミナーや栄養剤、寄生虫駆除薬を子どもやお母さんに提供しています。また、学校を建設すると生徒たちに給食を提供できるようにすることで、家庭での食事があまりとれない貧困家庭の子どもでも、学校で食事をとれるようにすることで、学校に来ることを応援し子どもの栄養不足を改善しています。
●農業・収入面の課題解決:
支援地域の村びとが農作物を効率的で持続的に収穫できるよう、研修をしています。特にお母さんたちに対しては、お母さん自身が収入を得られるようにするためのセミナーを提供しています。例えば、ヤギを提供し、お母さんたちがヤギを育て、繁殖できるようにしたり、乳をとれるようにするための研修や、家畜飼育学習会を開いています。また、お母さんたちのヤギの飼育に関する自助グループを結成し、村のお母さん同士で助け合える仕組みをつくり、グループの運営の仕方についても伝えています。そうすることで、子どもの労働に頼らず、お母さん自身がヤギを売ったり育てることで収入をえられるようにします。ヤギの乳で健康的に家族が暮らせるようにすることも伝えています。
支援レポート
⇒ 2009年Monkey Majikさん協力によるインドの学校建設チャリティーコンサート開催!
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ケースストーリー
9才のマンジュは、フリー・ザ・チルドレンが建設した学校に通う生徒の1人です。学校の先生から刺激を受け、将来大人になったら自分も学校の先生になって村をを助けたいと思っています。
マンジュは毎朝6時に起き、大好きな学校へ通います。好きな科目は英語。ライティングやリーディングの教科も好きです。
10時に学校の給食室で用意されたランチを食べて、休憩をします。 学校はお昼で終わり。しかし、お友達とたくさん遊ぶ時間はありません。なぜなら、午後は勉強と両親の農場で牛の世話のお手伝いをするからです。夕方は水くみに行き、火おこしをして、夕食の準備を手伝います。
前は水を汲みに数キロ離れたところまで歩き、重い水がめを一人で運んでいました。それが一日かかってしまうこともあったので、学校にいけないこともありました。しかし今は近くで水を汲めるので、学校に行きながら家族のお手伝いをできるようになりました。
夜7時、みんなでご飯を食べます。お家の掃除をしながら、兄弟にどんな日だったかを聞くのが日課です。ごはんの後も、少し時間があれば、勉強をして、9時30分には就寝します。
レイ村で学校建設や井戸建設ができたことで、マンジュは学校にいき、教育を受けられるようになりました。現在もマンジュは学校の先生になるため、夢を追いかけています。