カナダの先住民イヌイットの活動家が、「気候変動は環境問題ではない」と訴える理由
クレイグのコラムの紹介です。
シェリア・ワット=クロウティアは、気候変動を「環境問題」と考えたことはありません。
「人に関わる問題」と考えた方が、しっくりくるのです。この65歳のイヌイットの活動家は、2000年代初頭、「気候変動は人権問題である」という考え方を提唱し国際的な注目を集めた先駆者のひとりです。
この考え方を提唱した背景には、気候変動によって、イヌイットの文化と伝統が脅かされているということへの危機感がありました。ワット=クロウティアは、イヌイット国際議会の会長を3期務め、2007年にはノーベル平和賞にノミネートされました。
北極圏の気温が史上最高を更新し、気候変動活動家のグレタ・トゥーンベリが国際的な注目を浴びるなか、カナダでも洪水や火災によって土地が失われています。
ワット=クロウティアのメッセージは、そんななかで重みを増しています。
今回は、ワット=クロウティアに、「次世代への希望」や、「寒い環境で生活する権利を守ることの重要性」などについて聞きました。
気候変動は、イヌイットの人たちの権利の行使にどのような影響を与えていますか?
私たちにとっては、気候変動は、「ただの環境問題」ではありません。生き方を左右する問題なのです。
主に、健康と暮らしの質が大きな影響を受けます。大気汚染によって、食糧は毒まみれになっています。
気候変動によって収穫の生業にも大混乱が生じています。
氷の状態の予測が不可能になったことで、狩りの伝統を失いました。家計も大打撃を受けています。
これまで採取してきた食糧を確保するために、より時間をかけなくてはいけなくなりました。
先祖代々でのやり方はもう通用しないのです。あらゆる方面に影響が出ています。
最近講演活動がお忙しくなってきったそうですね?
この半年で講演がの依頼が一気に増えました。
地球で異常事態が起こっているということが、日に日に明らかになっているからでしょう。
世界中の人の暮らしやいのちが、気候変動に影響を受けています。火災とか日照りとか洪水とかね。
このようなことが起こる予兆は、もう20年くらい前から実はありました。
その予兆の最前線にいたのが私たちイヌイットだったのです。
いまは、それを世界中の人が経験する段階に入ったということでしょう。
フランスのテクノ・ミュージック・フェスティバル“We Love Green,”でもお話になったとか?
元々、ル・モンドのインタビューを受けるだけの予定だったのですが、主催者の方から「若い人が大勢いるので、ぜひアクションを起こすよう呼びかけて欲しい」と言われて。
それで、「気候変動は全てにつながっている」という話をしました。
その時、若者によるムーブメントが起きているんだということに気づかされました。
グレタ・トゥーンベリとか、いろいろな子たちが動いているようですけども。
まあとにかく、若い世代がアクションを起こそうとしているということに希望を感じています。
この記事の読者に、一番理解して欲しいことは何ですか?
北極圏の氷と、あなたがどのようにつながっているのかを考えてみて下さい。
「北極圏で起こったことは北極圏では終わらない」のです。
北極圏で起こることは地球全体で起こるのです。
北極圏は世界のエアコンです。そのエアコンがいま、壊れているのです。
極寒の地で生活している人たちが、氷が解けることでどんな影響を受けているのかを聞いて下さい。
健康にどのような影響が出ているのかを聞いて下さい。気候変動が日々の暮らしに与えている影響を聞いて下さい。
そうすれば、たったひとつの地球がいかにもろいのかを知ることができます。
そうすれば大切にしようという気持ちも生まれるでしょう。北極圏を守ることができれば、地球も救えるはずです。
イヌイットの、「寒い環境で生活する権利」を守ることは、すべての人が良好な環境で生活する権利を守ることにつながるのです。
参考リンク
グレタ・トゥーンベリについて
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5cd0ef1fe4b0e4d757372977