圧倒的な力強さを持つ 子どもメンバーのスピーチを紹介①
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの代表の中島早苗です。
目黒区で3月に虐待の末に死亡したとされる、わずか5歳だった結愛ちゃん。報道を聞くたびにつらくなり、心が痛くなる事実が次々と明らかになり、何とかならなかったのだろうか・・・と思わずにはいられない。
この悲劇を繰り返さないためにも、子どもの権利を守る活動をする団体として、お母さん、お父さん、子どもたち、子どもの周りにいるすべての人に「子どもの権利」について伝えていきたい、と今まで以上に一層強く感じています。
昨年11月にNPO法人国際子ども権利センター(シーライツ)設立25周年記念イベントで、「あらゆる暴力から子どもを守るには」をテーマに、フリー・ザ・チルドレンのメンバーの小学生と高校生のふたりがスピーチをしました。子どもとして、主権者として、声をあげた彼らの力強いメッセージを紹介します。
*********
こんにちは。私は小学5年生の坂口くり果です。フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの子どもメンバーです。
私が「子どもの権利条約」を知ったのは、今年、5年生になったばかりのときに参加したフリー・ザ・チルドレン・ジャパンの「テイク・アクション・キャンプ」でした。このような条約が作られるということは、条約が必要なくらい幸せではない子どもがたくさんいるのだ、と思い、強いショックを受けました。
みなさんは、今、日本は平和だと思いますか?
「特に戦争もしていないから平和だ」と思っていらっしゃるかもしれません。しかし、平和とは、「戦争がない」だけでなく、私たち一人ひとりが幸せに生きることなのだと、私は考えます。
私たちはよくこんなニュースを耳にします。「これは教育だ」といって、学校の先生が叩いたり殴ったりひどい言葉を言ったりして、子供が学校に行けなくなった、とか、「これはしつけです」といって、親が子どもに殴ったり蹴ったりして子供が死んでしまった、など。
これでは幸せと言えるでしょうか。だから、私は日本は「本当の平和」ではないと思うのです。
私たち子どもは、学校に行ったら先生からたくさんのことを学びます。そして、いつも私たちを見守り、導いてくださり、大好きで尊敬する存在です。その先生が、教育だと言って、殴ったり、ひどい言葉を言っても、「自分が悪いから仕方ない」と思います。けれども、それが続くと、学校に行くのが辛くなります。誰かに話したくても、信じてもらえないかもしれないので、たえるしかありません。
私たち子どもはお父さんやお母さんが大好きです。悪いことをして、叱られることもたくさんあります。でも、お父さんやお母さんが大好きです。だから、しつけだと言って、叩かれたり、ひどい言葉をぶつけられたら、ほんとうに悲しいし、親から認めてもらえない自分がどんどんきらいになって、自信が持てなくなっていきます。それでも、お父さんやお母さんが大好きだから、誰にも言えず、毎日がつらくなったりします。
私たち子どもは、学校や習い事などで、いじめにあうこともあります。たたかれたりするいじめもあれば、言葉で傷つけられるいじめもあります。いじめられても、親に話したら、先生に連絡がいき、先生はいじめた子を呼んで注意するかもしれません。
しかし、そうしたら、いじめた子はおこって、またさらにいじめるかもしれないので、なかなか親や先生に話せないのです。また、誰かが見ていても、かかわると、自分もいじめられるかもしれないから、知らん顔をすることが多いのです。友だちからいじめられたら、友だちを作ることがこわくなります。いじめをしていた友だちは、明日はいじめられる側になるかもしれません。
親や先生からの体罰やぎゃくたい、子ども同士の暴力やいじめ、そして、「見ないふり、知らないふり」をするということも暴力のひとつだと私は思います。私たち子どもは常にいろいろな暴力にさらされているのです。
親や先生からたたかれたら、心から反省しますか?
私なら、きっと、言うことを聞くと思います。しかしそれは、こわいからです。そこに、愛やぬくもりは感じません。暴力をふるわれると、最後は暴力をふるってもいいのだと私たち子どもは覚えます。暴力は暴力を生むのです。
私たちがほしいのは、「教育」や「しつけ」という言葉にすり替えられた、支配や暴力や暴言ではなく、愛され、大切にされることです。
ひとりでもこの世の中に、自分のことを大切に思い、話を聞いてくれる人や場所があれば、心が救われ、安心し、勇気がわきます。勇気がわけば、自信を持って、いろいろなことに立ち向かっていけます。
それは決してよくばりなことではない、当たり前の権利なんだよ、と知ってほしいです。私たち子どもが、傷ついたり傷つけたりしないように、未来が、絶望ではなく希望に輝くように、大人も子どもも、この権利を知ることが必要なのだと私は思います。
では、どうすれば多くの人に知ってもらうことができるでしょうか。
私はこの間、インフルエンザの予防接種に行きました。待合室で、母と母子手帳を見ていた時、「もしこの母子手帳に、子どもの権利がのっていたら、命が始まった時からお母さんが子どもの権利を知るようになり、悲しい子どもは減るのではないか」と思いました。なぜなら、母子手帳は日本のすべての子どものお母さんがもらうものだからです。
想像してみてください。今この部屋は真っ暗です。私たちは一本のろうそくを持っています。ともしびを私が最初の人にともします。その人はまたとなりの人にともしびを分けます。となりの人に、となりの人に、どんどんともしびはついていきます。そして、部屋はどんどん明るくなっていきます。
子どもが暴力から守られ、安心して幸せに生きる権利が、ひとり、またひとりと伝わっていき、子どもの生きる世界がどんどん明るくなっていくことを私は願います。これは、私たちこどもにもできることです。
私が今このように話をしていることも、子どもの権利のひとつだからです。
最後まで聴いて下さり、ありがとうございました。
***
▼国連子どもの権利委員会に、子どもの声としてくり果ちゃんの提案を届けました!
坂口くり果ちゃんがスピーチで提案した、子どもを暴力から守るためには、「母子手帳(母子健康手帳)」に子どもの権利条約を掲載したら良いというアイデアは、素晴らしい名案だと思いました。
活動を通して、子どもの権利条約の内容を知っている子どもやおとながあまりに少ないといつも私たちは思っていました。子どもの権利を伝えるのは国の義務であり、おとなの責任です。
これから親となる人が子どもの権利を知ることで、子どもを育て接するときに子どもを主権者として、人間として尊重していくようになるかもしれません。また、自分の子どもに権利があることを伝え、親子で権利について考える機会を持てるかもしれません。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、坂口くり果ちゃんの提案を子どもの声として今年の1月に国連「子どもの権利委員会」に届けました。(後日より詳しく、別のページでご報告します)
今後は、日本国内で、各自治体や、厚生労働省に対して、母子健康手帳に子どもの権利条約が掲載されるよう、働きかけキャンペーンを展開していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
中島早苗