【コラム】 フェア・トレードを通じて貧困と闘う、プレダ基金の取り組み

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのパートナー団体であり、フィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、シェイ・カレン神父が執筆したコラムをご紹介します。

 

 

妻Conchitaと共に暮らすPepito Alvarez(57歳)は、フィリピンのルソン島山間部に、自給自足で暮らす農家です。この島の農民たちの日々の暮らしは、一般的に貧困線を少し下回るレベルにありますが、サンバレス山脈に暮らす村人は、Pepito一家を含めて貧困線を上回るレベルでなんとか生計を立てています。マンゴーの収穫があれば、村人たちは、マンゴーのフェア・トレードを通じての売買のお陰で、かなり良い暮らしができます。

 

これは、プレダ・フェア・トレード・プロジェクトによるものです。しかし、ここ2年間、マンゴーの不作が続いています。これは、自然の周期によるのかもしれないし、気候変動やマンゴーの開花期に降った季節外れの雨のせいかもしれません。

 

「『Bahala na』(タガログ語で「仕方がない」という意味)。これは、自然のやることで、受け入れざるを得ません」と、Pepitoは言います。村人らは、厳しく、容赦のない現実をそのまま受け入れています。その上で、野菜や現地の救荒作物である、camoteと呼ばれるサツマイモの植え付けに、いっそう励んでいます。しかし、それでも貧困から彼らは、一生解放されず耐え忍んでいます。水道や電気も無く、インターネットともほとんど縁の無い状態で、日々の暮らしを営んでいます。彼らの知っている唯一のテクノロジーは、村のみんなで共有する旧式の携帯電話器だけです。村人たちは、電源スタンドまで歩いて山を下り、携帯の再充電に行っています。

 

この村の人たちは、アエタ族という先住民の一員です。彼らは、生き抜く知恵を持っており、おそらく3万年ほどを生き延びてきた経験を持つ人たちです。彼らは、カヤやニッパヤシの葉で葺いた屋根付きの小さな竹組の家に住んでいます。このような家は台風に耐えられる住居ではありません。彼らは、かつては狩猟・採集民でしたが、鉱山会社や木材会社の乱伐によって熱帯雨林が失われたため、今では自給的農業を営むようになっています。

 

現在、プレダ・フェア・トレード・プロジェクトは、集落内に何カ所かの共用トイレを設置するため、セメント、軽量ブロック、鋼材など、トイレ設置に必要な資材すべてを、村人たちに提供しています。いくつかの村でのプロジェクトでは、貧困で余裕が無く、農作業ができず収入確保が困難な場合、村人にトイレの設置の事業に従事してもらい、その労働賃金を払うといったようなこともしています。

 

集落にトイレや井戸を提供するというプロジェクトは、8つの村で進行中です。これまでに、8カ所のトイレ、5台の手押しポンプ、井戸から汲み上げたきれいな飲み水を給・配水する鋼管を備え付けました。これらの村では、汚染水に起因するコレラ、その他の病気を避けられるでしょう。

 

この一連のプロジェクトは、ピコマンゴーを公正な価格で売買するフェア・トレード事業と並行して、村人の収入確保を確実なものにするために行われている事業です。フェア・トレード・プロジェクトで収穫されたマンゴーは、ドイツに輸出されて、加工され、オーガニックマンゴーピュレ-になって、様々な食品製造に使われています。近年は、農民組織を通じて、有機農業農産物という認定も受けています。村のマンゴーはドイツの権威ある認証機関、Naurelandにより、有機栽培農産物であると認証されています。フィリピンで初めて認証を受けたオーガニックマンゴーです。その販売収入は、農家の助けとなるだけでなく、性的虐待を受けている子ども達や外国人小児性愛者とそれに手を貸すマフィアに搾取されている子どもたちを助けることにも役立っています。

 

アエタ族の農民たちは、苦難や貧困に直面しても、立ち直る力を持っています。近年は、経済成長のおかげで、370万人にも上るフィリピン人が、極貧状態から脱しています。しかしながら、極貧状態にある人々は、まだ510万人もおり、多くが、貧困線を大幅に下回っています。これは受け入れがたいことです。豊かなこの国で、いかなる貧困も容認されるべきではありません。しかし、なお、数百万の人々がこの豊かさの恩恵にあずかっていません。彼らは、農村部の村や都市部に広がるスラムでひどい貧困状態にあります。

 

Pepitoとその妻Conchitaを含めて村人達は、マンゴーの実を地面に落ちるままにして、豚や子ども達に食べられてしまう時がありました。Pepitoの話によると、「自分が町に行って、収穫したマンゴーを地元の業者に売ると、彼らは、私にキロ当たり4ペソ(約8円)しか払ってくれませんでした。私たちは、それでは暮らしていけません。それで、マンゴーを収穫しなかったのです。しかし、プレダのフェア・トレードは、私たちに、より高い公正な価格とキロ当たり2ペソのボーナスを提示してくれました。今では、マンゴーの実を残らず収穫します。」

 

富める者と貧しき者との格差は、2017年時点でも依然として存在し、さらに拡大しています。フォーブズの長者番付によると、この年には14人のフィリピン人億万長者がいました。これは、世界の億万長者の間に認められる「富める者がますます富んでいる」という現在の世界的な傾向に合致しています。国際支援団体オックスファムによる最近の報告書の見出しは、「1%の富める者が、昨年1年間に生み出された富の82%を手にする一方で、最貧の人たちの半数は何も得ていない。」というものでした。この報告書は、実に37億人もの人々が、自分たちの富をなにも増やしていないということを示しました。いわゆる、「お金持ち」が富を稼いだということです。

 

この報告書で、オックスファム・インターナショナルの上席役員であるWinnie Byanyimaは、次のように述べています。「億万長者ブームは好景気を示すものではない。むしろいまの経済の仕組みに欠陥があり、上手く機能していないということを示している。私たちの衣服を作り、電話機を組み立て、食料を生産する人々が、低価格品の安定供給のために搾取される一方で、会社や億万長者の投資家たちの利益がどんどん膨らんでいる」

 

Pepitoとその妻Conchitaは、搾取される側にいます。彼らの作るマンゴーに、より高い代価を支払うというフェア・トレード・プロジェクトは、大きな助けになりますが、充分ではありません。気候条件が良く、収穫ができれば、それは彼らの生活を改善する助けとなるものの、彼らはもっと多くの収入を必要としています。それには、政府の介入が必要です。つまり、「国家規模で成長する経済から生み出された富を少しでも良いから分配せよ」ということです。国家の経済成長の恩恵を、一部の人だけではなく、国民全体で享受できるようにするべきです。

 

(翻訳:翻訳チーム 山下正隆 文責:清田健介)

カレン神父と、プレダ基金の子どもたち

 

 

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