クレイグがふりかえる2010年代:次の時代に向けて、考えてみたいこと
クレイグの2019年最後のコラムの紹介です。
2010年代が終わりを迎えようとしています。
現在と別れを告げ、歴史の1ページとして刻まれるのです。
この年代で私たちは、平和的に行われていたシリアでの抗議活動が内戦を引き起こし、世界的な難民危機を引き起こす様を見てきました。
目に見えぬアルゴリズムが、タイムラインを、分断や陰謀論をまき散らすコンテンツで埋められていく様を見てきました。
気候変動に抵抗する闘いで若い世代が団結する様子も見てきました。
「ミレニアム開発目標」は、「持続可能な開発目標(SDGs)に引き継がれていきました。より多くの人が貧困から抜け出していきました。
Black Lives Matterや、#MeTooなどの社会運動は、これまで長期に渡って無視されてきた社会の不正義の問題に光を当てました。
年末だしこうやって感傷的になるのも悪くないですが、私は別に懐かしさに浸りたい訳でも、21世紀初期の時代のハッシュタグを独占したトピックをふりかえりたい訳でもありません。
過去は、未来への手がかりとなるものです。
新米の父親として、この年代に起きた社会問題や進歩が、今後の若い人たちの人生にどのような影響を及ぼすかを注視しているのです。
2010年代は、こころの健康の問題に関する語り方や、社会での扱い方に地殻変動が起きた年代でした。
根強い偏見が残ってはいるものの、確実に弱まってきています。
多くの有名人が自身の苦しみを語り、職場のこころの健康に関する支援も整備され、不安障害やうつ病と向き合うことを助ける、VRやテレビゲームも登場しました。
2010年代は、こころの健康やウエルネスについて考えることが社会で一般化した年代として記憶されるでしょう。
不安障害に苦しむ子どもたちが増え、大学生の自殺率が上昇しているなか、これは対応待ったなしの問題でもあります。
私たちはこの問題にようやく光を当てました。
今後は、痛みを抱えているすべの人たちを助ける環境を整えていくという課題に取り組むべき時となるでしょう。
デジタルのテクノロジーの分野も、史上例のない変革を遂げました。テック企業による違反行為やスキャンダル、その現状を踏まえた法整備の問題など、プライバシーとデータに関する議論が活発化しています。
しかしながら、インターネットの未来がどうなるかについては、まだ答えが出ていません。
若い人たちは、以前よりもテクノロジーを取り巻く環境についての理解を深めており、個人情報を晒すことに消極的になってきています。
若い人たちは、企業によるマイクを通じた盗聴行為や、アプリを通じた行動の追跡に対して、抵抗感を示すようになってきています。
インターネットは、基本的には社会の真の民主化に大きく貢献したツールであると考えています。その一方で、インターネットの欠陥が、意見の異なる人たちとの対話を閉ざし、分断をもたらしているのも確かです。
その分断が、ネットの外の世界に波及する危険性が高まってきているように感じます。
最後に働き方の問題について話しましょう。
2010年代は、ギグエコノミーが台頭し、若者の働き方も大きく変わりました。
その一方で、「何のために働くのか?」という根本的な問題について、革命的な考え方の変化が起きつつあります。
「利益よりも、事業としての目的意識を重視する」という考え方です。200社近い世界的大企業の重役が、世界をより良くするために事業を行うという宣言に賛同しました。
具体的には、サステナビリティ-に配慮した事業を行い、地域社会に貢献し、多様性を育み共生社会を目指すというものです。
これは、ここ数年社会貢献を重視する職場で働きたいと考える若者が増えていることや、消費者がブランドについて社会的責任を強く求めている最近の傾向とも合致します。
大企業が社会問題を解決するために人材や資本を投入すれば、世界の深刻な問題の解決の実現のスピードが大幅に早まると思います。
こころの健康について気兼ねなく話せるようになること、データやプライバシーの問題は人権問題だという意識の高まり、企業が社会をより良くするための事業に本腰を入れることなど、この変化が引き続き続いていくことを願っています。
来年は2020年。新たな年代が、いよいよ幕を開けます。
よいお年をお迎え下さい!
参考リンク
テック企業による行為が問題となった例(Facebookのデータ不正共有疑惑)
https://www.bbc.com/japanese/43650517
プライバシーに関する法整備(カリフォルニアの例)
https://news.livedoor.com/article/detail/17578730/
プライバシーの意識が高まっている若者たち
https://career.joi.media/trends/2019/07/21/10688/
ギグエコノミーについて
https://innovation.mufg.jp/detail/id=293
地域や社会を重視することを宣言した大企業
https://www.sustainablebrands.jp/news/os/detail/1193596_1531.html