社会の生理への偏見を払拭するするために活動する若者たち

まだまだ世の中でタブー視されがちな生理の話題。

今回ご紹介するロンドンの若者たちは、その状況を変えようとしています。(清田)

https://www.we.org/en-CA/we-stories/local-impact/secondary-school-students-fight-to-remove-cultural-stigma-around-womens-periods

 

 

 

 

 

ケルムスコット中等教育学校は、グレーのスカートとズボン、ブレザーにパリッとした白いシャツを身につけ、縞模様のネクタイをした生徒であふれています。

ケルムスコットの制服は完全に普通で、イギリスの他の学校の制服とほとんど同じです……細かい点1つを除けば。

その違いとは、全校生徒が8センチほどの赤と白のロケット型の物体を身につけていることです。その物体はアクリルの布でできていて、下から細い糸がぶら下がっています。

 

それはすぐに目につくものでありながら、何であるかを理解するには少し時間がかかります。

 

それはタンポン型のバッジで、このロンドンの北東にある学校では少しだけ珍しいことが起こっているということの印です。

 

他の学校では女子生徒がトイレに向かいながら声をひそめてナプキンやタンポンを忘れた話をしますが、ケルムスコットでは生理用品に関することや女性の健康の重要性への理解が隠されることはありません。

 

生理に関する話をタブーとする風潮は、WE(フリー・ザ・チルドレン)クラブの意志の強い若者たちによって一掃されました。

ケルムスコットの生徒たちには生理の貧困に対する理解があります。生理の貧困とは、生理用品を手に入れられないことやそれによって女の子や女性が直面する問題のことです。

 

WEクラブのリーダーのパム・エレイラとサラ・デンプシーが話し合いの中で初めて生理の貧困を話題に挙げたとき、きまりの悪いクスクス笑いが広がり、多くの生徒が顔を伏せました……もっとも、恥ずかしがっていたのは女子だけでしたが。

部屋にいた男子生徒たちは突然靴ひもをいじり始め、女子生徒たちの顔は火照って赤くなりました。

 

しかし、彼らはすぐにこの社会問題を理解しました。

不快な笑いはやみ、生徒たちは正義感にあふれたいらだちを見せました。WEクラブは2つの問題にねらいを定めました。

1つは生理用品が手に入らないこと、もう1つはスティグマによって女子が生理について話せなくなってしまうことです。

「生理は気持ち悪いものではなく、膣は汚くありません。しかし、生理に関することが隠されるとき、私たちが生理について話せないと思うとき、私たち女子は孤独を感じるのです」10年生のジョージアナは、そう強く主張します。

 

 

 

生理の貧困は、世界中の何千万人もの女性や女の子を取り巻く問題です。

生理の貧困によってたくさんの女子が健康上の危険にさらされ、学校を休まざるをえなくなり、社会参加を阻まれています。

イギリスでは生理用品に贅沢税が課せられているため、10%もの女子がタンポンやナプキンを買うのに苦労し、毎年135,000人以上が生理用品を手に入れられないために学校を休み、21歳未満の女子の半分が生理に関連して恥ずかしい思いをしたことがあると答えています。

 

これらの数字を少しでも改善していこうと、WEクラブは啓発活動を始めました。

偏見を持つ単語を何度も繰り返して言うことでその力をなくそうとしたのです。

繰り返し口に出すことで、重みのある言葉の持つタブーはなくなり、普通のものになっていきます。

 

生理。月経。生理。せいり。

 

 

WEクラブのメンバーが膣、生理、タンポン、月経といった単語を口にすればするほど、それらの言葉の重みはなくなっていくようでした。まるで魔法のように。

 

言語学ではこの現象は意味飽和と呼ばれています。

単語が何度も繰り返されることによってその意味が失われていくように感じられる現象です。

ケルムスコット中等教育学校の生徒にとって、この現象を利用することは、生理を普通のものにするための武器のようなものでした。

そしてさらに、会話のきっかけもなる指の長さほどのタンポン型バッジが登場しました。

 

そのバッジは生徒たちの持っていた偏見をなくしていきました。

タンポンはかつて隠されるべき存在でしたが、今ではタンポン型のバッジがほとんどすべての生徒と先生の服につけられ、誰もが見るものになっています。

 

「私たちは1人ではありません。私たちはみんな一緒に闘っているのです」

 

ジョージアナは、同じく10年生でWEクラブに所属するルジリヤ、サブリナ、ジーニナと一緒に、ロンドン市の学校向け補助金による資金援助を得て700個以上のバッジを作りました。

それらのバッジは、レッドボックスプロジェクト(生理用品を学校に提供することを目指す全国規模の運動)に募金をするために販売されました。

バッジを売る準備ができると、ジョージアナたちは1週間にわたって毎朝集会を開き、生徒たちに理解を深めてもらおうとしました。

「初日は不安のあまりステージの上で固まってしまいました」サブリナは振り返ります。

男子生徒は軽蔑して笑い、女子生徒は目をそらしました。

それでも4人は集会を続けました。「週の後半になるにつれて不安は和らいでいきました。生理は自然なものです。どうして恥ずかしがることがあるでしょう?」

 

生理にまつわる単語を口にすることがほんのささやかな魔法で、バッジが控えめなお守りのようなものだとするなら、次に行われたのは、膣は隠されるべきものだという考えをなくすことを目指したさらに本格的な活動です。

 

WEクラブの部員は、ちょうど学校の玄関を入ったところに展示を作ることにしました。

部員たちは、リネンや掛け布団、タンポンの形をしたクッションやバラの花びらで赤いテントを飾りつけました。

出来上がったのは……子宮を模したものや生理用品、偽物の血までついた高さ150センチほどの膣でした。さらに、

展示作品の外側には女性の健康に関する統計データを描き、生理にまつわる事実が目に入るようにもしました。

 

 

 

展示ができたその日、すぐに嬉しい反応が返ってきました。

先生や生徒が質問をし、テントの中に入り、自撮りまでしていました。

授業参観の日にはたくさんの保護者が活動を支持する気持ちを口にしました。

 

まとめて言うと、この活動はWEクラブにも学校全体にも変化をもたらすものだったとサラは話します。

クラブの女子は自信を得て、リーダーシップを発揮することができました。

男子は差し迫った課題に目を向け、共感の心を持つようになりました。

さらには、学校の玄関のところで交わされる会話が根本的に変わりました。

「みんながこの活動に貢献していました。私たちは1人ではありません。私たちはみんな一緒に闘っているのです」ジーニナはWEが育んできた精神について言います。

 

ある火曜日の午後の終業のベルが鳴った後、理科の先生が展示のところにいた女子生徒たちの前を通り過ぎて家に帰ろうとしました。

「先生、まだ展示の中に入っていないですよね?」ジーニナは呼びかけました。

 

「もちろん入りました、できた最初の日にね」先生はすぐに答えました。女子生徒たちはすぐに、うまいことを言って先生を展示のところまで戻らせました……

活動の大切さについて説明しながら。

このエピソードから、彼女たちが自信を新たに手にしたのが分かります。

膣は体の一部で、生理は文字通り生理現象です。

タンポンやナプキンはただの衛生用品にすぎません。

すべての女性には尊厳があり、発言する権利があります。声を上げるのをためらうことはありません。ジーニナは言います。

「恥ずかしさを乗り越えた後には、理解と話し合いが待っています。さあ、行動するのです」

 

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ  翻訳:翻訳チーム 明畠加苗  文責:清田健介)