社会を変えていくつながりの輪

人々が分断されているかのように見える現代社会。

今回ご紹介するのは、そんな社会の分断を乗り越え、手を携えて変革を起こそうと訴えるアメリカの教育者です。(清田)

https://www.we.org/en-CA/we-stories/we-day/missouri-educator-builds-bridges-to-inspire-healing

 

 

 

 

 

 

人々のつながりの輪を作ることはアート・マッコイの人生で最も重要なテーマとなってきました。

彼が初めて自由に意見が言える―そして聞いてもらえることに気付いたのは15歳の時でした。

 

1991年、彼の才能の閃きが現れました。

歴史に残るあのロドニー・キング事件(LAでロドニー・キング〈黒人〉が白人警官4人に取り押さえられ暴行されてけがをし、警官は起訴されたが陪審の最終判決により無罪)の裁判がきっかけで起きたロサンゼルスの暴動の時でした。

1992年の審判の後、一気に怒りの抗議が町中に沸き起こったのです。2000マイルほど離れたミズリー州セントルイスの郊外の自宅からその暴動を見て、マッコイは彼の周りの抗議行動にも、ロサンゼルスと同じく人種による分断が背景にあるというに気づきました。

それが暴力にまでに発展する前に彼のコミュニティーの中の人種の分断に橋をかける方法がないものかと考えました。

 

マッコイは友人と共に若者の仲裁グループを立ち上げ、そして間もなくクラスメートの口論の仲裁に入り、エスカレートしないうちに喧嘩をやめさせる活動を始めました。

「その時、これこそ私の使命と感じ、『そうだ。これが生涯かけてやりたいと思っていることだ』と心の中で言ったのです」。

 

現在マッコイ はミズリー州のJennings School Districtの指導監督者として、8校、数千人の生徒を監督しています。

彼は人を啓発する対話方法や、WE(フリー・ザ・チルドレン)が提供している若者をエンパワーメントするための支援を利用しながら、コミュニティーで繰り返す暴力の連鎖を断ち切ろうと尽力を続けています。

 

「まず、人々を啓発して彼らのコミュニティーの様々な声に耳を傾けるようにしなければなりません」と彼は言います。

「人々の意見を尊重して、彼らが背負っている話題に謙虚に耳を傾けなければなりません」。

 

彼にとってこのことは、人々が率直な対話に参加できる機会を作ることを意味してきました―そして、2014年にこの原則が試練にかけられる時が来ました。

マッコイの関わる学校のうちの1校の元生徒であったマイケル・ブラウンの発砲事件を機に国中でロドニー・キング裁判に続いて起きたのと同様の抗議が沸き起こり始めたのです。

 

マッコイは次の2年をかけて情報の公開に努め、遂にブラウンの母レズリー・ マックスパデンとファーガソン警視庁の間の和解を成功させました。両者は、ブラウンとその兄弟が通っていた学校にコミュニティーガーデンを設置することでも合意しました。

 

誰とも気楽の話せる気取らない先生であるマッコイはまた、教師以上の存在でもあります。

校長として彼は、地元の病院で生徒が医療を受けられよう活動したり、WEの新しいWE Teachersの資料を授業で使用するよう教師を励まして来ました。

 

薬局チェーンウォルグリーンによる支援で運営されているWE Teachersのプログラムは、アメリカの教職員に無料で資料を配ばり、生徒が抱えている深刻な社会問題に取り組めるよう彼らを支援することを目指しています。

このプログラムは、マッコイと教師たちがコミュニティーで起こるいじめ、貧困、共感を生徒たちと率直に話し合える助けとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

傑出した教育者としての働きに対して、マッコイは、2019年4月にWE Day カリフォルニアの壇上で表彰を受け、彼の地域の教育者が必要な学用品を買う手助けとなるようにと、ウォルグリーンから2万5000ドルものWE Teachers賞が贈呈されました。

 

「WEのカリキュラムの素晴らしい点は、その課程の中にリーダーシップを育てるための奉仕学習の組み入れを考慮していることであり、この組み入れこそが重要なのです」とマッコイは語ります。「奉仕活動に没頭し、地域をよりよくする活動を行うようになると、生徒たちもエンパワーメントされ成長していくのです。」

 

マッコイにとって、エンパワーメントは個人的にも思い入れがある概念です。彼は貧しい家庭に育ちました。両親とも障害者でした。しかし先生たちは、彼の力量を確信して積極的に協力し、必要な時はいつでも学校の特別の援助を用意してくれました。

 

自分が今日あるのは先生たちのおかげだとし、人を変える力というものを先生が生徒に伝えられることを確信して、彼は活動しています。

 

「教師というのは、家庭や地域を変えることができるようにエンパワーメントされた存在なのです。」

 

(原文記事執筆: CHINELO ONWUALU 翻訳:翻訳チーム 松田富久子  文責:清田健介)