WE Dayカリフォルニアでの、難病を患う少年へのサプライズ

世界中に50万人の患者がいるといわれている難病である「表皮水疱症」。

今回ご紹介するのは、この難病に関する啓発キャンペーンを行っている姉弟とその家族です。(清田)

https://www.we.org/en-CA/we-stories/we-day/eddie-vedder-eb-research-partnership-we-day-california

 

 

 

 

 

 

 

夏の日差しで熱くなったトランポリンの上で足を曲げ、そのはずみで空に向かって高く跳ねると、まるで雲に手が届きそうな気がしてきます。

トランポリンで遊ぶのは子ども時代のもっとも大きな楽しみの一つでしょう。でも6歳のエリ・メイヤーにとって、この楽しい遊びには切り傷、水ぶくれ、すり傷がつきものです。

 

エリはサンディエゴに住んでいる、明るくて心の優しい子です。生まれつき表皮水疱症という難病を抱えています。

通称EBと呼ばれるこの病気は、皮膚に影響を及ぼす遺伝子疾患の一つで、遺伝子の突然変異によって引き起こされます。

 

皮膚は、外側の表皮と内側の真皮という2層が重なってできているのですが、EB患者はその2つの層を糊のようにくっつけるたんぱく質を体内で生成することができません。

この重要な役割を担っているたんぱく質がないため、肌は驚くほどにもろく、少し擦れただけでも簡単にはがれたり、水ぶくれや傷になったりします。そのため、

エリは毎日何時間もかけて、傷口を消毒し絆創膏を貼り直しているのです。

世界中にはおよそ50万人のEB患者がいますが、その治療法はまだわかっていません。

 

でもエリは希望を持っています。WE Dayのステージでも彼が明るく前向きなことがよくわかりました。

エリのように前向きな子どもたちがWE(フリー・ザ・チルドレン)の活動を引っ張ってくれているのです。

WEは活動を通じて、子どもたちが希望から一歩踏み出して行動に移せるように勇気づけ、胸に抱いている信念にポジティブな変化が起こせるように後押ししています。

その活動にインスパイアされた人たちが、ホームレスの自立支援や、EB患者がもっと参加できる社会づくりなど、ほんとうに大変で達成が困難だと思えるような目標に取り組んでいます。

 

「僕はEB患者だけど、ただの普通の子どもです。」とエリは言います。
エリは4歳のとき中国から養子としてメイヤー家にやってきました。

エリがEBであることは分かっていましたが、家族はそのようなことは全く気にせず、エリを息子として受け入れました。

 

「エリは私のスーパーヒーローです。」と姉のリリーはうれしそうに言います。

「エリがみんなからじろじろ見られたり指をさされたりすると悲しくなります。」

だんだんと、見知らぬ人たちからの弟に対する反応に嫌気がさすようになりました。

 

そこで、みんなにもっとEBについて知ってもらうため、もっと違いを受け入れるように呼び掛けるため、「Come say hi,(会いに来てね)」というSNSを通じたキャンペーンを立ち上げました。

リリーのキャンペーンがWEの目に留まり、それがきっかけとなり姉弟と母のミシェルでWE Dayカリフォルニアのステージに立ちました。

 

その日エリは角膜剥離(訳注:目の角膜に傷がつくこと)のため目を開けることができませんでしたが、それでもステージに上がりました。

ナタリー・ポートマン、セレーナ・ゴメス、チャンスザラッパーなどのセレブリティたちの前で、自分のことについてスピーチしました。WE Dayにオーディエンスとして参加していた16,000人の子どもたちも「やあ、エリ!」と楽しそうに声をかけました。

エリがみんなと違うからといって誰も避けたりはしません。会場の子どもたちはみなエリを受け入れました。エリの体のどこが悪いのか、EBは感染するのか、などと母のミシェルに尋ねる人もいませんでした。

強い意志を持ったエリはみんなの注目を集め、並外れた強い心や人生を切り開いていく姿はステージ上で称賛の的でした。

 

ここで、ロックバンドパール・ジャムのエディ・ヴェダーが登場します。
エディはメイヤー一家のためにサプライズで動画出演し、彼がいかに感動したかを伝え、またEBについての認知度を上げるために貢献してくれたことに感謝の意を述べました。

 

エディと妻のジルはEBリサーチ・パートナーシップ(EBRP)を共同で立ち上げました。

EB治療についての研究資金を集めるNPOとしては最も大きい団体です。

 

WE Dayのショーが始まる前にブルーカーペット(WE版レッドカーペット)でエリをエスコートしたジルは、スポットライトの下を歩くエリを見て誇りに思いました。
「リリーの言う通り、エリは本当に心優しい子です。だまって見つめられるとなんだかもやもやした気持ちになってしまうけれど、そうではなく自分からみんなに近づいて行って「やあ」と声をかけてあげると、友達だよ、という気持ちにさせてくれます。二人ともほんとにクールな姉弟なんです。」

 

ヴェダー夫妻もEBと個人的につながりがあります。ジルの幼馴染みの息子がEBを患っているのです。

そのつらい病気のことを知ったことがきっかけで、何か出来ることはないか、治療法を探す支援ができないか、と考えるようになりました。

「EBはむごい病気です。それに耐えている子どもたちを見るのは、ありえないほどに辛く、ショッキングです。でも私たちも研究者たちも治療法があると信じています。」とジルは言いました。

 

2014年の立ち上げ以降、EBRPはEB治療の研究のために2,500万ドルを集めました。今治療法として期待されているのはゲノム編集(訳注:DNAを切断したり配列を変えたりして特定の遺伝子に変異を起こさせる方法)です。

ジルによると、立ち上げ当初は、臨床試験がたった2件のみだったのですが、今では20件以上もあるそうです。
EBRPによると、EBの他にも約5,400もの治療法が確立されていない遺伝子疾患があり、今開発している新しい治療技術が成功すれば、これらの病気にも役立てることができるそうです。

「EBの治療法が見つかれば、こうしたすべての遺伝子疾患を治すことができます。」と言ってジルはインタビューを締めくくりました。

 

EB患者は「バタフライチルドレン」と呼ばれます。肌が傷つきやすく蝶の羽のようにもろいためです。

蝶が傷ついた羽でも飛ぼうと羽ばたくように、皮膚の傷が絶えなくても、エリはトランポリンで遊んだり前向きに生きていくことをあきらめたりはしません。

 

(原文記事執筆: ゾーイ・デマルコ 翻訳:翻訳チーム 山本晶子  文責:清田健介)