がん根絶を目指して、漕がれるペダル

カナダのアルバータ州で行われている、2日間にわたるチャリティーサイクリング。

このチャリティーサイクリングは、社会全体でがんと闘おうという若者の想いがあふれています。(清田)

https://www.we.org/stories/students-bike-for-two-days-to-fight-cancer/

 

 

 

 

 

 

 

車輪が過酷な、それでも活気に満ちた48時間のサイクリングを終えてやっと止まった時、ペダルを漕いでいた音はベルローズ総合制高等学校の校庭で歓声へと変わりました。

 

興奮はサイクリングを終えた安堵からでもありました。ベルローズで毎年行われているチャリティーサイクリングのイベントは、今回が14回目でした。

生徒たち80チームが参加し、消防士やカナダ警視庁の警察官、そして地域住民たちも加わり、2日間通してエアロバイクに乗りました。

歓声の一部は寄付金の合計金額が高額になったことに対してでもありました。今年は13万5000ドル以上となり、これまでの毎年の寄付金は全体で230万ドルにもなりました。

 

しかし、最大の歓声は、教師であり、WE(フリー・ザ・チルドレン)クラブの顧問を務める、シュー・レイトンがデイヴ・ヤング賞の受賞者を発表した時に起きたと思います。

その賞は、12年生の時にがんと診断され、最後のチャリティーサイクリングに参加する前に亡くなったベルローズ校の生徒にちなんでできました。賞はイベントの趣旨を象徴するものとなっています。

 

この賞がアルバータ州セントアルバートにある学校の1,100人の生徒たちにとって、なぜ大きな意義のあるものなのかを理解するには、もう少し詳しくこの学校の文化を知る必要があるでしょう。

 

「本校の生徒生は、お互いをベルローズ校の家族だと思っています」とレイトンは言います。「だから、『家族同士のつながり』を大切にします」

 

その『家族同士のつながり』は、を強固にしたいという想いを持っていた10年前に、レイトンはWEと出会います。

 

 

 

 

 

 

レイトンは、生徒たちが、既に当時から行われていたWEの活動を通じて、大きなムーブメントに関わっていること、そのムーブメントには、アルバータ中、カナダ中の子どもたちが、関わり、社会をより良くしているということに感銘を受けました。

その後、彼女は生徒たちがロナルド・マクドナルド・ハウスで食事を作るのを毎月手伝い、地域の女性シェルターやフードバンクでボランティアを行いました。ホープ・ミッション(カナダの非営利社会福祉団体)の活動で大きな貢献を遂げ、スポーツ用品でいっぱいになった箱を必要とする人たちに寄付も行ってきました。

 

しかし、チャリティーサイクリングは、生徒たちが最も力を入れたプロジェクトです。

 

10年前に100名ほどの学生たちで始まったチャリティーサイクリングは、毎年盛大になっています。

目標はいつも同じです。それは、地域にインスピレーションを与えること。そして、資金を調達してがんと闘うことです。

 

寄付金はKids with Cancer Society(北アルバータ州とノースウェスト州に住む小児がん患者を支援する団体)や、Alberta Cancer Foundation(がんセンターの公式募金活動)、そしてストーリー小児病院に届く予定で、それぞれ参加チームは自転車を確保するために1,000ドルを集めなければなりません。

参加者たちは手作り菓子の販売やヨガ教室を主催します。真冬のアルバータ州で近隣を一軒一軒、訪問して廃品回収をしたり、Tシャツやボタンの販売をしたり、野外の食料品店も訪問して回ります。

 

昨年7,000ドル以上を集めた12年生のマディ・バートレットは、このプロジェクトに対する共感と当事者意識が、成功を確かなもとにすると言います。それに加えて、がんサバイバーとその家族から受ける影響により、生徒たちは夜中までペダルを漕ぎ続けます。

 

 

 

 

 

 

マディは、サイクリング参加者の兄妹の一人で、治療のため繰り返す輸血や薬物に耐えていると話していた12歳のがん患者のことを思い出します。マディは、ペダルを漕ぎ続けることで立ち向かう強さを伝えます。

 

「彼女が経験したことを話す様子や、行動しようとする姿を見ていたら、意欲が湧きました。私も変わろうという決意ができたんです」とマディは話します。

 

実際の活動はサイクリングイベントが行われる数週間から数ヶ月前に始まり、その期間は寄付金の調達をします。

サイクリングイベント当日は、競技というより、お祭りのようです。ダンスコンテストがあったり、DJや音楽の演奏もあります。

カラオケや映画、催眠術師もいたりします。夜通し営業の飲食店や、頭を坊主に剃るイベントでさえも、真夜中になるとさらに盛り上がり続けます。

 

「私たちは、イベントを楽しいものにするために、スタッフとして本当に一生懸命働きました。

生徒たちが今回の素晴らしいイベントを開催するため、本当に頑張って活動してくれたからです」とレイトンは言います。

実際に、生徒たちが行動をともにすることで心を通わせるという点は、WE Dayが大切にしていることと似ています。

 

ベルローズの生徒たちにとって、WE Dayアルバータは、自分たちが普段想っていることを共有できる場でした。

州内で地域や世界の問題と向き合いアクションを起こしている、15,000人の若者と共に、著名活動家や言論人、有名人のスピーチを聞き、素晴らしいパフォーマンスを観ました。

 

レイトンにとってWE Dayは、若者が変化を起こす主体となることを学校の学生たちに感じさせるための素晴らしい機会となりました。

デイヴ・ヤング賞から起こった歓声から判断しても、生徒たちはそのメッセージを心に刻んだことでしょう。

 

チャリティーサイクリングに関わる皆が、イベントの成功に貢献しますが、その賞は生徒たちにとって本当にイベントの精神を象徴しています。生徒たちは予想をはるかに超えて、準備に多くの時間を費やしたり、参加者たちを励ますために一晩中起きたりして貢献します。

 

「ほんの小さな記念品にすぎません」とレイトンは言います。「でも、賞を発表すると会場全体が大歓声となります」

 

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ 翻訳:翻訳チーム 山田あさ子 文責:清田健介)