[自分を大切にできなければ、世界を変えることもできない」:活動家のセルフケアについて考える
クレイグとマークのコラムの紹介です。
https://www.we.org/stories/wellness-for-activists/
アメリカの若者たちが、銃規制の強化を求める運動を始めた頃、彼らに寝る時間はありませんでした。
「いま、事件が起きたばかりの頃のインタビュー映像などを見ると、深い暗闇の中にいる眼をしているなということがはっきりと分かります。」
昨年大勢の犠牲者を出した、アメリカのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校での銃乱射事発生件当時を、エマ・ゴンザレスは新著のなかでこうふりかえっています。
新著では、同校の生徒たちが悲しみと向き合い、行動を起こすまでのいきさつが綴られています。
「食欲も出ない日々の中でも、私たちは行動を起こさずにはいられなかったのです。」
Teen Vogue サミットでゴンザレスと対談した際、女優で活動家のローワン・ブランチャードが、質疑応答の中で踏み込んだ質問をしました。
「日々物凄いプレッシャーに直面せざるを得ない状況にいらっしゃる中で、前に進もうとする気力をどうやって保持しているのですか?」
社会運動をしていくなかに於いては、しっかりと充電する時間をつくることはとても大事です。そうしないと身が持ちません。
活動の参加者たちが、事務所でパソコンに向かっていたり、支援者に電話をかけたりしている最中に、ゴンザレスは作業の合間にタブレットでテレビドラマを見ている。。。もしそういう光景を見たら、みなさんはどう思いますか?
「けしからん!」と思う方もいるかもしれません。でも、活動を日々していく中で、ぼーっとしたくなるときもあるでしょうし、そういう時間を時々作ったりするということは、あって良いのです!むしろ必要です!
世界を変えるために行動を起こしている人たちがやろうとしていることは、人それぞれ異なります。
でも、全員が肝に銘じるべきことがひとつだけあります。それは、「自分を大切にできなければ、世界を変えることもできない」ということです。しかし、多くの活動家がそのことに気づかず、ボロボロになった後にそのことを痛感し後悔しています。
何を隠そう、私たち自身がそうでした。「ほどほどにやることが大事」ということに、なかなか気づくことができませんでした。
異様に忙しいスケジュール、「NPOの創設者なのだから当たり前だ」と思いこんで日々こなしていた膨大な数のミーティング.
.私たちは本気で世界を良くしたいと思っています。ですから、「徹夜だって、コーヒーを飲めば平気だ。世界を良くするためなら」なんていう想いも、どこかにあります。
でも、突っ走っていたら身が持ちません。
いまだから言えますが、ただ単に、「熱い想いを持って突っ走ればいい」という訳ではないのです。
むしろそういう状態は不健全です。
私たちが追いこまれていたとき、ジャーナリストで社会活動家のジューン・カルウッドが、社会運動の格言を教えてくれました。それは、「社会運動はマラソンであり、短距離走ではない」というモノでした。
この格言は、活動家の運動として始まったフリー・ザ・チルドレンが、大規模組織へと成熟していく過程に於いて、私たちを支えてくれました。
「社会への問題意識を持ち、世界をより良くするために行動している人は立派かもしれませんが、ある意味では危険な状態です。セルフケアの術を身に着けているなどしない限り、最終的に燃え尽きてぼろぼろになってしまう可能性が非常に高いからです。」トロントを拠点とする精神科医、リー・フリードマンはこう指摘します。
「この危険性と無縁の活動家など誰もいません。」
「自分の気持ちを落ち着かせ穏やかになる方法や、体の不調などのシグナルをキャッチするスキルを身に着ける必要があります。」フリードマンは言います。
「全力で走ってはダメなのです。余力を残しているからこそ、私たちは走り続けることができるのですから。」
セルフケアを大切にするということは、欧米の介護現場においては重要な倫理規範とされてきました。
そして、活動家のようなリーダーはもちろん、ニュースを熱心にフォローしている人(見方を変えれば、ニュースを常に消費している人ともいえます。)、署名運動への参加をお願いする手紙を書いている人、そして、どこに寄付しようかと考えている人も、ときには自分の状態を見つめる必要があるのです。
社会問題と向き合っている時の自分のストレスの度合いや、どういう感情反応をしているかなどを、冷静に見つめる必要があります。
「ストレスへの身体的な反応は人それぞれ違います。」フリードマンはこう指摘します。
そのような身体的反応が、自分と向き合うため手がかりとなるのです。ストレスを抱えているサインがないかチェックしてみましょう。
具体的な例を挙げると、眠れないとか、イライラするとか、腹痛を起こすといったようなことです。普段は気に留めていなかったようなことが、自分が抱えている問題を知るための重要な手がかりとなることもあるのです。
自分と向き合う時間、そして他の人と交わる時間を持つことで、俯瞰的な考え方を保ちながら、社会に貢献するエネルギーを維持することができるようになるのです。
セルフケアをしっかりしながら、社会に貢献するための方法を自分なりに見つけることが大事だとフリードマンは指摘します。「真面目にちゃんと活動するか?それとも集中できないなら止めるか」といったような、二者択一的なモノではないのです。
「『自分を大切にし、人のことも大切にする。』この二つのバランスを上手く取ることができれば、私たちの世界はとても健全な場所になるでしょう。」
フリードマンは、こう結びます。