プラスチックを釣って川を綺麗に!
ロンドンの子どもたちが定期的に行っているテムズ川の清掃活動。
彼らの清掃活動が、大きな変革のうねりを起こしています。(清田)
https://www.we.org/stories/uk-students-clean-up-river-thames/
「こっちだよ!」10歳のエヴァ・スピラはボートに寄りかかりながら、興奮して叫びました。「こっちにゴミがあるよ!」
カナリーワーフ・カレッジの WE(フリー・ザ・チルドレン)クラブのクラスメートが彼女のそばに駆け寄ると、エヴァは冷たく黒い川の水の中にゴミを回収する為のネットを、さっと突っ込みました。
彼女の狙いは、テムズ川に浮いているプラスチックです。
子どもたちは、清掃活動に興味津々の通行人達に精力的に挨拶しながら、テムズ川を掃除(プラスチック・フィッシング)しています。
そして、テムズ川から取り出されたガラクタの山を、どんどん積み上げていきます。
子どもたちの小学校は、ドッグ島のイーストエンド ロンドン コミュニティに所属し、テムズ川の隣に位置しています。
その学校の280人の子どもたちは川岸に打ち上げられているプラスチックを見続ける事に我慢しながら、川沿いを歩いて毎日登校しています。
子どもたちが乗っているボートは、Poly-Mer(ポリマー) と呼ばれていて、環境保護のチャリティーによって作られ、99%はリサイクルされたプラスチックからできています。
このようなボートは、世界初です。ボートの製作に使われた9000本のボトルが、川を汚染し、野生動物を危険にさらす川の上のゴミとなる代わりに、良い用途で使われることができると証明しています。
カナリーワーフは対照的な場所です。水の上のウォールストリートと呼ばれ、そのガラスと金属の高層ビルは、イギリスの金融センターの中心のシンボルとなっています。
その数百メートル下では、12人の子どもたちが、プラスチック製の小舟の中で少しずつ掃除をしています。そこには、カレイ、鯉、ハヤブサ、ムシクイ(鳥類)や、アザラシの家族達の巣があるのです。
カナリーワーフ・カレッジの子どもたちにとっては、テムズ川は人生の一部のようなものです。子どもたちは静かな水の上で帆の張り方を学び、寝室からテムズ川を見つめます。
「愛する川を保護しよう。」という行動計画の約束が、子どもたちの行動のモチベーションになっています。
「テムズ川は私のお隣さん。川は私のホームの一部で、大好きなんです。でも川や動物たちを保護しなくてはいけないのです。」と8歳のセリア・アームストロングは言います。
その学校のWEクラブでは、既に中国の農村地域のWEビレッジ発展の為の資金調達に取り組んでいて、他にもカナリーワーフで家族の介護をする若者達をサポートするキャンペーンもしていました。
にもかかわらず、セリアのお母さんが、学校に地域とテムズ川の清掃活動への参加を呼び掛けた時には、WEクラブはその機会に飛びつきました。
そしてすぐに、子どもたちたちは自由時間を広々とした水の上で過ごし、熱心にゴミを探り出していました。
子どもたちはチーク材でできた椅子、衣類、カラーコーン等を見つけました。エヴァちゃんは100ドルのお札まで見つけ、WEに寄付するために先生に渡しました。
WEクラブの顧問であるクロエ・ヘップバーン先生は、プロジェクトはすっかり子どもたちに自主的に運営されているのだと力説します。
WEクラブの月例会議では、子どもたちが生活の中からの問題、各クラスで考え出したアイディア、企画したいプロジェクト等を話し合います。
「私たちは子どもたちに沢山の自由を与えています…そして子どもたちには自ら問題を解決できる能力があるという事に気が付いたのです。」クロエ先生は誇らしげに説明します。
「私たちは子どもたちをサポートしてあげるだけで良いのです。子どもたちは自分で道を切り開いていけるのですから。」
その自発性は子どもたちを、イギリス中の学校から数千人の他の生徒たちが参加した3月のWe Day UKへと導きました。
活動家やアイドル、有名人、そして彼らと同じような他の若者達がスピーチを行い、参加者達に夢を抱く意欲を吹き込みました。
「若者が何を達成できるのかを見る事は、子どもたちにとって、とても力強いメッセージです。」とクロエ先生はWE Dayの影響について語りました。「しばしば若者は世の中を何も変えることができないと思ってしまいがちですが、他の若者が達成した事を見ることによって、とても勇気づけられることができるのです。」
この非常に寒い2月の日は、若者達が力を持つように勇気づける影響の良い一例となりました。
カナリーワーフ・カレッジの子どもたちとクロエ先生と一緒に川の清掃活動に参加したのは、他の学校からの若者です。
他の学校からの若者の参加を可能にしたのは、カナリーワーフ・カレッジのWEクラブが、今年ヴァージンアトランティック航空の”Change Is in the Air Award ”のという企画の賞金に応募したからでした。
この企画には全てのイギリスの学校が応募可能で、サステナビリティプロジェクトを支援しています。
カナリーワーフ・カレッジはその賞金で、他の学校がゴミ清掃活動(プラスティック・フィッシング)に参加するのにかかる費用を補うことによって、地域全体に活動を広げているのです。
「カナリーワーフ・カレッジの子どもたちはメッセージを、自分達の学校だけではなく他の多くの人々に広めたいのです。」クロエ先生は説明します。「そしてこの賞金とWEがそのメッセージを周囲に広げるという事を可能にしてくれたのです。」
ボートに乗っている間、子どもたちは高層ビルの間を通ってスピードを増す強風に対して、帆をぴんと張ります。
頭上の空は灰色で、嵐の脅威をつきつけます。そして気温が下がり、むき出しの手や耳を冷やします。
しかし激しい寒さも彼らの情熱を冷やすことはできません。子どもたちはプラスチックを集めることに夢中なのです。
子どもたちの目標は他の新しいボートを作るのに必要な量のボトルを集めることです。9000本のボトルはとても高い目標ですが、エヴァは諦めません。
テムズ川は、子どもたちが川の上でプラスチックをひとかけらずつ拾っていく時間を過ごす分だけ、綺麗になっていくのです。
このプロジェクトに対して持つ情熱は、子どもたちを次のプロジェクトへと突き動かし、将来自然環境保護の支持者、またリーダーとなることを手助けするでしょう。
(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ 翻訳:翻訳チーム 柴田友里香 文責:清田健介)