「NPOがもっとイキイキと活動できる社会を!」:クレイグとマークが語るカナダのNPO制度の問題点

クレイグとマークのコラムの紹介です。

 

https://www.we.org/stories/what-stops-charities-from-doing-more-good/

カナダは思いやりにあふれた国です。2013年には、1300万人近くのカナダ人が、計20億時間をボランティアに費やしました。カナダ人の大半(82%)が、NPOに寄付したことがあります。人々が消費主義にとりつかれたかのように買い物しまくるクリスマス・シーズンですが、社会貢献的な活動の需要が物凄く高まるのもクリスマス・シーズンの特徴です。寄付やお金の使い方を見直す絶好の機会でもあります。

NPOがもっと強いインパクトを生み出すために、やれることもあります。一言で言うと、「NPOの好きにもっとやらせろ!」ということです。

 

最近、私たちはカナダのチャリティー団体の多くが加盟する連合団体「イマジン・カナダ」のチーフ・エコノミストであるブライアン・エミットと久々に会いました。

私たちは、NPOの革新的な活動やアドボカシー事業を妨げている多くの障害や、融通の利かない官僚制度の現状の問題などについて話し合いました。

その打開策として、エミットは、「①財政的安定の保障。②政府にNPO業界の代弁者を送り込む。③政治活動の規制撤廃」を提案します。

 

まず、NPOの声を確実に代弁してくれる人や組織が、政府に必要です。

驚かれる方もいるかもしれませんが、カナダ政府にはNPOの政策に関して全面的な責任を負っている人が誰もいません。NPOに関しては、縦割り行政となっているのが現状です。いろんな省庁の人が一生懸命やってくれてはいるのですが、全面的な権限を持っている人が誰もいないのです。

 

フードバンクや女性用シェルターのないカナダ社会なんて、もはや考えられないですよね?こういったNPOは「社会貢献している」と思われがちです。

もちろんそれは間違いではありません。ただ、そればかりを強調されるのは心外です。なぜならNPOは、間違いなく「経済貢献もしている」からです。

エミットは、NPOが200万人を雇用していて、カナダのGDPに於ける8.1%をNPO業界が占めているという点を指摘します。その規模は石油業界を上回っています。

 

「NPOのための省庁の設立を!」とまでは言いませんが、NPOに特化した組織、そして責任者が政府内に必要です。政務官、高級官僚レベルでも良いでしょう。

NPOは社会的・経済的にも物凄く貢献しているのですから、政府に確実にNPOの味方になってくれる人を送りこむのは当然の権利だと思います。

 

第二に、NPOの社会的理念を達成するために幅広い事業を展開できるようになるための規制緩和が必要です。

諸外国では、NPOがより幅広い解決策を打ち出せるようにするための事業の規制緩和が急速に進んでいます。オーストラリア、イギリス、アメリカの35州で、NPOがより革新的な事業を行えるようにするための法整備が行われています。カナダは遅れています。

 

オンタリオ州にある、オールド・イースト・ヴィレッジ・スーパーマーケットは、障害のある人たちへの支援を行っている団体「ATN Access」が、就労支援の場として運営しているスーパーです。

既存のNPOとして30年活動してきた後、2016年に完全な営利企業型のスーパーとして開店しました。

ペギーは、障害のある人たちへの支援を行う団体「ATN Access」が運営する、オールド・イースト・ヴィレッジ・スーパーマーケットでレジを担当しています。

 

「資金の心配ばかりしていて、効果的な支援事業ができませんでした。この団体のエクゼクティブ・ディレクター、アンドレア・トップハムは語ります。

団体の資金を確保するための目的も兼ねて、スーパーを始めようとしたものの、規制が厳しいこともあり、NPOとしてのスーパーの運営はできなかったと言います。

 

「NPOは中小企業のようになってきていますが、未だに中小企業と同等の支援や規制緩和を政府から受けることができません。」エミットは指摘します。

 

最後になりますが、政治活動への規制の撤廃も必要です。カナダでは、法規制によって、NPOが受け取った寄付金の総額の1割しかアドボカシー事業に使うことができません。

例えば、女性用シシェルターであれば、DVの被害者女性の支援を行うことができますが、政府に対して、手若者支援政策の充実を訴えるといった、構造的な問題を解決するための事業がほぼできないのです。

政府はいまこの規制について見直しを進めていますが、より迅速な対応を求めます。

 

カナダ人がクリスマスショッピングに費やす時間とお金を、NPOの支援にも回すことができたら素敵だと思いませんか?

もしも寄付金をより多くのことに使うことができれば、寄付への財布の紐も緩むのではないでしょうか?

 

ぜひ、今年のクリスマスは、NPOがもっと良いことができるようにするための支援をお願いします。