希望のレインボーを、カナダの津々浦々に!
クレイグのコラムの紹介です。
https://www.we.org/stories/celebrate-pride-across-canada/
1月、12歳のイーサンはバイセクシャルであることをカミングアウトしました。
多様性に富み、プライドパレードを毎年開催しているカナダの首都オタワで育ったイーサンは、「別にカミングアウトしても、大したことにはならないだろう」と思っていました。
問題は、彼が今住んでいるのはオタワではなく、家庭の事情で引っ越しをした、小さい街のアーンプラティアであるということでした。
イーサンのカミングアウトを受け入れたクラスメイトもいたもののの、多くの人から悪い病気を持ち込んだ戦犯であるかのような扱いを受けました。
やがて、イーサンは学校のことを考えるとパニック発作を起こすようになります。
ある日、イーサンは学校の授業を欠席します。学校から職場で連絡を受けた母親のソフィー・スミス・ドレは、自宅に連絡をしますが、イーサンからの応答はありませんでした。
この時、彼女の頭をよぎったのは、頻繁に報じられているLGBTの若者の自殺の問題についてでした。
スミス・ドレは警察と救急隊に連絡をし、職場から自宅に駆け付けました。
訳注
(LGBT(:レズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシュアル(B)・トランスジェンダー(T) の頭文字をとったもので、多様な性のあり方の総称のこと。プライドパレードは、LGBTの権利向上を求める行進として、世界各地で行われている。LGBTの権利を求める社会運動の始まりのきっかけとされている、ニューヨークの「ストーンウォールの反乱」が発生した6月に開催されることが多く、6月から7月にかけての一定の期間を、「プライド月間」「プライド週間」と定めている国や自治体もある。今年はストーンウォールの反乱から50周年を迎える年。)
ちなみに、この事件はハッピーエンドを迎えます。イーサンは、その日具合が悪くて学校に行けなかっただけだったのです。
スミス・ドレは自宅でイーサンを無事に見つけますが、最悪の事態を覚悟していたスミス・ドレは「息子にとって居心地の良い地域社会をつくろう」ということを決意しました。
スミス・ドレは、アーンプラティアと、隣町であるマクナブ / ブレイサイドの議会に対し、「プライド週間」の制定を求めるキャンペーンを開始します。
「トロントのような都市部は、プライドパレードの時期になると街全体が一体となって盛り上がっています。そしてそれがカナダを象徴する光景と思いこんでいるのですが、どこでもそういう光景が見られる訳ではないのです。」LGBTの若者の家族を支援する活動を行っている団体「PFLAGカナダ」のコミュニケーション・ディレクターで、スミス・ドレのキャンペーンにも携わった、オミッド・ラザヴィは言います。
バンクーバーやカルガリーなどでは、プライドパレードはお祭り騒ぎです。車道も封鎖され、大勢の人が集まります。このようなパレードももう長年行われていますから、「LGBTの権利を認めるなんて当たり前だとみんな思ってるよね!当然だよね!」と思ってしまうのも無理はありません。
しかし、アーンプラティアのような小さな街は、まだLGBTに関する取り組みは始まろうとしつつある段階なのです。
カナダでは、125か所の自治体で、プライド月間に際して何らかの行事を公式開催していますが、カナダには3000か所以上の自治体があります。
「小さい街の住民が都市部の住民に比べてLGBTに対して冷たい」という訳ではありません。
ただ、LGBT当事者の存在が都市部に比べると可視化されているとは言い難く、支援も不充分な環境のなかでは、プライドパレードやLGBTの権利向上を求める運動の重要性への理解が浸透しにくいということもまた現実です。
一方で、そのような状況が続けば、イーサンのような小さい街に住むLGBT当事者は孤立を深めていくことになってしまいます。だからこそ、自治体が率先してプライド週間などを制定してLGBTの存在を可視化していくことが重要なのです。
スミス・ドレが、LGBTの運動のシンボルであるレインボーフラッグをアーンプラティアに掲げようとキャンペーンで呼びかけたとき、地域のFacebookのグループでは、過激な議論が起きました。
この運動を続けることで、スミス・ドレの栄養コンサルタントの事業に悪影響が出ると警告してくる住民もいました。
しかし、大半の人が運動を支持してくれました。
地元の企業から、レインボーフラッグが描かれたバンパーステッカーやマジックテープ、バッジを無償で提供したいというオファーもありました。
2カ月に及ぶキャンペーンの後、アーンプラティアの議会は自治体としてレインボーフラッグを掲揚する決議を可決しました。数週間後、マクナブ / ブレイサイドの議会も同様の主旨の決議を可決しました。
「カナダの国旗を海外で見ると、カナダ人として安心感を覚えますが、レインボーフラッグを掲揚するということは、その街が愛と希望にあふれているという安心感を与えることになるでしょう。」とスミス・ドレは言います。
誰もが生きやすい共生社会を創るためのアクションは、誰でも起こすことができます!
車窓や経営しているお店の看板に、小さいレインボーフラッグを貼ってみるのはどうでしょう?
もしかしたら、みなさんの街はプライドパレードを行うための充分な環境が整っていないかもいれません。
でも、公民館や学校の体育館で、「ミニ・プライド・デー」みたいなイベントを催すことはできるのではないでしょうか?
あなたの自宅で、LGBT当事者が集まる会を催すこともできると思います。
6月7日、マクナブ / ブレイサイドの庁舎で、イーサンはレインボーフラッグを掲揚する大役を務めました。
同日の午後、イーサンはアーンプラティアでのレインボーフラッグの掲揚を見届けました。
今年、オタワ川沿いの多くの小さな街で、レインボーフラッグが初めて掲揚されました。
多くの人が、オタワ川を、「虹の川にしたい」と言っています。
この動きが国中に広がることを期待したいです。