世界を変えているクイーン、ラバーン・コックスへのインタビュー

今回の「世界のWEニュース」は、女優のラバーン・コックス

へのインタビューをお届けします。自身の社会運動への考

え方や人生観など、様々な話題を熱く語っています!(清田)

 

https://www.we.org/stories/laverne-cox-wants-youth-to-know-they-have-the-power-to-create-change/

 

Instagramでいつもカッコよく綺麗にオシャレしているラバ

ーン・コックス。その魅力はリアルのステージで見ても変

わりません。

 

インスタ映えさせようといつも張り切っているラバーンは、リ

アルの世界では、謙虚で思慮深い、引っ込み思案な女優で

す。彼女のインスタ映えを狙いにいく姿勢は、芸能人に熱狂

する現代の人々を皮肉っているようにも感じられます。他方

で、社会から求められている、「変わった役割」を果たそうとし

ているということも確かです。自信に満ちあふれているように

見えるラバーンですが、その自信とは、「上から目線のナルシ

スト」という意味ではなく、ラバーンが数々の苦しみを乗り越え

てきたという証しなのです。

 

アラバマ州で生まれ育ったラバーンは、自身を「女の子」と

自認したことで、酷いいじめを受けてきました。「子ども時代

のトラウマ」トランスジェンダーの当事者として、2014年に史

上初めてタイム誌の表紙を飾った号の巻頭インタビューで、

いじめについてこう表現しています。

 

(訳注:トランスジェンダー:生まれたときに法律的/社会的

に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人のこと。N

HKの福祉ポータルサイト、ハートネットから引用)

 

故郷のアメリカ南部を離れ、現在はロサンゼルスに住んで

いるラバーンですが、「心の故郷はニューヨーク」と語ります。

住宅事情がもう少し良ければ、ニューヨークに住み続けたいと

のことですが「さすがにもうワンルームには住めないし、ニュー

ヨークに住むのは難しい」のだそうです。

 

そう言うラバーンの脳裏には、小規模公開の映画に何本も

出ていた、ニューヨークでの下積み時代の思い出が蘇って

いるのかもしれません。しかし、ラバーンは独房に収監され

ている受刑者の役で有名になりました。動画ストリーミング

配信サイト「ネットフリックス」配信のドラマ「オレンジ・イズ・

ニュー・ブラック」のソフィア・バーセット役です。この役で、ト

ランスジェンダーをカミングアウトしている役者としては初め

て、テレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞にノミネート

もされました。

 

カメラの前以外の場では、ラバーンはLGBTムーブメントの

著名なリーダーでもあります。様々な活動を支援し、積極的

に発言をしています。特に、LGBT当事者たちのメディア出演

を増やすことを通じて,共生社会の推進を図る運動には力を

入れています。

 

訳注
(LGBT(:レズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシュアル(B)・トラン

スジェンダー(T) の頭文字をとったもので、多様な性のあり方

の総称のこと)

 

ラバーンは昨年ロサンゼルスで行われたWE Dayカリフォル

ニアでもスピーチしました。

 

「私なんて、もう良い歳したおばさんでしょ?だからね、大勢

の未来ある若い人にこうやって話ができるのが嬉しいんです

よ!」ラバーンはこう語り、[17,000人もの子どもたちが、社会

を良くするために活動しているということにびっくりし、感動し

ました!]と語りました。

 

WE Dayカリフォルニアに登壇したラバーンに、分断された

社会をつなぐ方法、若者へのアドバイス、「ロールモデル」

という言葉を好まない理由などについて聞きました。

 

あなたが最も力を入れて取り組んでいる問題は何ですか?

 

LGBT、特にトランス(ジェンダー)の問題に取り組んできまし

た。トランスの人たちに関わる問題はたくさんあります。政治

家たちの中には、私たちがトイレに行く行為を犯罪化しようと

している人たちがいます。私は、この問題は、トランスの「トイ

レの問題」として矮小化するべきではないと思っています。こ

れは、私たちの「社会で存在する権利」が懸かっている問題

なのです。学校に通うトランスの子どもたちを守るための闘い

なのです。今闘っている若者たちは、ただ他の子と同じように

平等に扱われることを望んでいるだけなのです。

 

では、現状をどのように見ていますか?

 

トランスの人たちが当然享受されるべき権利や尊厳を享受

できているとはとてもいえません。法律で私たちは保護され

ているでしょうか?政策は充分でしょうか?アメリカ人は充

分理解しているでしょうか?そういうことをきちんとやってい

ないから、アメリカの平均的な失業率に比べて、トランスの

人たちの失業率が3倍も高くなっているんです。犯罪に巻き

込まれ犠牲にもなっています。入居や通院、入院を断られ

たりもしています。私たちはいまこの瞬間も攻撃に遭ってい

ます。この危機的な状況を、伝えなくちゃいけないんです。

トランスの人たちの現状を多くの人にしてもらうことで、仲間

を増やしたいんです。そのうねりを大きくできれば、政治家た

ちに「私たちは存在する権利がある」と伝えることができるか

もしれません。

 

ロールモデルでいるということをどのように感じていますか?

 

私、「ロールモデル」とか「お手本」みたいな言葉って好きじ

ゃないんですよ。「可能性モデル」とかの方が好きですね。

だって人が他人に見せているのは、あくまで「可能性」でし

かないから。仮に憧れている人がいたとして、その人の真

似をカタチだけして生きようとするなんて、私は嫌ですよ。

 

話にもでてきたので、憧れている人を教えて下さい。

 

キャンディス・ケインですね。10年前に、トランスの女性とし

て史上初めてアメリカのゴールデンタイムのテレビドラマに

レギュラー出演した人です。彼女がいなければ、いまの私

はいません。彼女がいなければ、トランスであることをカミ

ングアウトした状態で、テレビ業界で役者として働こうなん

て考えもしなかったでしょうし、それができるとも思わなか

ったでしょう。私にとっては、可能性と希望を与えてくれた

存在です。

 

いまの世界は、社会的にも政治的にも強く分断されている

と多くの人が感じています。この分断を解くために、私たち

ができることは何でしょうか?

 

投票に行くことはとても大事だと思います。基本の「き」

ではありますが。選挙にみんな行かせるように社会で

仕向けることは大事だと思います。選挙がどれだけ大

事か理解していない人が多いと思いますね。とはいえ、

最近のご時世もあってか、人々が選挙の大切さに気づ

き始めているようにも感じますが。

 

人々ができることはたくさんあります。私が社会運動やアド

ボカシーについていつも言っていることは、もし自分が気に

なる問題、引っかかる問題、つまり、怒りや憤りを感じてい

ることがあって、「変えなきゃダメじゃん!」と思うようなこと

があれば、それをやった方が良いということです。自分の

感じる情熱や使命感に従うべきです。

 

自分がトランスジェンダーのひとりかもしれないと悩んでいる

若者、あるいはそれ以外の理由で「人とは違うかもしれない」

と悩んでいる若者にどんなアドバイスをしますか?

 

これは私の個人的な信条ですが、人はみんな計画のような

モノを背負って生まれてきて、それぞれの計画を果たすため

に、他の人とは違う存在として創られているのだと信じていま

す。私は多くの困難を経験してはきましたが、この信条が真実

であるという確信を個人的には持って生きています。私は理由

があっていまこの世界にいるのです。若い人が苦しんでいると

き、その苦しみには何かしらの理由があるのです。乗り越えら

れない試練は、人には与えられないのです。あなたは独りでは

ありません。

 

苦しんでいるのは私ひとりだけだと思ってきました。私は愛

される存在なんかじゃない、私を愛して受け入れてくれる人

なんて誰もいないと思ってきました。でも、それは嘘でした。

あなたはいま、理由があってここにいます。そんなあなたは

決して独りではありません。苦しみには必ず理由があるので

す。その理由はすぐには分からないかもしれませんが、恐れ

ずに向き合えば自ずと見えてきます。

 

苦しんでいたとしても、もう少し辛抱して下さい。あなたが奇

跡を起こすその瞬間までは。

 

「トランスジェンダー」の箇所の引用、参照先のウェブサイト

のURL

http://www.nhk.or.jp/heart-net/themes/lgbt/

アメリカで起きた、トランジェンダーとトイレを巡る議論につい

ての解説記事

 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/05/post-5164.php

 

(原文記事執筆: ケイティー・ヘウィット)