クレイグが、「子どもの権利条約の改正」を検討するべきではないかと考えている理由

クレイグのコラムの紹介です。

https://www.we.org/en-CA/we-stories/opinion/craig-kielburger-update-united-nations-convention-on-the-rights-of-the-child

私は13歳のとき、カナダの当時の首相との面会に臨みました。

当時、フリー・ザ・チルドレンを立ち上げたばかりだった私は、大いなる目標の達成を目指し、首相との面会をしました。

「児童労働をこの世界から無くして下さい」と訴えるために。

この一見理想主義的にも思える目標を、私が首相に臆することなく訴えることができたのはなぜでしょう?

それは、私の訴えや問題意識は正しいと証明してくれる国際条約が既にあったからです。

この面会の数年前、国連で「子どもの権利条約」が採択されました。子どもの権利を定めた、史上初の画期的な条約でした。この条約により、各国政府の子どもに対する政策が大きく変わりました。

しかし、今月で採択されて30年を迎えるなか、この条約が、いまの時代の現状に充分に対応できていないのではないかと感じることも多くなってきました。

54条から成る同条約は、あらゆる事柄に関する子どもの権利と、その権利を守るために政府が果たすべき責任が明記されています。

教育や医療を受ける権利、遊ぶ権利や意見表明をする権利など、多岐にわたります。

条約の採択以降、子どもを取り巻く世界の状況は著しく進歩しました。現在、学校に通う子どもたちの数は史上最も多くなっています。

予防可能な病気で失われる人命の数は減少しています。

何より、「子どもの権利」に対する社会の問題意識が大きく変わりました。子どもの権利条約は、史上最も多くの国に批准された人権条約となっています。

しかし、「現代の子どもの権利」を守ることはできているのでしょうか?

子どもの権利条約が採決された年は、ワールドワイドウェブのシステム(いわいるインターネットのウェブサイトのこと)が生まれた年でもあります。

その頃というのは、気候変動がまだ深刻な問題として一般的に認識されていなかった時代であり、ロボットや自働運転もまだSFの話でしかなかった時代でした。

このようなことを考えますと、現在発生している人権問題を解決するために、子どもの権利条約を進化させることが急務であるように思います。

私はいろいろな若い活動家やその保護者と話をしていますが、ネット上での安全が最も懸念していることだという声をよく聞きます。

「リアルの世界での権利」はネット上でも適応されるべきです。特に現代の子どもにとっては不可欠でしょう。ネットが普及する以前に採択された子どもの権利条約からは、この問題への言及が全く無いのです。

プライバシーの権利、ネットいじめからの解放などがその代表格です。

また、比較的新しい考え方ではありますが、必要なデーターを自ら所有し管理する権利を持つことで、子どもたちが主体的により良くインターネットを利用できるようにする環境を保障することも必要となってくるでしょう。

ネット上で子どもたちの権利をどう守るかということは重要ですが、そもそもの問題として、インターネットを使えない環境にいる子どもたちがいるということ自体が、大変な問題です。

今の時代、ネット環境が無い状態で勉強しろというのは、あまりにも無理がありますし酷なことです。

インターネットは、視野を広げ学びをより豊かにします。

私自身、支援先のケニアの学校のコンピューター室でそういう光景を目の当たりにしてきました。

世界中の子どもたちに、インターネットを使う権利があるという考え方を当然のものにするべきです。

しかしながら、現行の子どもの権利条約の最大の問題点は、未来の地球で暮らす権利が全く書かれていないということです。現行の条約のままでは、目まぐるしく変わる地球環境で暮らしていく権利を保障することが全くできません。

5億人以上の子どもたちが、洪水での危険な浸水が予想される地域で暮らしており、栄養失調に苦しんだり、不安定な環境下で、故郷を離れざるを得なくなってしまう可能性があるというリスクを抱えています。

子どもたちは既に気候変動の危険と隣り合わせの状態となっています。

多くの世論調査で、若者たちが「気候変動が最も気にかけている社会問題である」と答えています。気候正義を世界にもたらすということは、世界の子どもたちに正義をもたらすということでもあるのです。

もちろん、現行の子ども権利条約の条文や理念がこの世界で実現しているとは言い難く、まだまだやるべきことがあります。

しかし、現実がどうこうということとは別次元の問題として、子どもの権利とは何かということを常に問い直すということは重要です。

子どもの権利条約は、ただの条約ではありません。生きている条約なのです。

採択して、各国が批准するというだけでは、その取り組みは全く充分ではありません。

常にこの条約を最大限行使できるよう努力し、必要があれば時代に合わせて刷新することも検討し、もし改正が成された場合は、その新たな条文も含めて、この条約を各国が厳守するべきです。

変化が激しい現代の世界において、次の30年間に生まれてくる子どもたち、またその次の未来の子どもたちの権利を、いかにして守るかということを、検討するべき時がきているのではないでしょうか?

参考リンク

子どもの権利条約について

子どもの権利

インターネット接続を人権と認めようと呼びかける動き

https://www.afpbb.com/articles/-/2812438

気候変動に関するユニセフのレポート

https://www.unicef.or.jp/news/2015/0351.html