生徒のお父さんが建てた、手造りの学校
エクアドルの山岳部で暮らす建築業者のカルロス。彼は、
子どもたちの未来を建設するために、奮闘している父親で
もあるのです。(清田)
https://www.we.org/stories/father-builds-school-in-ecuador-to-bring-education-to-community/
猫背気味の背格好や音楽の才能…男の子は父親から多く
のものを受け継ぐものです。
カルロス・ダキレマ・オルティスは建設業者です。生まれつき
才能があったからという理由だけで彼がその道を選んだので
はありません。それ以外の選択肢がなかったのです。
カルロスはエクアドルの山岳地帯チンボラソで育ちました。
学校が大好きで、また、建設現場の親方だった父親の仕事
を手伝うのも大好きでした。
「父の仕事は何もかも覚えました。
いつも新しい仕事を覚えたくてたまりませんでした。」
カルロスの父親は学校に通うことが第一だといつも言って
いました。「時間があるときにはここへ来て働いてもいいが、
勉強や学習の機会があるのなら、そちらを優先しなさい。」と
言われたことをカルロスさんは思い出します。
しかし7年生になろうという時、当時その村には高校がなく、
進学という選択肢はありませんでした。両親はカルロスを都
市部の高校に行かせる金銭的余裕もなかったため、彼は進学をあきらめました。
彼の父親と同様、建設現場の監督になり、建設現場という
名の教室で多くのことを学びました。
カルロスが結婚して家庭を持ったとき、せめて自分の子どもは
地元のサンミゲルにある小学校を卒業した後も進学させたいと
考えていました。
しかし実際の状況を考えると、その希望は叶わないのでは
ないか、子どもたちも自分と同じ人生をたどるのではないだ
ろうか、と不安になりました。彼の収入では、子どもたちを遠
くの高校まで通わせる余裕はありませんでした。
その後、WEビレッジ(フリー・ザ・チルドレン)の活動によりサ
ンミゲルに新しい学校が作られることになり、その知らせは
カルロスの耳にも届きました。カルロスは工具ベルトを腰に、
子どもたちの教育を受ける権利への信念を胸に、学校建設に
携わりました。カルロスの手助けもあって、WEビレッジは高校
を開校するため政府と連携し、12の新しい教室を建設しました。
子どもたちが自分たちの住む村で高校に進学するのは初めての
ことです。
現在、カルロスの次女は2年生で、新しく建てられた学校に
通っています。この次女は、カルロスの家族のなかでは、初
めての高校進学者となる見込みです。
硬く分厚い手をした穏やかな口調のカルロスですが、自分が
携わったことで何かを変えることができた、そのことを振り返
ると感情が高まります。「最初の教室を完成させたときのこと
を思い出します。バックパックを背負った娘が家に帰ってきて、
こう言いました。「お父さん、どうやって学校を作ることができた
の?」私はこう返しました。「お前のためだよ、そこでしっかり学ぶんだよ。』
今、私の子どもたちや村の子どもたちはみな、教育を受けることができるよ
うになりました。
カルロスの背中を見て育った息子も次第に建築に興味を
持つようになり、高校を卒業し建築家をめざして勉強した
いと考えています。次の世代へ投資することに価値があ
ることを確信しているカルロスは今、自分の持つすべて
の知識を息子に教えています。
(原文記事執筆:ワンダ・オブライエン 翻訳:翻訳チーム
山本晶子 文責:清田健介)