空腹の連鎖をぶち壊せ!:ケニアの農村に住む父親の挑戦
今回は、農業技術の向上を通じて、ケニアのキプソンゴル
村の食糧事情の改善に取り組む、ロバート・ムータイをご
紹介します!(清田)
https://www.we.org/stories/father-field-breaking-cycle-hunger/
ロバート・ムータイは、長男のベンジャミンが高校入試の
試験に不合格となり、高校に行く機会を失った日のことを
忘れることができません。
51歳のこのケニア人の農民は、自分を責めていました―
彼は自らの経験から、空腹のままで勉強するのはどんな
に厳しいことか知っていたのです。
農村のキプソンゴル村で育っていた頃、少年ロバートは、畑
のトウモロコシが底をつき始めた時に親が近所の家から食
糧を借り歩く姿を、じっと見ていました。子どもたちに食べさ
せなければと父親が力を尽くして働いたにもかかわらず、9
人の兄弟・姉妹は空腹のまま寝ることがよくありました。
ロバートは父親のそばにいて土地の耕し方を学びました。し
かし両親には何の役にも立たなかった従来の耕作方法では、
後で自分の土地家屋に悪い影響が出て来ることになるのでは
と思い、彼は、どの作物がどの季節によく収穫できるか、干ば
つや病気からどう護るかといったわずかかばかりの知識をもと
に、作付けしていきました。
「手探りの農業でしたね」彼は言います。「上手く行きますよ
うにと、ただただ祈るばかりで」。
ロバートは、夕方家に帰るのが怖くなってきました。妻がパ
ラフィンのカンテラの明かりを頼りに働き、5人の子どもを夕
食抜きでそのまま寝かしつけていることも、ロバートは知って
いました。
「家族に合わす顔がありませんでした」彼は言います。「家
族も養えない男に、父親面する資格なんてありませんからね」。
息子のベンジャミンが試験に落ちたとき、ロバートは、何か
が変わらなければこの連鎖は繰り返すことになると実感し
ました。「これ以上家族を苦しませたくありませんでした」と
言います。
2016年の春、WEビレッジ(フリー・ザ・チルドレン)は持続可
能な開発プログラムの一環として、キプソンゴル村で農業
訓練を開始しました。ロバートは、農業技術を学ぶ機会を
待ち望んでいたので、直ちに訓練のへの参加を決めまし
た。彼と仲間の訓練生は、短期の農業や、点滴灌漑法、温室栽培
に関するこつを見つけました。
「初めて現代の農業について知リました」と彼は言います。
ロバートのグループはキプソンゴル村の地域共同農園を設
立し、村の中心部にある1エーカーの農地を共同で開墾しま
した。新しい技術を取り入れると、ジャガイモ、キャベツ、ケー
ルやトマトが成長して、この共同農地や自分たちの小さな家
の庭を覆い尽くすまでになりました。
1年後には、キプソンゴル村の風景―そしてロバート自身の
印象まで驚くほど変化していました。
余剰農産物の販売で得た収益で、農業チームは、預金箱
を設けて、メンバーがビジネスベンチャーを始めるために
要する資金の貸し付けに利用できるようにしました。ロバ
ートが養鶏場に投資したり乳牛を買った時、彼のグルー
プは彼の商才に注目して、彼を農場の管理人として選出
しました。
最近では、ロバートか帰宅する時、自宅が見えてくる前から
でも、笑みがこぼれます。
「家族からお帰りなさいとハグされます。私は家族を養うこと
ができるし、家族の生活も潤っていることを実感しています。
こうなればもっともっと働きたいですね」。
彼の長男は最近、再び高校入試験を受け、合格
しました。現在、 近隣のボメット村のLelaitich Se
condary Schoolの9学年(高校1年生)に在籍して、
父が参観に来てくれることを心待ちにし、父から色
々な事について学びたいと強く願っています。
「親父は頑張って勉強するようにと僕を元気づけてくれます」
ベンジャミンは言います。「親父は頑張ることこそ重要だと教
えてくれました。農家としてその仕事に身を捧げている親父
の姿を見ていると、僕は、いつか家族を養えていけるほど懸
命に働かなければと言う気になります」。
(原文記事執筆:デーパ・シャンカラン 翻訳:翻訳チーム
松田富久子 文責:清田健介)