フィリピン活動家カレン神父コラムより

FTCJフィリピン支援事業のパートナー団体

「PREDA基金」代表 シェイ・カレン神父のコラムから

(マニラタイムズ11月5日配信記事) 

翻訳:FTCJ翻訳ボランティアチーム 岡田千津子さん

正義の欠如が子どもたちを傷つける

先日、トランスペアレンシー・インターナショナル

(腐敗、汚職に取り組む国際的NGO)

が示した各国の汚職度指数一覧表によると、

フィリピンは、最低ランク国の一つ

「高度の腐敗」と位置付けられました。

それは、全く驚くようなことではありません。

教区の神父でもあるレガスピ市のジョエル・ベイロン司教は、

毅然(きぜん)として、聖職者たちにあてた文書を明らかにしました。

「倫理を守る社会組織が弱ってきて、村の単位で汚職が

行われています。フィリピンの青少年で組織される

サングニアン・カバターンの評議会選挙では、投票買収が

行われています。親が、子どもに不正行為をあおっています。

教区の指導者でさえ、不正に加わっています。彼らは、

辞任すべきですし、サングニアン・カバターン青年評議会は、

若者に汚職を教える素地を作ることから手を引くべきです。」

文書は、このように断固とした表現で書かれています。

司教や神父の中には、人権を擁護するため、勇気をもって

はっきりと自然や人々の命を脅かす森林伐採や鉱山開拓に

反対する立場をあらわし、人々を導き勇気を与えています。

けれども、聖職者の多くは沈黙を守っています。オスカー・クルス

前大司教は教会の支援を受けながら、違法賭博の撲滅キャンペーンを

展開していますが、このことと矛盾している事実として、いくつかの教区は

ギャンブルを行う組織や国が出資したフィリピン娯楽ゲーム公社

(PAGCOR/訳注;通称カジノ・フィリピーノ)から寄付を受け取っているのです。

ナザレのイエス(イエス・キリスト)は、貧しく、圧制や虐待で苦しんでいる

犠牲者の側に立って、声をあげました。イエスは、当時の施政者や

神殿貴族らに対してさえ、その腐敗について厳しく非難し、勇敢に

立ち向かいました。イエスは、彼らを「白く塗られた墓」

(whiten tombs/訳注:「偽善者」という意味で使われています。)

であると言いました。外側は、白く美しく見えますが、内側は、死者の

骨やあらゆる汚れで満ちているという意味です。

イエスは、人間の尊厳を守るための教えを語り、権力者を批判する

行いをしたために、逮捕され、罪人のらく印を押され、処刑されました。

イエスの教えを守る人々も、同じように命を捧げました。

フィリピンで正義と人間の尊厳を守ることに身を置いた

セシリオ・ルセロ神父(訳注:2009年に殺害された)を始め、

数えきれないほど多くの人々が、

暗殺者の銃弾やナイフで命を落としました。

しかし、死の危険は、ナザレのイエスを信じ、従った者たちがそうで

あったように、世界中の真のキリスト教徒が背負うものなのです。

人々は教会に足しげく通います。けれども、教会の儀式という覆い

によってイエスの真の教えが隠されてしまいました。正義が実現

されるように見届け、イエスの教えを代弁し、身を尽くし、正しい

行いをする人々を支えていくべきであるのに、あまりに多くの人々が

そうすることをしないで逃げているのです。

真のキリスト教徒であれば、囚われ人や貧しく虐げられた人々、

飢えと虐待に苦しむ人々と共に歩み、彼らを救い、彼らの権利を

守り抜くために、彼らを心身両面で力づけ、支えていくべきです。

真のキリスト教徒であるために、私たちは、イエスが最後の晩さん

の前に弟子の足を洗い清めた際の教えに向かい合い、私たち同士

で互いに足を洗うことが求められています。

言い換えれば、私たちは、兄弟、姉妹である極貧の人々の

中に生き、農民と共に歩み、環境を守り、人権を侵害された

人々のために、改革の使徒として、課題を乗り越えていくための

活動を確実なものとしていくことが求められているのです。

今日、私たちの活動に対しては、民主政府に挑む政治的な

干渉だと言う人もいます。けれども、はっきりさせましょう。

私たちは、道義的に許せないこととして取組んでいるのです。

とりわけ、人権、奴隷制、子どもへの虐待といった個人の尊厳を

守れるかどうかがかかっている問題なのです。

近年、子どもたちが被害者となる犯罪があふれています。

売春ツアーが行われ、買春目的に子どもを性の奴隷にするような

ことがまん延し、刑罰を受けず、政府によって奨励さえされているのです。

地方や外国のお客たちに幼い女の子や男の子を連れてくる

人身取引斡旋人に金を払うような外国の投資家に対して、

市長は、6日以内に営業許可を発行し、免許を与えています。

一方で、子どもたちを救い、守るための施設の認定の更新

手続をするのに、6ヶ月から1年もかかっているのです。

たった8歳の男の子や女の子までが性病にかかり、

そんな子どもたちが、商店街や街角、共同墓地で風俗産業

の商品にされています。フィリピンの総合病院の児童保護課は、

毎月何百もの子どもたちの治療をしています。外国人を

引き付けるために私たちの子どもや若い女性を商品にした

買春旅行に関与している旅行業者は、とんでもないことに、

なんと14%もの割合に上ります。

今こそ私たちは、子どもを守るために立ち上がり、性的虐待や、

違法な取引の犠牲者になった子どもを救い出し、支えて

いこうではありませんか。起訴を棄却してもらうため、

大金をちらつかせて検察官を買収しようと誘惑する多くの

人々がいます。そして、子どもたちに対する極悪な性的犯罪の

何百もの事件が、検察官に起訴されなかったり、起訴されても

軽い罪で終わっています。

これらの何百もの子どもたちを傷つけている事例について、

真の教会は、苦しんでいる子どもの泣き声や叫び声に耳をすませ、

救いを待つ子どものためにたゆみない努力をしています。

しかし、私たち自身も、一刻の猶予もなく行動を起こさなければなりません。