プレダ基金の活動報告:罪を犯した子どもの保護

プレダでは、定期的に刑務所を訪問し、刑務所に入っている17歳以下の男の子を救出しています。刑務所はフィリピンの首都マニラにあるため、プレダの施設があるオロンガポからだと車で片道3時間ほどかかるのですが、週に1度くらいの割合でスタッフが刑務所を訪問しています。

刑務所から全ての子どもたちをプレダが保護するわけにはいきません。多くの子どもたちが1年以上プレダに滞在するので、毎週刑務所から子どもたちを救出していたのでは人数が増える一方になってしまいます。刑務所を訪れて子どもたちにインタビューをしたスタッフたちは、その子をプレダで保護するか否か、苦しい選択をしなければならない時があるのです。

プレダ以外にも、犯罪を犯した17歳以下の子どもたちのための施設がいくつかあり、ユースセンターと呼ばれます。ユースセンターと、プレダとの大きな違いは、子どもたちが自由に外でスポーツなどを楽しめるかどうかです。プレダの男の子たちが暮らしている施設は人里離れた山の中にあるため、たとえ脱走したとしてもそう簡単には町に辿りつくことができません。

なので、施設の周囲には柵も無く、サッカーやバスケットボールを楽しんだり、コンピュータのレッスンを受けたり、畑仕事や大工仕事の方法を学んだりしながら、閉じ込められること無く毎日を過ごしています。

それと比べるとユースセンターの環境は、ほぼ刑務所と同じです。
狭い部屋に子どもたちを閉じ込め、外出は許されません。
刑務所との違いは、「大人と同じ部屋に入れられることは無い」と言うのと、「センターの中に学校があって教育を受けられる」ということだけです。

なので、プレダで保護されている男の子たちは、他の施設に移されることをとにかく嫌がります。行動の自由が無くなり、十分な食べ物ももらえなくなることを知っているからです。

先月、プレダの代表者であるカレン神父は、とても苦しい決断をすることになりました。重い犯罪を犯した2人の男の子を、プレダに連れ帰るか否か、です。2人の男の子たちは16歳と14歳。彼らが犯した罪は殺人です。3月終わりごろ、フィリピンでとても大きなニュースになった出来事なのですが、2人は7歳の女の子を誘拐して、1日中連れまわしました。その女の子を何度もレイプし、最終的には、まだ意識があった、まだ生きていた女の子の首に石を巻きつけて、川に投げ込んだのです。1週間後、女の子は遺体で発見されました。

この男の子たちを保護するかどうか、スタッフたちは迷いました。「子どもの権利」という面で、行動の自由や守られる権利を考えるならば、そしてこの男の子たちが心を入れ替えて社会復帰する可能性を考えるならば、保護すべきです。

しかし、すでにプレダで暮らしている他の子どもたちへの影響、他の子どもたちの権利を侵害しないだろうかという心配もあります。

さらに、これまでプレダが保護してきた子どもたちのほとんどが、やむを得ない理由で犯罪を犯してしまった子どもたちです。たとえば、親が面倒を見てくれなくてお腹を空かせた結果食べ物を盗んだ子どもや、あるいはアルコール中毒になって家庭内で家族に暴力をふるうようになった父親に耐えられなくて危害を加えた子どもなど、その結果に至ってしまった理由がある子どもがほとんどです。

やむを得ない理由で犯罪を犯した子でさえ、プレダでは全てを保護しきれない状況下で、遊び感覚で小さな子をレイプし殺害した2人を、連れ帰るべきなのでしょうか?

その2人を保護するかどうかスタッフの中でも、意見は分かれました。

最終的には、カレン神父は、この2人はプレダでは保護しない、という決断を下しました。
どんな決断が正しかったのかは誰にも分かりません。ですが、今回の事例だけでは無く、1度盗みなどを覚えてしまった子どもたちを健全な道へ戻していくことは簡単ではありません。

どんなに自由な行動を許し、教育の機会を提供し、セラピーなど感情を吐き出す場所を用意しても、時に子どもたちは恩をあだで返します。つい最近も、新しくプレダにやってきた男の子が、オフィスからお金を盗むという事件が起きました。子どもたちの中で、怪我人が出るような喧嘩が起きることもあります。
たとえ子どもたちが恩をあだで返すような行動をとったとしても、たとえすぐには結果に繋がらなかったとしても、それでも辛抱強く子どもたちを信じ、カレン神父やプレダのスタッフは保護活動を続けています。