【コラム】紛争やセックスツーリズム(買春ツアー)などで起きる性的暴力を断固阻止すべき。

FTCJのパートナー団体、フィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、
シェイ・カレン神父が執筆した性的虐待についてのコラムをご紹介します。

 

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紛争やセックスツーリズム(買春ツアー)などで起きる性的暴力を断固阻止すべき。

神父 シェイ・カレン

訳者:
翻訳チーム 山下 正隆
Original Article

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文化的な人たちは、人間が、結局のところそれほど洗練されてはいないという事実を認めたがりません。毎年、先進国の富裕層の人々が途上国などの貧困国に行き、子ども達や女性を性的に利用したり、虐待したりしています。このようなことは、セックスツーリズムといわれる世界的な現象です。性的暴力は普通に起こっており、また、痛ましく、罪深いことだということに全く目が向けられていません。非常に多くの女性や子ども達が金銭で売買されており、ヨーロッパでも、27,000人もの人たちが、強制労働の犠牲者となっています。

 

こういった倫理感がなく、性をもてあそぶ男性達は、圧倒的な財力を使って、貧しい国の地方政治家、警察、検察の中のゆがんだ共犯者と結託し、非常に深刻な腐敗の温床を成しています。このことで、性的な奴隷制が繁盛し、無心に飛ぶ蝶を捕まえるように、9歳から16歳までの子ども達が拉致されるというサイクルが出来上がっています。

 

これをさらに複雑にしているのは、政府当局者達、教会の指導者達、慈善団体や開発機関など、国のエリート達の“病める沈黙”です。彼らの一部は、犠牲となった子ども達を守るためではなく、自分たちの利益になるよう活動を行っています。虐待を受け、奴隷的な扱いを受けた子ども達は、深刻なトラウマを受けています。子ども達が対策を求めて声を上げているのに、エリート達は、無駄なほど豪華な庁舎に閉じこもって、報告書や体裁の良い文書作成に頭を悩ましているだけです。

 

現場で働く人たちは、外へ出て子ども達を守っています。彼らは、性犯罪組織からの誹謗中傷や脅しによる危険や死の脅威に直面しています。さらに、当然支援をする立場にあるはずの、贅沢に暮らしているエリート達が資金、支援、援助を横取りしてしまうことにも頭を悩ませています。

 

犠牲となっている子ども達への無関心、投げやりな態度といった暗い状況にも多少希望の光はみえます。エリート達は、なぜ集団レイプや性的暴力の犠牲者の立場を理解するのにそんなに時間を要するのでしょうか。主要8カ国(G8)による宣言は、女性、子ども達に対する、また、世界の紛争地域の男性にも同様に、性的暴力を防ぎ、止めさせるための新しい活動についてふれています。

 

レイプや性的な奴隷制は紛争の武器ともなってきました。紛争において、兵士が女性や子ども達をレイプしたり、力によって服従させることは、敵と見なした相手側を罰する手段として容認されています。性的暴力は、敵と見なした相手側を圧倒し、勝利を主張する手段の一つです。

 

また、紛争を行う集団は、ある地域において多くの女性に妊娠させて、子どもを産ませることで、領土的な主張をしようとすることもあります。レイプして子ども達の父親となった侵略側の兵士は、支配される異民族とその土地に対して占領と定住の正当性を主張することができます。これらは、戦争犯罪ですが、それらを止めさせようとする試みはほとんど無いばかりか、遅きに失しています。

 

性的暴力は、たいていの場合、力を誇示するということと関わっています。そして、それにもまして大きな問題は、根源にある堕落した欲望や性的な衝動を肉体的に満足させようとすることです。現在、性的暴力が全土に広がっている主な国は、シリア、ボスニア、リビア、スーダン、マリ、コンゴ民主共和国、ソマリアなどです。

 

アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーは、国連難民高等弁務官の特別公使を務めており、数年来この問題の対策を推進しています。戦争で荒廃した地域から逃れようとする女性難民は、自身や子どもたち、隣人たちが耐えてきた非人道的な暴力について語っています

性的暴力は、最も深刻な犯罪であり、正義に反します。また、人としての尊厳や最も神聖な人権に関わる暴力です。幼い子ども達が犠牲になれば、それはとても凶悪な犯罪であることが想像できます。ですが、エリート的な機関、政府、国連職員も含めた国際団体は、ほとんどいつも、惨事から目をそらしたり、あるいは戦争につきものの負の部分と見なしたり、さらには、性的暴力を“文化的な現象”と呼んで、何もする必要がないとまで言っています。

 

近いうちに、私たちは、自分の国で罰せられることなく、守られて暮らしている金と力を持つ犯罪者たちを国際的な逮捕令状で逮捕し、国際刑事法廷に引き出すことができると期待しています。

 

犯罪調査、証拠集め、犠牲者の支援と保護に権限を与える国際条約の原案作成が進行中です。いかなる平和条約においても、このような性犯罪を赦免することは許されません。警察や医療要員からなる調査チームが訓練を受け、性犯罪を糾弾することを目的として、戦争で荒廃した地域に派遣されます。また、性暴力に関する教育や自覚をさせることも目的としています。

 

国際社会は、ようやくこのような性的暴力に目を向け始めました。カトリック教会とその関係機関、地方政府は社会における女性や子ども達の性的な搾取を抑制し、無くしていくように行動するでしょう。買春ツアーは女性や子ども達に対する別の形の暴力です。

 

ある14歳の少女が、叔母と一緒にアメリカのテレビやYouTubeに出ていました。その叔母は、その子の処女権を外国人に大金で売ると申し出ていたのです。テレビに出ていた叔母と少女は、衰弱してやせこけ、希望を失い、空腹をかかえた様子でした。この2人は、どうやって道徳的判断力を持てるというのでしょうか。その老いた叔母は、尊厳も人間の価値もすべて失っているようでした。その少女は、おびえ、おどおどしていました。その様子はこのリンクで見て下さい。

 

http://abcnews.go.com/International/americans-targeted-allegedly-running-underage-prostitution-philippines/story?id=18582802&page=4#.UWAHubtihVM(英文ページに飛びます。)

 

この間、金持ちで贅沢に暮らしている人間達が2人を取り巻いています。市役所の職員達は、これらの不法行為に対して、営業許可を取り下げることをしません。教会は長きにわたって沈黙したままです。また、教会の社会的な教えはたびたび無視され、悪がはびこる中で贅沢な生活と宗教的な儀式、慣例的な行事、無意味な説教にすり代わっています。

 

私たちは、まず何を正すべきかをはっきりさせ、声を上げ、女性や子ども達を売買することや性的な奴隷制に終止符を打つべき行動を取らねばなりません。