2023年のケニアでの活動を報告します

フリー・ザ・チルドレンでは、現地パートナー「WE Charity Foundation(WCF)」を通じて、ケニアのマサイマラ地区に暮らす先住民族の子どもたちの教育支援を行なっています。

現地より、2023年度のWCFのケニアでの活動レポートが届いたので、ご報告いたしします。
 

 
私たちがパートナーを組んでいるWCFは、ケニアのマサイマラ地区で1999年から活動を行なってる団体です。

長年にわたり、質の高い教育や安全な水、食糧など持続的にコミュニティで確立できるようにすることを目指し
各コミュニティとパートナーシップを組んで、コミュニティベースでの活動を行なってきました。
 
今までの支援の成果がもたらされ、徐々にコミュニティの人々自身での運営が確立してきたことから、
現在はコミュニティごとのプロジェクトから、徐々に地域レベルのプロジェクトへと移行しています。

地域レベルのプロジェクトというのは、地域全体の人々の生活を向上、安定させるための仕組み作りで、
例えば大きな病院や、農業訓練施設、女性支援センター、中等教育・高等教育機関の運営などです。
 
2023年は、主に以下の5つの活動に注力しました。
 

<バラカ病院の運営、医療支援>

  • 2013年以降、7,200人以上の母親の安全な分娩が行なわれました。
  • 2010年以降、132,000人以上の患者を診療しました。

支援コミュニティでは、20年前は腸チフス、コレラ、HIV/AIDSの感染率がとても多い状態にありました。

このためWCFでは、家庭でできる予防のためのワークショップの開催からバラカ病院での入院患者の受け入れや手術の実施まで、さまざまな面からの医療支援、人々が適切な医療サービスにアクセスできる仕組み作りを行ないました。結果、現在ではそれらの病気をほぼ根絶することができました。

現在は、コミュニティの中で今までまで見過ごされていた病気にも対応できる、高度な外科医療も導入したことで、バラカ病院が、この地域における重要な医療機関として機能しています。

バラカ病院の産婦人科では、日々新しい生命が誕生し、生まれた子どもたちの予防接種が行われています。
 

<女性エンパワメントセンター>

  • 1年で約470人の女性が、経済的な自立に向けた支援を受けました。

マサイマラコミュニティの女性たちはとても意欲が高く活動的で、粘り強い精神を持っています。
これまでの長年の支援を通じ、このコミュニティの何千人もの女性たちが、家庭の収入を安定させる存在となっただけでなく、コミュニティ内でのリーダーとなり、自身の家族やコミュニティ全体をサポートできるようになりました。

WCFが運営する女性エンパワメントセンターでは、彼女たちの持つリーダーシップや強さに敬意を表すとともに、経済的な知識やスキルを身に付けたり、起業のための研修などを提供しています。
 

<オレレシュワ農場>

  • 1年間で800人が農業研修を受けました。
  • この農場で、1年間に60トン以上の農作物が収穫されました。

オレレシュワ農場では、近代的な農業の技術や知識を広めるためのモデル農場として、新しい手法による農作物の栽培や、地域の人々への農業研修を行なっています。
コミュニティの人々はこの農場で働きながら技術を身に付け、そのスキルを家庭での農業に活用することで、より効率的で持続的な農業をコミュニティで行えるようになることを応援しています。

 

<キサルニ中等学校>

  • 2011年の開校以来、600人以上の卒業生を輩出しました。
  • 2022年度の卒業生は、全員が大学へ進学しました。

キサルニ中等学校は2011年に開校し、以来、ナロク郡で最高レベルの教育を提供する学校として、重要な役割を担っています。

今までに600人以上がこの学校を卒業し、卒業生たちがコミュニティに貢献していることから、徐々に地域の大人たちもこの学校での教育の成果を理解するようになりました。

大人たちが教育の重要性に気づいたことで、子どもに教育を受けさせることを優先するようになり、
これによって児童婚や若年婚が減り、自分の子どもに対してより強く責任を持つようになったり、子どもの教育へより多くのお金を投資するようになったりするなど、大人たちの教育に対する考え方が変わりつつあります。

 

<WEカレッジ>

  • 2017年の開校以来60人以上の卒業生を輩出しました。
  • 卒業生の73%が就職に成功しました。

WEカレッジの設立により、このケニアの農村地域でも、若者が高等教育(大学教育)をこの地域内で受けられるようになりました。WEカレッジでは、独自のリーダーシッププログラムや、統合されたICT教育、学生一人ひとりが選んだ進路に直結する分野の教育を提供しています。

卒業生たちは、様々な形で活躍しています。

教師になった卒業生は、生涯で1,600人の地域の子どもたちを教えることになります。
看護師や医者になった卒業生は、40万人以上の人々を診察し、
ビジネス分野に進んだ卒業生たちは、友達やご近所の人々を雇ったり、
このコミュニティに新たなビジネスを広げる基盤を作っていくことでしょう。

自らの知り合いやご近所の人を雇ってビジネスを興し、自身のコミュニティを新たな市場へ繋げるインフラを構築することでしょう。

このように、卒業生たちは自身の故郷のコミュニティで仕事を見つけ、キャリアを積み、ナログ郡やケニアの将来を創っています。

 

ケースストーリー1

エスター・ワンジャラさん

エスターさんは、キサルニ中等学校のングロット男子キャンパスの教員(ファシリテーター)として働いています。同じく教師をしている両親と兄の影響をうけ、エスターさんも学校の先生になりました。

彼女はングロットキャンパスで農業と生物の授業を担当していて、実験室の管理と、11学年(高校2年生)の担任もつとめています。

多くの学生たちのように貧しい家庭出身のエスターさんは、「貧困」という課題に立ち向かい克服する喜びを、身をもって理解しています。
「学生たちが家庭やコミュニティに貢献する手助けがしたい」という想いが、エスターさんの情熱やモチベーションの原動力になっているそうです。
ングロットの男子学生たちが「自分には貧困と闘う能力がある」と信じ、自信を持てるよう、エスターさんは日々、彼らの学びと成長を応援しています。
 

ケースストーリー2

サミュエル・ナバラさん(15歳)

サミュエルさんは、小規模農業を営む家庭に生まれました。彼は『教育』が、自分の家庭だけでなく自分のコミュニティ内のほぼ全家庭が直面している『貧困の悪循環』から脱することができるキーであると強く信じ、キサルニ中等学校への進学を希望しました。

サミュエルさんは、「家族の光となるべく、学業へ全身全霊で臨む」という目標を持ち、優秀な成績で学業を修めることで、周囲の人たちにも希望をもたらしたいと、懸命に勉学に励んでいます。

 


日ごろから当団体の活動にご支援くださっているみなさま、ケニアの子どもたちのためにご支援、ご協力をくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは今後も、現地パートナー団体WCFを通じたケニア・マサイマラ地区の子どもたちを応援していきます。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。