経済活動と環境保護を両立させた社会の実現をめざして
クレイグのコラムの紹介です
https://www.we.org/en-CA/we-stories/opinion/environment-versus-economy
人間たちが自宅で自粛生活を送っている最中、ベネチア運河には海洋生物が戻ってきました。
人が消えたタイのビーチでは、多くのオサガメが巣をつくり、トロントの都心部では、キツネたちが戯れる光景が見られました。
このようなニュースを見れば、「新型コロナウイルス(COVID-19)は少なくとも地球環境には良い影響を与えている」と思わる方もいるかもしれません。
世界気象機関は、2020年は温室効果ガスの排出量が6%減少すると予測しています。
これは第二次世界大戦以降で最大の減少幅です。
このような報道を聞いて、なんとなく良い気分になるのは別に問題ありません。
しかし、これで環境問題の現状について学べたと思ったなら、それは大きな間違いです。
むしろ、地球環境はいま大きな危機にさらされています。
各国の政府が、このパンデミック(大流行) を、環境規制の緩和の口実にしようとしているのです。
複数の国が環境規制の撤廃に踏み切ったことから、国連は4月15日にそのような政策を止めるように求める声明を発表しました。
武漢での新型コロナウイルス発生後に大規模な都市封鎖に踏み切った中国では、大気汚染が全土で大幅に改善し、衛星写真でもそれがはっきりと分かるほどでした。
残念ながら、その偉業は短命のものとなりそうです。
中国の企業への環境規制が、経済復興を理由に撤廃されたからです。
アメリカでは、自動車業界と石油業界の復興のために、自動車の燃費基準を緩和しました。
この緩和により、年間の二酸化炭素排出量は9億トン増加すると予想されています(カナダの年間排出量よりも大きい数値です)。
また、アメリカ合衆国環境保護庁は、企業への二酸化炭素排出規制の執行を無期限に中断すると発表しました。
もちろん、経済を再開させていく必要はありますが、短期的な経済的利益のために、環境保護をおろそかにするということは、気候変動のような、新型コロナウイルスよりも深刻な問題をより悪化させることにつながります。
長期的に見れば、環境保護の規制緩和は、私たちの命を守るどころか、脅かす行為でしかありません。
2008年に景気後退が世界を襲った時も、二酸化炭素の排出量は減少しました。
その後数年経って景気は回復し、二酸化炭素の排出量は史上最高となりました。
そのパターンをコロナ渦でも繰り返す可能性があるのです。
そのことを考えれば、現状は明らかにとても危険な状態です。楽観視している余裕などとてもありません。
また、温室効果ガスに対する地球の抵抗力はとても弱くなっています。
アマゾンの熱帯雨林はその一例です。
コロナ渦で、ブラジルは環境保全監視活動を縮小しました。
大抵、アマゾンの違法伐採を最前線で監視しているのは現地の先住民の人たちですが、彼らもいまは自粛生活を送っています。
そのため、伐採が加速化しているのです。
このパンデミックがもたらした予期せぬ好影響を、永続化させる方法を見つけなくてはなりません。イタリアで最も深刻な大気汚染問題を抱えているミラノでは、ロックダウン期間中を利用して、街の刷新を行っています。
自動車の交通量を減らし、自転車や公共交通が利用しやすくなるようにするための再開発を始めました。そんなに大きな変化をもたらすかどうかは別にしても、こういうことを始めたということに意義があります。
それ以上に重要なことは、環境政策を経済政策の要にすることです。
G20諸国の経済政策を過去10年間研究した経済学者たちによれば、再生可能エネルギーの導入や、電力消費の効率化の向上など、環境に配慮したインフラの整備を進めることは、最も高い効果が期待できる景気刺激策になるそうです。
「危機は機会である」とよくいわれます。
この危機を乗り越えることができれば、世界は「経済と環境は対立するべきものではなく、経済と環境を共に大事にすることこそ重要だ。」ということに気づくことができるでしょう。