開発途上国に忍び寄る新型コロナウイルスの影
クレイグのコラムの紹介です。
https://www.we.org/en-CA/we-stories/opinion/covid-19-will-attack-the-global-south
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(大流行)が、世界を揺るがしています。
私たちみんなが不安な思いで日々を過ごし、愛する人や毎日の暮らしについて心配しています。
悲劇的な状況にあると言っても過言ではないと思いますが、この悲劇が、開発途上国に広まる危機が今まさに迫ってきています。
先進国では、政府の支援策の恩恵をいくらかは受けることができます。
カナダ政府は、産業界や国民に対する支援策を講じると約束しています。
アメリカでは、大恐慌に対応するため、2兆ドルの経済対策が組まれました。(これだけで充分かどうかについては、様々な議論がありますが。)
カナダの医療制度は強固ですし、製造業のセクターに於いても、緊急的に必要な用具などの生産に暫定的に注力するなどの対応ができます。
どこでもそんな状況だといいのですが、現実はそうではありません。
開発途上国で暮らしている人の数は世界の人口の多くを占めていますが、このような地域では大規な模経済支援対策はありません。
政府からの給付金も、中小企業支援策もありません。
私は、これまで私や当団体が25年間事業を行ってきた、ケニア農村部に思いをはせています。
都市部に比べて、医療設備や人員は盤石ではありません。
農村部なので、大規模な啓発キャンペーンを行うことも難しいです。
感染対策を広めるために、当団体が現地で行った個別訪問では、新型コロナウイルスという単語すら聞いたことがないという人が2割いました。
私の良き友人であり、当団体のケニアの保健事業を率いるJoseph Gachiraはこう言います。
「村びとたちを納得させるのには時間を要します。村びとたちは混乱しているのです。コロナウイルスをインフルだと思い、『どうして今年のインフルエンザは世界でこんなに人が亡くなっているのだ?』と聞いてくる人もいます。
ここにきて、新型コロナウイルスの致死率の差異は年齢ではなく、体の状態による差が大きいということが分かってきました。
飢餓や水系感染症、マラリアなども、致命的なリスクとなり得ます。
栄養失調に苦しむ子どもたちや、貧困線以下で暮らす妊婦は、従来から弱い立場に置かれており、日々を生きていくのにも厳しい状況です。
開発途上国に住む人の75パーセントが、水と石鹸を手に入れることができない状況下にいます。
都市部の人口密度の高いスラム街では、人と距離を保ちながら生活することなどできません。
しかし、希望もあります。
最近、世界銀行が開発途上国に対して、新型コロナウイルスのための緊急支援を行うと発表しました。
また、カナダ政府も支援を行うと発表し、赤十字のような国際機関に資金を拠出することを表明しました。
しかし、それだけでは足りません。
政府や地域の各種団体、そして各個人による支援が今後重要になっていきます。
Wilson Sangは、ケニアのMotony村の長老です。
当団体のアウトリーチチームのボランティアとして、ウイルスに関する情報や予防法を村びとに伝えるために毎日村中を歩いています。
彼のような人物がこの世界にはもっと必要です。
「これからも歩み続けなくてはいけません。」Wilson Sangはそう語ります。「まだ全員に伝えることができないので。」
新型コロナウイルスの感染症拡大の長期化で最も深刻なダメージを食らうのは、公的な医療体制やインフラが貧弱な国や地域です。
経済が悪化するだけでも、世界中の人々がこれまでに勝ち取ってきた、人権や女性の権利の向上、女子教育の拡充や食糧供給の安定化などの前進の後退を招く引き金になりかねません。
今はドアや国境を物理的に閉じている状態ですが、私たちは思いやりの輪を広げる努力はしているでしょうか?
地球の隣人のことを考えることはできているでしょうか?
世界中が暗いニュースで覆われているこの現状から、目を背けることはとても簡単です。
それでも、世界の最も遠い場所にいる人たちから、どうか目を背けないでいて下さい!