調理用器具で問題解決!

クレイグとマークのコラムからです。

 

調理用器具で問題解決!

(The original article)

(訳者:翻訳チーム 中丸玲子)

2012年3月19日 クレイグ&マーク・キールバー

“簡素でクリーン燃焼の調理用コンロで数百万人の命を救い、女性に恩恵をもたらし、途上国における生活の質を向上させ、気候変動要素である炭素ガスを10年で9億トンも削減することができます。”

 

シャラダベンさんはテントの中で忙しそうにお客さんにお茶を淹れていました。

 

屋外にはインド・グジャラート州の塩原が遠くまで広がっています。このテントで一年のうち8か月間を過ごして塩作りをするのが、シャラダベンさん一家の主な収入源です。

 

わずか数分でシャラダベンさんはお茶を運んで来て、お客さんに一杯のお茶をいれながらにっこりほほ笑みました。夫のバドヴィールさんや子どもたちは誇らしげに土床に座っています。灼熱の太陽が薄い麻布のテント生地を通して照りつけ、隣人たちはお客さんを見ようとテントに群がって覗き込んでいます。

 

至る所にドーナッツ・カフェ「ティム・ホートン」があるカナダでは、お茶を入れるくらいでこんなに騒ぎ立てるのはおかしなことに聞こえるかもしれませんが、本当はお茶そのものではなく、お茶の淹れ方がシャラダベンさん一家を喜ばせているのでした。

 

かつてはお茶を淹れるにはかなりの距離を歩いて薪を集め、時間をかけて火をおこし、ゆっくりとお湯が沸くのを待たなければなりませんでした。その間、テントには煙と灰が充満し、家族や客は咳き込んでしました。

 

今は歩きまわる必要もないし、煙も灰も出ません。新しい太陽光発電コンロのおかげでお茶は数分で用意できるようになりました。

 

「みんなの嬉しそうな顔が信じられませんよ」と世界クリーン・コンロ連盟(GACC)のラダ・ムティア事務局長は言いました。この日、シャラダベンさんがもてなしていたお客さんはムティア氏でした。

 

より良い世界を築こうとするときには大きな問題に巻き込まれやすいものです。時には小さな勝利を祝ったり小さな行動がもたらした大きな成果に驚いたりすることも大切なことですし、価値のあることです。

 

簡素でクリーン燃焼の調理用コンロで数百万人の命を救い、女性に恩恵をもたらし、途上国における生活の質を向上させ、気候変動要素である炭素ガスを10年で9億トンも削減することができます。

カナダはGACC支援に170万ドルを提供しています。GACCは国連主導の公的機関と民間企業との国際協力活動で、途上国の1億の世帯にクリーンな調理用コンロを届ける活動をしています。

従来の薪コンロや焚火は調理の基本的な方法で、世界で30億人の熱源になっていますが、調理時の燃焼による煙関連の健康被害で毎年200万人が死亡しています。

シャラダベンさんの家族もクリーンな調理用コンロのおかげで健康面の恩恵を受けています。

「家族が咳き込むことはなくなりました。」とシャラダベンさんはムティア事務局長に話します。

塩作りが始まる前、夫のバドヴィールさんは家族より先に行ってテントを作り、井戸を掘らなければなりません。井戸からあふれる塩水が周辺にたくさんの小さな池、つまり塩田を作ります。水が蒸発すると家族は数カ月かけて塩を収穫するのです。

バドヴィールさんは村から15キロ歩き、一週間分の道具、食糧、水、燃料用の薪を運ばなければなりません。太陽光コンロは重さがちょうど6キロですが、1週間分の薪よりもずっと軽いのです。

世界中の途上国で調理用の燃料として薪を集めているため広大な土地が丸裸となっています。

薪集めが女性の仕事となっている地域もかなりあります。近隣の資源が枯渇すると女性たちは遠くまで出かけなければならず、身を危険にさらすことにもなります。

クリーンな調理用コンロは途上国の新進起業家のビジネスチャンスでもあります。

グジャラートの自営女性労働者協会(SEWA)はインドの女性たちに小規模事業の立ち上げを奨励しています。SEWAは最近のプロジェクトとして環境にやさしい経済構想を打ち出し、クリーンな調理用コンロや太陽光電球など環境にやさしい製品を販売する代理店を女性たちにやってもらっています。

インドでシャラダベンさんが使用しているコンロの値段は2500-3000ルピー(4000円~4900円相当)、およそ60カナダドルです。これはシャラダベンさん一家の月収に相当しますが、それだけの価値があると彼女は話しています。

クリーンな調理用コンロにはさまざまな種類があります。シャラダベンさんの家族が使用しているのはソーラー・パネルで発電するタイプです。もっと簡単な作りの太陽光コンロはパラボラアンテナ型の反射板で太陽光を集光して加熱調理します。その他にも、薪や木炭、あるいや木質ペレットといった燃料を効率よく燃焼させるものもあります。大気汚染が少ないクリーン燃焼の調理用コンロの多くには、ガスを再循環させて効率よく完全燃焼させるファンがついていて、排出ガスを削減させています。

様々な選択肢があるということは、途上国で利用可能な資源であらゆる需要を満たすことができるコンロがあるということを意味しています。

世界を変えるということは時として、インドの女性にとっての新しい調理用コンロのように簡単なことでもあるのです。