共感意識はいじめへの防止策

こんにちは、浅田です。
今回はクレイグとマークのコラムからです。

(訳者:翻訳チーム 太田絢子)

The original article)

2012年 3月26日

「もし本気でいじめを解決したいと思うのであれば、まずは家庭から始めよう。親の無意識の行動が、学校でのいじめにつながる可能性を含んでいる。」

ペレス・ヒルトンのユーチューブキャンペーン、「イット・ゲッツベター」(It gets better)はハリウッド、TV、有名企業、北アメリカの政治上の人名録のような感じで読めます。エレン・デジェネレス、トム・ハンクス、ジャネット・ジャクソン、オバマ大統領、などなど。そこには数人のカナダ人の名前もあります。例えば、ジャスティン・ビーバー、リック・マーサー、前新民主党党首ジャック・レイトンなどです。数週間前には、有名な文化的アイコン、オプラがレディー・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ基金」(Born This Way Foundation)を本人とともに立ち上げましたが、この基金は完全にいじめ撲滅を目的としています。

彼らはセレブリティ―が最も得意とする「注目を集めること」を活かしており、それは悪いことではないと思います。問題解決のための最初のステップは、問題があるということを自覚することですから。

しかし、自覚することのみが独り歩きしてしまっているようにも思えます。

政府と教育委員会は学校でのいじめを防止する政策と方法を協議作成中です。しかし、それは学校での現象にとどまっています。どの世代にも、どこにでも、インターネット上でも、街中でも、職場でもいじめは存在します。子どもの遊び場でのいじめは、始まりにすぎません。

本気でいじめをなくしたいという気持ちがあるのなら、まずは家庭から始めなければいけません。親の行動が無意識のうちに、学校でのいじめにつながる可能性を含んでいるからです。

いじめは生じるのではなく、誰かによって生み出されています。そして、親とは最初の社会のモデルであり、その言葉は、故意であってもそうでなくとも、優越意識を作り出す可能性があります。親が他人の、もしくはほかの子どもの批判や噂をしているのを子どもは聞いています。車内では、親がほかのドライバーにむかって悪態をつくのを聞いているかもしれません。

それはなにも攻撃的な言葉に限ったことではありません。長年にわたる多くの研究で、親が子どもを叩いたり、殴ったりすれば、その子が他者に対して攻撃的な行動を起こす可能性が高くなることがわかってきています。

一方、いじめをなくすということは、幼いうちから共感と思いやりの心を育むということであり、それによりいじめに立ち向かう、もしくはいじめられている人たちのために立ち上がる可能性が広がります。

共感できる子どもは他者の気持ちをくみ取ることができます。共感感覚に乏しい子どもは、鈍感で、冷徹な大人になり、他人を気遣わない利己的な人間になります。そのような人々は、他人が困っているときに、知らんふりをするのです。

親たちには何ができるのだろうか。我々はダン・キンドロン、メアリー・ゴードン、バーバラ・コロローソといった、拙著「世界に求められる子どもたちー思いやり、協力し合える子どもを育てる」で研究をお願いした専門家たちに話を聞きました。彼らは思いやりがあり、いじめをしない子どもの育て方に関し、アドバイスをくれました。

幼いころから我々は子どもに物事の認識と仕組みについて教えています。例えば、丸と四角の見分け方や、犬と猫の違いについて。我々は同時にまた、彼らに感情を自己認識する方法を教え他方がいいと思っています。「太陽が輝いていればうれしいはず。外で遊べるもの」もしくは、逆に、「雨ならがっかりするでしょうね。公園にはいけないものね」などです。

この方法だと、会話を始めるには、ほかの人の気持ちを推し量る能力も必要になってきます。我々が表現方法を教えない限り、子どもは自分の気持ちを話すことができません。だから、彼らにその方法を教え、自分を表現させるようにしていくのです。

男親というものは時に息子たちに、その気持ちを的確に表現するのに必要な術を教えないものです。児童心理学者のダン・キンドロンは「カインを育てる-少年たちの感情的な生を守る」の著者ですが、親は-そして社会は、少年たちが一人前の大人になるために必要な、感情面における発育を阻んでしまいがちであると言っています。彼は母と娘が泣いている幼い少年と公園で出くわす話を紹介しています。娘が少年が泣いている理由を尋ねると、母は娘に推測させます。「きっと迷子になったのね」とか「きっとどこか痛いのね」とか。しかし、息子と一緒にいる母親は、その子に気にかけないように言うかもしれません。

少年たちに特別なトレーニングは必要ないとキンドロンはいう。彼らのペット、兄弟、祖父母、年上の隣人や他人への自然な気遣いの能力を示す機会が必要なのです。

親は子どもたちに自身が見本になり、自分たちの感情を表現する方法を示す立場にあります。一日のうれしいこと、悲しいことを共有して下さい。モラルのジレンマに直面したら、子どもたちとそれを話し合えばいいことです。子どもたちは話の全体がわからなくてもいいのです。間違いを起こしたら、謝るのです。それは正しいことだけでなく、子どもたちにどのように物事の対応の仕方を教えることにもなります。

メアリー・ゴードンは「共感の輪」創設者であり、受賞経歴もあるのですが共感意識に基づいた子どものための学校用プログラムを提案しています。彼女は、思いやりがあり、愛情があり、共感意識のある親というものは子どもにとって最適な見本であると述べています。第三者による研究から、彼女のプログラム修了生たちは、より周囲に思いやりがあり、非攻撃的で、ほかの子どもたちよりも、不公正さを解決しようとする傾向があることが証明されました。

あなたはどう思いますか?それがすべての状況に対する万全策であるかは疑問ですが、子どもに、ほかの人の立場になってみて、それがうれしいのか、悲しいのか、聞いてみるのもいいことです。公園ではブランコの順番をめぐっての争いがあります。「もし順番を変わってもらえなかったらどう思う?」と考えるのも一つです。寝る前のお話や「めでたしめでたし」で終わる子どもの映画を見たあとに「この状況だったら、あなたならどうすると思う?」って聞いて見ることもいいことです。

レディー・ガガでなければいじめを解決できない訳ではありません。全ての母親と父親は何百ものセレブよりもずっと力をもっているのだから。