性産業の被害にあった17歳の少女―萩原沙柚子さん

今回は、Take Action Academy in Japan(TAAJ)に
ゲストとして来ていただいた性産業で被害にあった
フィリピンの女性おふたりのお話です。
 
 
今回のTAAJでは、過去に人身売買の被害にあった、二人のフィリピン女性にお越しいただきました。過去に人身売買の被害にあい、現在ではプレダ基金のソーシャルワーカーとして働く方と、同じく過去に人身売買の被害に遭い、つい最近までプレダ基金でケアを受けていた10代の少女が来日されました。

 
●まず、人身売買とは何なのか?そしてプレダ基金とは何か?
人身売買とは、人間を労働力や性的目的の為に売買する事です。フィリピンでは、法律で禁止されています。しかし、現在でも数多くの児童がセックスワーカーとして働き、そういった不当な性産業は後を絶ちません。その被害をうけた少女達を保護する施設が、フィリピン・オロンガポ市にある、プレダ基金です。FTCJのパートナー団体でもあります。主に、保護した女の子の、セラピーやリハビリ、ソーシャルワーカーによる心のケアを行います。また、ケアした児童の家計にも経済的援助を行っています。これは、家計の貧しさが子どもの性産業を起こしてしまうので、同じ惨劇を繰り返さない為です。

 
●ここからは、17歳の少女のスピーチです
私は、文字を読む事が出来ない貧しい両親の元に生まれました。
14歳の時、子供の世話をするメイドの仕事を、姉の知り合いの女性から聞きました。
少しでも、家計を救いたいと考え、怪しいと危惧する両親の反対を押し切り、その女性の紹介した仕事先に赴きました。
 
しかし、到着した先は、暗くて狭い小さな家。中には多くの女性がいました。その家の支配人に案内されたのは、何故か、パソコンの並ぶ部屋。私は、画面の前で裸になるように要求されました。
 
画面先の相手から要求された仕事をしないと、食事は与えられず、一人狭い部屋に閉じ込められてしまいます。最初は戸惑いと不安から、何もすることが出来ませんでした。しかし、段々と空腹と精神的なストレスの中で、ついに裸になる決心をせざるを得なくなりました。
その部屋からの脱出を試みても、その部屋の前には、私たちが逃げ出さないようにと常に監視人が見張りをしています。時には、仕事中、支配人から性的暴行を受ける事もありましたが、課された仕事をこなさなければ食事も与えられません。毎日、パソコン画面先の相手が要求することをひたすらこなす日々でした。

そして、数ヶ月たった頃に、周辺住民からの通報のおかげで、警察とプレダ基金に助けられ保護されました。当初は、恐怖や周囲への不信感から、口を開く事ができませんでした。警察からの取り調べを受けている時は、支配人から『面倒なことになるし、金も巻き上げられるから、何も喋るな。』と言われていました。そんな中で、プレダ基金のソーシャルワーカーの方が来て下さり、詳しい事情を説明してくれました。その時にやっと、私は今の自分の状況を把握することが出来たのです。今は、プレダ基金でおよそ三年間のケアをうけ、心の傷を癒し、学校にも通うことが出来ました。

ーどんな人が客でしたか?
外国人のかたが多かったです。フィリピンは、児童の性産業ということで海外の観光客からも有名です。『旅の恥はかきすて』ということですかね。

ー体調が悪くなった場合はどうしていたのですか?
薬を貰う事はまずありません。食事も今まで通りで、治す為にはただ、寝ることしかありませんでした。さらに、仕事を休んでしまった分はまた働いて取り返さなければ、食事が与えられません。ですので、多少具合が悪くても皆働いていました。

ーお給料は受け取っていたのですか?
いいえ。私が直接受け取る事はありません。逃亡資金にしてしまうとでも思ったのでしょう。その代わり、地元の両親の方にはしっかり送られていました。
その為に、両親ともずっと、私がきちんと子どものメイドをしているのだと信じ込み騙されていました。初めて、私が本当にやらされていた仕事を知ったときは、大変驚いていました。

ー将来は何をしたいですか?
キャビンアテンダントになりたいです。今、その為に、一生懸命勉強しています。また、大変お世話になったプレダ基金にも何らかの形で恩を返していきたいです。3年もの間ケアを続けてくれたプレダ基金が本当に大好きです。最後には、あまりに好き過ぎて、家に帰りたくありませんでした。
 

●編集を終えて
性産業が、国内第4位に盛んというフィリピンの現状の中で、知らず知らずのうちに、セックスワーカーになってしまう児童は多い様です。文字が読めない事や、教育を受けていない事が貧しさに繋がり、結局、何も知らない子どもが出稼ぎをすることになり、それが人身売買に繋がってしまいます。

貧困や家庭環境、教育といった要素がからみあい、その負のスパイラルの中で、今回のような悲劇が生まれてしまいます。だからこそ、早急な解決は難しいとおもいますが、児童労働に苦しむ彼らには是非、プラダ基金等を通じて、人生に希望の光を見つけて貰いたいです。
今回のTAAJは、名前の通り、take action(行動を起こす)ことが目標です。世界や日本で起こっている様々な現状に、問題意識をもつこと。その意識を、何かしらのactionで形にしていくことを4日間で学びました。
 
~世界を変える為にはどうすれば良いのか。今の自分に何ができるのか。~

こういったことを参加者全員が真剣に考え、発表することができました。皆それぞれが、具体的な行動策を考えることが出来て良かったです。
今回のフィリピン女性のスピーチの時には、思わず涙ぐむ人も多かったです。しかし、いくら悲しんでも、涙を流しても、怒りを感じても、何か行動を起こさなければ、現状は何も変わりません。その心に迸った熱い想いを、形にしなければいけない!take action(行動を起こす)の必要性を強く実感した、4日間でした。