ノーベル平和賞受賞者、カイラシュさんのインタビュー記事
ノーベル平和賞を受賞された児童労働と戦い続けているカイラシュさんの
インタビュー記事がアルジャジージャでありましたので紹介しておきます。
Q&A: ノーベル賞受賞者の闘い ~子どもたちを救うために~
ノーベル平和賞受賞者、児童人権活動家カイラシュさんが彼の人生と活動の取り組み、もう一人の受賞者マララさんについて語って頂きました。
先週、児童労働撤廃活動などを行ってきた人権活動家のカイラシュ・サティーアーティーさんが、インド人として初のノーベル平和賞を受賞した。同賞は、青少年たちの教育を受ける権利を守る活動を続けてきた、パキスタン出身のマララ・ユサフザイさんも受賞しており、今回は2人の選出となっている。
しかし、インドではカイラシュさんの知名度は決して高いものではなく、ほとんどのインド人は、今回の彼の受賞報道を驚きとともに受け取ったようである。
取材などから距離をおいていたので、60歳の彼の経歴はあまり知られていないが、1980年に自身で設立したBBAやSave the Child Movementという団体で児童労働問題などにただひたすらに取り組み、違法な人身売買や児童労働で苦しんでいた82,000人以上の子どもたちがBBAの創設以来、救われてきたのである。
カイラシュさんは、何度も非難を受け、ついには、救済活動の最中、志を共にしていた2人の仲間が暴力団の手によって命を落とすこととなった。
アルジャジーラ衛星チャンネルのプリヤンカ・ギュプタさんとの対談
アルジャジーラ:ノーベル平和賞の受賞は大きな功績ですが、カイラシュさんは、児童労働に対する活動はまだ完遂されていないとお考えですか?
カイラシュさん: ノーベル平和賞は、違法な労働に苦しむ全ての子どもたちの問題が世界的に認識され、そして、その認知度を高め、世界中の政治活動家へ訴えかける力を持ちました。しかし、それはこの長年問題とされてきた児童労働が無くなるということではないのです。ですから、私の戦いはまだ終わったわけではないのです。
マララさんとお話しました。我々は、動乱や戦争、恐怖や暴力が及ぶ環境にさらされている子どもたちが一人もいなくなるよう強く願っています。子どもたちの平和な世界のためには、共に活動をしなければならない、と。我々は、新しい活動のために世界中の子どもたちと接していく必要があるでしょう。 “子どもたちに平和を。平和のために子どもたちに教育を”。
アルジャジーラ: では、受賞の賞金はどのようにされるおつもりですか?
カイラシュさん: このお金は1ペニーの単位まで、子どもたちの平和のためのものです。児童労働や児童買春、児童奴隷問題との闘いのために使うつもりです。
アルジャジーラ:世界の子どもたちの健やかな未来のために、マララさんと共に闘われるおつもりなのでしょうか?
カイラシュさん: そうしていきたいですね。共に活動ができたら、とても光栄なことだと思います。インドとパキスタンの問題がつながれることになるのですから。彼女とお話させていただいた時に、少女の教育問題などは、児童労働の問題に非常に密接に関係していると思いましたから。私は、33年間、質の高い教育を受けられるよう、活動、支援を行ってきました。読み書きができないことと児童労働は、1枚のコインのようなものです。違ったもののようにみえて、表と裏、同じ問題を有しているのです。教育の問題は、子どもたちにとって平和で安全な環境なしには達成できないことでしょう。
アルジャジーラ:どういったことがきっかけでこの活動を始められたのでしょうか?
カイラシュさん: 6歳の時、学校の前で同じ年頃の少年を見たのです。彼は靴直し屋をしていました。私は、「どうして彼は学校に通わないの?」と先生や校長先生に尋ねたところ、先生方は、彼は働かなければいけないし、別にそれは珍しいことではないのですよ、と答えました。ですが、その答えは私にとって説得力のあるものではなかったのです。どうしてみんなが学校に通えないのだろうと疑問に思ったのです。それが始まりでした。
私は全く0の状態から始めなければなりませんでした。無知と無関心との戦いです。我々は公にせず、密やかに救済活動を始めました。もちろん、それはとても難しいことでしたけれど。とても好意的な反応を示す人もいれば、時には暴力をもって対応されることもありました。私は二人の仲間を活動中に失っています。一人は撲殺、もう一人の仲間は射殺されました。我々はもう何度もリンチにあっています。マフィアや資源マフィア、その他我々の活動に反対派の人達とも闘います。それは決して容易な戦いではありません。私は、皆さんが我々の取り組む問題が深刻な問題であると認識して頂いたことに、とても嬉しく思っています。
アルジャジーラ:マララさんと一緒に受賞されたことについては、どのようにお考えですか?
カイラシュさん: とても嬉しく思っています。素敵な方ですね。彼女の娘に似ています。とても勇敢な方だと思います。
アルジャジーラ:児童労働法やその施行がなされるとき、インドにとって最も大きなチャレンジはなんだと思われますか?
カイラシュさん: 最も大きな挑戦は、考え方を変えていくことです。子どもが生まれながらに基本的人権を持っていることを理解しなければなりません。憲法上、法律上の権利が守られることによって初めて、実現されるのです。子どもたちには重要性と可視性、表現する力が与えられるべきだと思います。
アルジャジーラ:カイラシュさんは、ガンジーの活動家と知られていますが、ガンジーのどういった面を取り入れていらっしゃいますか?どの思想の取り込みに力を注がれましたか?
カイラシュさん: 私はごく普通のインドの市民、平凡なソーシャルワーカーです。私は出来るだけ自分の周りの雑音を避けるようにしています。もちろん、本質から変えたいと思っているし、トップレベルのものに取り組み続けていきたいです。子どもたちの問題を前進させるためには、社会と関わっていこうと思っています
アルジャジーラ:ノーベル平和賞受賞は、あなたの生活にどのような変化を与えましたか?
カイラシュさん: 1つだけありましたね。インド国内のみならず海外からの多くのマスコミ関連からの電話や取材の要望で、ちゃんと睡眠が取れなくなったことですね。
私があなたとお話しているときでさえ、売買され、拘束されている子どもたちがいる。売春を強要され、被害にあっている少女たちがいます。それは常に私の頭にあるのです。1パイサを得たときでさえも、この子どもたちをどのように助けられるだろうかと考えています。
私の唯一の望みは、私の生涯において、誰も虐待されず、誰も売買されないことです。
(翻訳:翻訳チーム 五十嵐かおり)